現在の世界への僕らからのメッセージでもあるんです。心は売るなよ!っていう
-Fugahumという名前はどこから来たのですか
山本-造語ですね。あまり意味は無いです。
三嶋-響きが良くて意味分からないけど国と言われたら「あーそんな国もあるのかな」という感じで、匂いとしてはあまりかっこよくない名前というか。横文字 にしてかっこいい名前よりももっと馬鹿っぽくてこれ攻められちゃうだろみたいな名前というか。FugaとHumの音だけというか。
-Fugahum王国の歴史については既に頭の中で完成しているのですか
三嶋-ある程度はありますが完全ではないですね。毎回やっていく度に掘り下げて色んな物も見えるし、歴史に深さが出てきたというか、やることによって歴史 を積み上げていく感覚もあります。このシーズンがあったから次のシーズンがこうなってというのも出てきているんですね。例えば、頭の中に居た女帝がシーズンを重ねて形として作った時に、この人が次どうなって国民が次どういう思いで生活したらあそこに繋がるのかな?とか、その次の歴史に入るシーズンがあれば やっぱり反映してくるんですよ。そういうことが僕達が最初に描いていたFugahumの歴史を作るというコンセプトに近づいてきています。
-10章までとのことなんですがその先はどうなるのでしょうか
三嶋-明確には考えてません。
山本-10章やって完結させて、とりあえず洋服というのは10で終わらせようという気持ちがあったんです。
三嶋-だらだらやるというよりは10回=5年間で自分達が最終的にどんな器を作り上げれるかなんですよね。器が出来たときにどうするかというのは最初の段 階では決めてないし、今もどうするかっていうのは分からないんですけど、そこで完全に辞めるというのもありだし、それを踏まえて新しい世界観の何かを作る のかというのも可能だと思います。それが洋服なのかアート作品なのか、でもその辺はまだ考えないようにしてます。
-10章ということで最初にそれぞれのテーマ付けはしていたということですか
三嶋-一応していましたね。コンセプトもぶれてないし大きくもずれてないんですけど、やっぱりベースはファッションとしてやっているので、時代感もあるし 最初に思っていたのとはやっぱり世界(の情勢)も違ってきていますよね。僕達の表現する物も多少なりともそっちの影響もあるし変わってきています。芯は変 わらないですけど。
-デザインをするときに時代性やトレンド性は重要ですか
山本-全くというわけではないんですけど、やっぱり洋服だけで無く文化全体に対しても敏感な人たちなので、全く無視は出来ないですよね。そこを受けつつど 真ん中には出来ないけどもその周りから攻めるような、そこの周りではしゃげる感じというか。真ん中にはいたくないですよね。出来上がるとなんとなくそれ 「トレンドだったよ」みたいなのはありますけど。
三嶋-やっぱりそういうトレンドっぽいものの方が売れますよね。意識はしてないんだけど「やっぱそっちなんだー」みたいな。
山本-どこのデザイナーさんにしてもそうだと思うんですけど、凄く敏感な人たちだからそれ(トレンド)を引っ掛ける能力があって、ぱっとコレクションに出るとなんとなく共通性がありますよね。凄い外れている人は外れているし、そこはそこで生きていく道があると思うんですけど。そこはやっぱりみんな同じ流れがあってそこに入れるかどうかというのもあると思います。度真ん中に行くのではなく、外して行こうというのを理解してやっている人達が、結局トレンドが分 かる人たちだと思うんですよ。
三嶋-数学じゃないですけど今の現在があったとして、過去があって、どういう音楽が流行ってて、どういうカルチャーがあって、どういうアートがあって、経 済があってとかあるじゃないですか。それを材料として、掛け算、引き算、足し算するというのはみんな見えてるわけじゃないですか。=で次のコレクションの時に純粋に掛けて足してやってたらメインのトレンドになってしまいますよね、ある程度の考えがある人たちであれば。ここは×だろうけど自分達は割って見ようか、みたいなのを勝手にやってると思うんですよね。だから感覚的には「分かるけど」っていう。「ここはちょっとひねくれたかったんだよね」とかたまに 「ひねくれすぎてよくわからなくなっちゃったな」とかね。
-あえて(トレンドを)外したりもされるというわけですね
三嶋-それはしますね。ここをやっちゃうとちょっと駄目だなとか。
山本-どちらかといえば外しまくりとおもうんですよね。
三嶋-分かってなくて外してるというよりはやっぱり分かっていて外していますよね。といいながらも自分達が良く分かってなかったりすることもありますけどね。
山本-「以外にこれ売れるんだ」みたいな。
三嶋-「あれ、絶対にいけると思ったのに見向きもしないな」みたいな。それはそれで不安になりますよね。早過ぎたのか、そもそもただの悪趣味か、、
FUGAHUM 09S/S Collection Grated-Kingdom
-毎シーズンのテーマはどのように決めているんですか
三嶋-歴史の中で今何を表現したいのかというのを始めに考えて、それをどの時代にするか決めてその時の国の情勢を考えていくんですよ。これはこの戦争の前だからまだ繁栄してたとか、ここでぼこぼこにされたから貧しくてカルチャーが生まれる瞬間だったなとか。
-今回のwiress mindの発想はどこから出てきたんですか
三嶋-分かりやすいですけど世界不況ですね。今ってプレッシャーがあって経済的に世界恐慌みたいになってるじゃないですか。それが時代を見てても感じるし、そこがむかつくというか、それをどうにかしなければいけないなっていう、みんな不景気不景気っていってるのもいいかげんむかついてきて。ちょっと何か しないといけないと思ってそのプレッシャーをとりあえず表現したいなって思いました。
