Interview

eatable of many orders 前篇


商品の原材料を食べ物の品質表示のように消費者の方に伝えていくブランドeatable of many orders「注文の多いエタブル(食べれる)」。アトリエを構える熱海にてデザイナーの新居幸治さんに色々と話を聞いた。

-eatable of many ordersの2人(夫婦)の役割分担について教えてください

アイデアは自分が出して細かい部分や生地などは妻がやっています。洋服を始めてからはパタンナーが東京の人なんですが、定期的に(熱海のアトリエに)連泊 して(パターンを)作業していくやり方をして、立体で作る部分はここでやって、平面での部分は(パタンナーの)家でやってくるようにしています。やり方的 にはうまくいっています。

-アトリエを熱海に選んだ理由を教えてください

特に理由はないです。熱海はそれほど東京が遠くないですし。むしろ東京で狭い環境で同じことをしようとしたら出来ないのかなと今は思います。ベルギーに居 た時も学校から離れたところに住んで広い場所を借りていました。パリに対してアントワープという場所はどうなんだろうというを考えたことがあります。アン トワープも不便じゃないけど、日本みたいにハンズとか岡田屋があるわけじゃないからどうやっているのかなと思っていましたがみんな小さなお店とかまわって いました。けど生地買うのであれば結局パリに行くこともあるのですが、それは毎日必要なことではないから逆にたまに行くと刺激を受けたりするので意外と (遠くに住むことも)良いと思います。

-デザイナーだからこそそういった少し離れたスタンスで出来るのかもしれないですね

うーん。今はネットがあるので大分色んなことがやりやすいというのはあります。

-次シーズンの展示会のことについて教えてください

次の合同展は10月に目白の自由学園でやる予定ですけどそこはフランクロイドライトの建物でファッション以外の人も一緒にやります。

-いい意味でメインストリームとはあまり関係ない人達の集まりという感じですね

そうですね。合同展を「山猫軒」という名前にしています。最初は自分がオーガナイズしてましたが、最近は他の人に頼もうと思っています。手仕事でやってい る人を集めたいと思っています。生地屋さんとも一緒に展示会をやりたいと思ってたんですけど今回は時期が合わなくて・・・

-eatable of many orders単独ではやられないんですか

自分達だけでもやります。そっちの方が空間的には見せれるなというのはあります。

-では合同展をやる理由というのはなんですか

人と人が絡んで出来る良い雰囲気というか向上できる場所があれば良いのかなと思っています。ただ、ファッションの人だけだと商業的なコンペティションみたいな感じになるのは嫌です。

-ショーをやりたいと思ったりはしないんですか

何かをやろうというのはあるけど今のところキャットウォークで見せる意味はないです。洋服を歩いて綺麗に見せたいというレベルでもまだないですし。それよりはもうちょっとアート的に見せれる方が良いのかなというのはあります。

-大学時代は建築を選考されていたわけですがなぜファッションを始めたのでしょう

建築の延長線上で洋服が必要だと思っていて、空間を作ったときにそこには人が絶対いるじゃないですか。その「人」というのは絶対に服は着ているから。多摩 美(術大学)に行ってましたが、身体的に走る人が多くて「人の体が分かったら空間が分かるんじゃないか」様なことを教わりました。同級生で建築から整体の 方に行った人もいるけど自分は洋服の方に行きました。大学4年の時にマルジェラの平面が立体になるというのに影響を受けて自分は扉をテーマにしました。扉 を開けるとそれが洋服になるというアイデアを出しました。描いたものはうまく実現できなかったんですがそういうテーマは今も自分の中にあります。自分が やっているのは木工の仕事が多いので、洋服と鞄が軌道に乗ったら家具の方もやりたいという夢はあります。

-アントワープを選んだ理由について教えてください

マルジェラの影響ですね。鞄をやっているので昔のLouis Vuittonとか凄いなとは思いますが洋服だとマルジェラが一番影響を受けました。

-アントワープで実際に学んでみてどうでしたか

先生がやりたいことをやらせてくれるのでそれは良かったですね。体を勉強したいというのがあったので洋服を勉強してよかったなとは思います、ただ今も洋服 は難しいです。自分的には洋服は特に女性的な世界だと思っています。細かい部分は女性達が決めていくのが自然かなという思いはありますね。自分は骨組み作 りがしたいです。

-骨組み作りですか

自分の中には「接続部」というテーマがずっとあって、扉でいったら開け閉めする金具、そこが自分の中で一番重要です。それが分野の違う建築だったり洋服 だったり言葉で言えば架け橋なんだろうけど、そういうことが自分で小さくでもいいからうまくやれたらいいなというのがあります。

-服だけじゃなくもっと色んなことをやっていきたいということですか

服は最終的には今携わっている人達により任せていきたい、ブランドの名前も自分のブランドみたいにしたくなかったので自分達の名前はあえてブランド名にはしてないし。結局自分だけじゃなくて他のみんなと一緒になってじゃないとやれないことだと思ってます。

-デザイナーを目指そうと思ったのはやっぱり建築の延長ということとマルジェラの影響ということですか

やっぱり美大に行ったということ自体が大きいのかもしれないです。大学に行ってる時はデザイナーにあまり興味なかったし、自分はぼろぼろの服ばかり着ていました。たまたまマルジェラがアートに通じることをやっていたところからでした。

-eatableが目指すところというのはどういった場所でしょうか

全て自分達でやっていくというのが一番理想ですね。工房とかも抱えたいし。理想は昔のLouis Vuittonのお店みたいに鞄とか壊れたら職人がいてそこで直せるみたいなそういう場所っていいなって思います。

-HPを見ると海外での取り扱いも多いようですが

正直海外は鞄に関しては、木とかの問題で今はなかなか難しいというのはありますね。木が特に気候が変わると曲がってしまうのでバッグのハンガーの開ける部 分がLAに持っていったら乾燥で曲がりました。少しずつ改良はしてるんですがなるべくそこの風土に合わせた物作りを出来ればしたいです。

-バッグの取っ手の部分はハンガーにもなるんですよね

旅行鞄をイメージしているバッグの取っ手の部分はハンガーをイメージしていて洋服をかけれるようになっています。今は洋服を見せるのにはまだ普通のハンガーを使っていますが、将来的にはハンガーも全部自分達で作りたいなっていうのはありますね。

-今現在日本ではどういったお店で扱われていますか

洋服と鞄がわかれてる状態ですね。洋服はセレクトショップで、鞄は手作りのものを好きなところで、洋服と鞄はまだくっついてないなという印象です。留め具な どにもっと「手作り感を出せたらいいね」という話はします。生産の部分で手作りの部分をもう少し増やしていきたいです。理想は自分の工場をもてるのが一番 ですが。そうすれば「この木を縫いつけよう」とかもっと無理をすることも可能かと。

-全て自分達の管理の行き届いたものを作りたいということですか

そのほうが面白いものが生まれるんじゃないかなと思います。外注するとどうしてもみんな似通ってしまうのかなというのはあります。

-ポジション的にはどういう感じにしたいですか

ファッションではありますがそんなモードではない。先端だけに敏感にはなりたくないです。自分達がやりたい中で世の中とどう向き合えるか、人間はやりたい ことがあって一人の人が出来るのは一つしかないと思っています。それをそれぞれが突き詰めたのがブランドになれば良い。一人の人間が色々できるとは思わな いから、エタブルの中で自分は金具みたいな存在になれればいいなと思っています。

続く

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