Interview

20,000,000 fragments 前篇

Fabricated -with touch of antique-をテーマにぬくもりや手仕事を感じる素材やディテール、時を経る事により現れる生地独特の風合いなど数十年後にも愛され続けている服(未来のアンティーク)を想像しもの作りに取り組んだ今シーズン。今コレクションの裏側 そしてブランドの柱であるツイードに対する思いなど20,000,000 fragmentsデザイナー秋山珠美氏に話を聞いた。

-今回未来へのアンティークを提案したいというのがテーマだったわけですがそのテーマはどういった経緯から生まれてきたのですか

自分はもともと大の古着好きなんです。子供の頃からずっと着続けているものもありますし、自分の中のスタンダード、自分が持ち続けていたことでアンティー クになっていくようなものとは、「一生手放さないんだろうな」って洋服だと思うんです。そういうものに自分達の作る洋服もなって欲しいという気持ちが常に ありました。消費が減っているから安い洋服で消費を煽ろうという考えは、この小さなブランドで洋服を作る意味とは違います。どういう意味が無ければいけな いのかなと考えた時に10年、20年後も「これ、いいね」って言ってもらえるようなものを自信をもって作っていかない限りはやる意味がないのではと思った ところから生まれました。

-アンティークということで重点を置いた部分はどこだったのですか

アンティークということだからアンティークに似せて作るということではありません。今の時代でしか出来ない洋服、素材というのがあるんですね。去年作れた はずのものが今年作れなくなる現状もありますし、作り手の高齢化が進んでいて、機屋さんであったり縫製工場であったり、日本で脈々と受け継がれていたはず の物がぱったりと出来なくなるということがここ5年くらいの間に凄く多いんです。10年後のアンティークをイメージさせる、自分達が胸を打たれる洋服とい うのはその時代その時代のテクニックであったり流行であったり、無数の人の手が感じられる物であったり、その時代が凝縮された何かを感じられる物だと思う んです。現代の物を凝縮させて今作っておくということは凄く大事なんじゃないかなと思いました。

-前回から継続してJonathan Zawadaとコラボレーションをしていますがなぜですか

自分が具体的にツイードのジャケットの中に何をコーディネートするか考えた時に今まではそれをあまり提案していませんでした。ツイードのジャケットだから 「シルクのブラウス着て、コサージュつけて欲しい」という思いはあまりなく、若い世代がツイードを着る、若い時から良い物を着るというのが大切だと思って いますので、そういった世代の人達への着こなしの提案として「Tシャツとか、いつもの格好に(ツイードジャケットを)着てみてはどうですか」という思いで アイデアを出しました。自分達はガスアズインターフェイスという会社で良いアーティストもたくさん知っていますので、担当者に自分のイメージを伝えて何人 か提案してもらいました。前シーズンは子供の頃の記憶を辿る「found memories」というテーマでした。とても私的なことなんですが子供の頃とても架空の動物に憧れていたんですね。具体的に絵にしていただいたユニコー ンもそうですし、そういう経緯を話して、何人か提案を頂いた中にJonathanがいて彼の作品を私が一目で気に入ったんです。彼の作品は凄く幅広いんで すけど、その全てが完成度が高くて自分のイメージにぴったり来ました。「この人に話をしてみて」って言ったら最初から自分の想像なんかはるかに超えるよう なものが返ってきました。「まだまだ(新しいものが)でて来るんじゃないかな。もっとJonathan良いもの作ってくれるんじゃないかな」と感じたの で、今回もぜひ彼と仕事がしたいと思いお願いしました。

-どのようにイメージをJonathanに伝えたんですか

テーマとその時に出来上がってるスワッチの写真を送りイメージを伝えるという方法です。彼は言葉のキャッチボールが簡単に出来る方という印象です。彼も私 達の洋服は見てくれていて、気に入って頂いてるので、今はTシャツだけなんですがTシャツだけに留まらず、イベントなどもっと次の何かが出来れば良いなと 思っています。

-コラボレーションの持つ意味について教えてください

「コラボレーション」と聞くと最近は少し軽いイメージの様に感じますが、コラボレーションというのは自分の持っている力の最大限のところプラス相手の方の 最大限のところがプラスされているので200%の物が出来るという可能性を秘めていると思います。自分の枠を超えてもっと完成度が高いとか、自分の表現の しきれない部分まで協力し合って到達することが出来る、コラボレーションの醍醐味ってそういうことなんだと思います。