それをマリオネットに例えたんです。自分達は操り人形だと。マリオネットって見た目楽しそうですけど僕のイメージでは凄く怖いんですよ。見えてるところは美しくて、可愛いんだけど、上で操ってるところは見えなくて人が十字のものを動かしているわけじゃないですか。それって何か怖くて絶対的な支配者なイメージに思えるんです。僕達一般人というのはそうやって操られて生きてるんだなって。特に日本の情勢を見てると思うんですよね。悩まなければいけないところが いっぱいあるけど無駄な情報とかに踊らされたりしていて。それをFUGAHUMの国で表現するのであればなにかなと考えたときに、支配下に置かれてる国民 だったんですね。でも国民は権力に繋がれてる中でも思想だけは捨てなかったという希望的な物語です。これは現在の世界への僕らからのメッセージでもあるんです。心は売るなよ!っていう、日本人売りまくってるんで。。
で、モデルをマリオネットに例えるならでっかい持ち手が必要だなと、それで彫刻家の友人と一緒にバカみたいにデカイ持ち手を金属で作りました。
実際大きすぎて(5m以上)大変だったんですよ。試行錯誤して軽量化したんですが100kgぐらいあって重いし。。
-合成ではなく実際にマリオネットを作ってやりたかったということですか
三嶋-合成でやろうと思えば出来るんですがそれは全然考えなかったですね。合成では写真に恐怖感や緊張感が出ないですしね、実際モデルは凄くビビってまし た。落ちてこないよね。って、、計算では大丈夫なはずなんですが僕らもヒヤヒヤしてました。落ちてきたら大惨事ですから。
自分達の手を型とってオブジェの先についてるんですけど、これもある種操ってるってことなんです。オブジェ自体を悪の象徴にしたくて。よく見ればFuckの手があったりピースの手があったりとかそこらへんはしゃれっけなんですけどね。
-洋服を通じて伝えたいことはありますか
山本-デザインにしてもそうなんですけど全てが割りと出尽くした時代であとは懐古するというか、この時代にこれを持ってきてその組み合わせでっていう時代 に入っていて、全く新しいものが出るのは今は凄く難しいと思うんですよ。そういうときに自分が今までと同じことをしていてもつまらないと思ったんですね。 その時に洋服プラス世界観と匂い、雰囲気とかカルチャーとか、カルチャーも今まで勿論出ていますけどレディースの洋服に匂いを感じられるって無かったと思 うんですよね。ブランドコンセプトとかしっかり立てていてなおかつ面白い服があって、さらにそのマインドという部分で洋服を着ているから反逆精神があるん だとか、なんかちょっとプラスの要因を作りたかったんですよ。だからそういう部分をうちの洋服を買ってもらうときに理解してもらいたいですよね。ただ物質 としての洋服という買い方ではなく、コンセプトとかも理解したうえで背負って欲しいみたいな感覚はありますよね。
-そういった説明はバイヤーさんにもしているんですか
山本-していますね。
三嶋隆-正直そんなのもあんまり興味ないよみたいなバイヤーさんとかもいますけど・・
山本-お客さんには調べて欲しいんですよね。それを選んだということに意味があって今まで普通に着ていた人も「ちょっとここなんだろう」って思ったとき に、調べて掘り下げたらうちのブランドにあたって、そしてこういうことだったんだっていう発見をしてもらいたいですね。だから最初からこうなんですってい う言い方はあまりしたくないですね。
三嶋-着方も4通りとかあったりする服もあるんですけど一応聞かれたらそれは説明しますけど普通に着ていたら普通なんですよね。でも別にさかさまにも着れる訳ですよ。けどそれをいちいち説明するのもどうかなと思いますよね。
山本-今はみんな服の選び方が凄いひ弱で人任せなんですよね。あんまりうち に興味のないバイヤーさんとかスタイリストさんもそうなんですけど。「どういうスタイリングで着ればいいですか?」って聞かれるんです。カタログも見ず に、考える前に聞いちゃうみたいな。 「それ提案するのはそちらではないですか?」と思うんですけど 。
自分達の洋服を着て欲しい感覚は当然あるし勿論ちゃんと説明しますけど。今のこの時代に1つのブランドで全身着ている人なんてほぼいないし、そこの発想す る部分が一番面白いのにそこを押し付ける意味もなにもなくて。うちのアイテムが一個あって全然違うのをあわせたいっていうそういう気持ちを起こして欲しい というか。
三嶋-もちろん僕達の提案するベストなスタイリングや着方はあります。でも僕達の思いとしてはそこを自分達で考えて欲しいというか、マインドを広げて欲し い。作り手がこんなこと言うのもなんですが、布着れひとつでも巻けばそれなりになるじゃないですか。カットソーでもなんでもそうですけど別に袖通さなくて も首に通してちょっと流すだけでもかっこいい人はかっこいいじゃないですか。そういう風に考えて欲しいんですよね。
山本-想像力を放棄して欲しくないんです。
三嶋-メンズでもそうですけど短パンとレギンスとかあるじゃないですか、あーいった感覚でスカート的にじゃないですけど大き目のカットソーを腰に巻くだけ でもいいと思うんですよね。着こなしのアレンジの仕方って僕達が作った服を友達とかが着てるのを見て「こんな風に着てるんだ」って人もいるわけですよ。そ ういう感覚を持った人に引っかかってもらいたいというか。タグの後ろにArt for allって文字が入ってるんですけど、そういう思いもあって、洋服なんですけどもっと自由になって欲しいんですよね。極端な話買った洋服をカーテンにして もらってもいいし。「これ剥いだら凄いカーテンにいいじゃん」みたいな。考えさせる洋服を提案していきたいという思いはありますね。
続く