-ツイードという素材に一番重点を置いているのですか

そうですね。ツイードは無数の糸の組み合わせで一本一本の糸選びから始まり、イメージを作っていきますが、ジグソーパズルみたいな物なんですね。出来上 がってくるまで分からない部分が凄くあるので、もちろん「あれっ」みたいな時もありますが、予想を超えたものが出来上がって来た時には、もう本当に嬉しく て、そういう意味で最終的に一番面白くなるっていうのがツイードですね。

-20,000,000 fragmentsといえばツイードと思われるのは嫌ではないのですか

最近はそれが定番化してきて顧客の方達も「今回は何」って感じで楽しみにしてくれてるというのも現実ですし、洋服のデザインだけがクリエイトでないと思いますので素材をクリエイトするという部分が評価されているということに対しては全然嫌ではないですね。春夏のツイードにしても作り手が気を使うほど皆さん はそこ(ツイードを春夏に着ること)に関してのアレルギーはないのかなというのは実感しています。

-影響を受けた人物やデザイナーはいますか

自分はコムデギャルソンで10年間働いていますので、影響を受けたというよりもそれ以外わからないといっても過言ではないほど全ての基礎を学んでいます。やはり根底には(Comme des Garconsにいた)それがいつもありますね。

-デザイナーになろうと思ったきっかけはなんですか

デザイナーになろうと思ったのは実は小学生の時なんです。洋服が好きな子供で小学生の時から自分の着るものは全て自分でコーディネートして、毎日(コー ディネートを)悩んで学校に遅れてしまうような子供だったんです。4年生か、5年生くらいの時に叔母が連れて行ってくれた文化服装学院のファッション ショーを見たときに「絶対に(デザイナーに)なりたい」って思ったんです。でも意外と早く(デザイナーになりたいと)思ったせいか実際専門学校に入る時に はかなり熱が冷めてしまっていたんですが…
(卒業後)コムデギャルソンというところに入って真剣に洋服に向き合うようになってそのあとはデザイナーになりたいと思わずして今があります。コムデギャ ルソンではパタンナーという部署にいたんですがパタンナーでありながらもデザインを提案することが出来る会社だったので、自分でコンセプトを決めて、自分 でデザインをしてそこから社長にプレゼンするチャンスがあり、そこから発展して洋服が出来上がるという工程を取っていたんですね。だからパタンナーであり、デザイナーでありという頭を常に働かせて洋服を作る作業をしていて、自然とデザインということとパターンということが同時並行で行われていたような部 分がありました。なのでデザイナーではなかったのですが辞めた時にその延長上で自分で企画デザインをして、自分でパターンを引いてやらないかというお話が このブランドからあったとき、特に違和感はありませんでした。
当初は自分でパターンも引いていたんですけど自分の役割というのが大きくなってきて3回目の展示会からは全て私がデザインして、徐々にパターンはあまり引かなくなりました。だから今は一般的なデザイナーという役割をやっています。

-パタンナー出身ということでパターンに対するこだわりは強いですか

はい、強いですね。常にパターンからスタートするデザインの作り方をしていましたので。パターンから離れて2次元的な洋服の作り方に偏っている傾向が出ているなと最近少し思ったりもするんですが、そういうことも含めて手を動かして洋服を作るというのを大事にしています。パターンのテクニックも多少は分かっていますので、パタンナーさんと一緒に話しながら「こういう風にやってみたらどうかな」という相談をしながらやっています。

-20,000,000 fragmentsで一番大事にしている点とはどんな点ですか

一番大事なことは『大人の女性が着る洋服』であるということ。その洋服を着ることによってその人が一日「今日はこのジャケットを着ているから、いい気分だ な」と感じることってあると思うんです。いまいち着てる物がきまってなかったりすると「なんか嫌だなー」って。夕方とかに誘われても「あまり行きたくない なー」って女性は特に思うと思うんです。だからその人がその洋服を着ることによって楽しい気分になって上がっていくイメージが出来るということが一番大事 なのかなって思うんですね。その洋服を着ることによってスタイルがよく見えることもそうだと思うし、綺麗に見えるということもそうだと思うし。そういう要 素を派手に装飾することでなく、カッティングであったり肌触りであったり、その素材の持つ高級感であったり色々な要素でさりげなく表現できたらなっていう のがあります。

続く

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