Interview

banal chic bizarre 中編

他とはまった上で 「うちの服はどうですか」という投げかけだったんです

-ショーをジャーナリストに見せる理由とはなんでしょう

今まで展示会だけやってバイヤーが見たままにおいてある、そういう状態だったんですけど、そこからもう少しレベルアップしたいという気持ちがあって、そうなってくるとやっぱりジャーナリストの批判であったり、コメントをもっと聞いてみたいなというのとそういう部分があることによってブランドにとってもプラスになると思ったので。

-それはコレクションブランドとして認知してもらいたいと言う理由もあったのですか

その辺の気持ちは結構複雑ですね。そんなにそれにこだわっているわけではないです。ただブランドとして本当に手詰まりな状態だったんです。何かをしなければいけない、展示会だけで服を見せると言うのに飽き飽きしていたと言うか、折角作った物なのに最後の見せるという動作をここまで適当にしていてそれってどうなのかなというのにようやく気がついたと言うか。

-初のショーとなった09S/Sのことについて教えてください

鶏群一鶴(けいぐんいっかく)
たくさんの鶏の中に一匹の鶴がいると言う四文字熟語なんですけどそれで白装束のモデルがたくさん立っていてそれが鶏と言うことで最初はそれだけのコレクションと思わせておいて実は別のコレクションが降りてくるみたいなショーだったんです。ポーズも取らないし早歩きでいってしまうショーでした。

-見辛いというコメントも聞かれたそうですが

滅茶苦茶見づらいですね。でも自分の中では一番自分達らしいショーだったと思っています。

-では今回(09A/W)普通のショー形式で見せたのはなぜだったのですか

今回は自分達の中でもとにかく普通を心がけました。半分他に合わせているじゃないですけど「こういうのやればいいんでしょ」と言う意味合いも含めているんです。嫌味的な要素を勝手に。自分たちが普通のことをやったらどうなるか、そういうショーでもあったのでだからテーマのニュースタンダードってそういう意味も含まれているんです。自分達が定番の物を作ったらどう見えるかって。

-今まで定番的なことはやっていなかったのですか

そういう服の作り方はしていなかったんです。今回は服からインスピレーションを受けた服ということでそういうテーマを選んだ背景にも「どれだけ普通をやったらいいんだ」っていう苛立ちも隠されているんです。今までは好き放題に自分達の着たいものを作りたいようにやって、その時の気分とかその時作った物とかを改めて見た上でのテーマなんですよね、いつも。だからテーマを決めてから服を作るというやり方をしていなかったんです。テーマがいつも=なんですよ、これ作ったからこういうテーマですみたいな感じなんです。その理由は先ほども話したように「リアルな服」だからなんですけど。

-自分達のリアルを表現するのに外国人モデルを使ったのはなぜですか。日本人だけでもよかった気はしたのですが

外国人は3人だったんです。前にならえじゃないですけど「こうやればいいんでしょ」の一つだったんです。フォーマットにどれだけはまって出来るかという実験だったんです。他と一緒でまっすぐ歩いてポーズとって外国人使って性別も混ぜたけど今回は統一した上ではいどうでしょうっていう。他とはまった上で 「うちの服はどうですか」という投げかけだったんです。前回とのギャップは大きいけど前回の続きと言う意味でもあったんです。前回ああだったんだから今回 ああなったっていう。自分達の見せ方を貫くと言うスタンスは自分達にはないことなのでその時その時で考えていった結果ですね。

-今回普通のショーを行おうとした背景を教えてください

春夏のときの評判があまりにも良くなさ過ぎたんです・・・・

-ショーの評判が良くなかったんですか

良くなかったんですよ。雑誌掲載もほとんどありませんでしたし。それでもお客さんからの評判は凄くよかったですし、でもそこで歯がゆいものがあったんですよね。実際に現場で支持されていても雑誌にはやっぱり支持されないんだっていうのがあって。「じゃーこういうのやったらいいんでしょ」っていうところからあのショーが浮かんだんです。

-今回のショーの反応はどうだったんですか

自分達が思ってた以上に返ってきましたね。「これがリアルな東京だと思う」とか「他とは違う」とか凄いお褒めの言葉をたくさん頂いたんですけど自分達の中では嬉しい反面、本当はそうじゃないんだって言う気持ちもあります。

-じゃー次はまた反抗的になってみようと言う考えですか

そういう気持ちもあるのですがまだわからないですね。服に関しては前回とは違い好きに作らせてもらっていますね。

-逆にお客さんからの反応はどうでしたか

今回も良かったと思います。シンプルになったとは言われますけど。前のコレクションを支持されていてくれたような方々は物足りないというか「らしくないね」って言われちゃうようなショーでした。

-そういう意見に対してはどう思いますか

その通りだと思います。でもそれはわかった上でのことなので逆に良かったですね。やっぱり自分の思ったとおりに進んでいると思いますので。逆に自分が本気でやってそれが「ちょっとね」ってなるとそれは凄いへこむと思いますので。次への弾みになりましたね。

-東京の旗艦店(ADD)がオープンしたのはいつですか

2005年の10月なので今4年目です。

-お店を自分達でやろうと思ったのはなぜですか

東京でGYPSYが始まった後にCannabisやDevice Tokyoに置いてもらったんですけど取引先という以上いつ切られるかもわからないしお店のコンセプトに自分達がいつそぐわなくなるかもわからないじゃないですか。そういうのも考えた上で服を作っていくというのが苦痛だったのでだったら力を出し切るには自分達のお店が必要と言うことでお店を始めました。

-お店には古着や一点物もおいてあるんですよね

それも自分達の着たい物ややりたいことを理解してもらう為のツールと言うか自分達の服がまだ型数も少なくて自分達の服だけで提案するというのがショップを始めた当時は困難だったんです。そういうところで自分達は古着混ぜて着るよねって古着を買い付けにいったりしていました。

-自分達のスタイルがそのままお店に反映していたと言う形ですか

そうですね。オープン当初は特にそうです。今は型数も増えてきましたし市毛も自分のブランドKilaをやっているのでその頃とは少し変わってきていると思います。

-中川さん個人もEmperartと言うブランドをやられているようですが

そうですね。ただ次から型数を4型程度にして欲しい人にしか売らないようにしようって思っています。

-そのブランドを始めようと思ったのはなぜですか

banalでは僕のデザインが採用されないケースが多かったんです。以前はグラフィックの子と組んでいたのでグラフィックがメインだったんですがその子は最近脱退したので次回(10S/S)からは本当に自分のやりたいようにやろうと思っています。

-コンセプトはありますか

エンペラーとアートを混ぜた造語なんですけど皇帝の芸術と言うことで壊れているけど品があって想像性のあるものです。

-banalとの位置づけはありますか

エンペラートというのは本当に個人的に着たい物でbanalというのはお互いが良いよねっていう物なんですね。2人が納得しないと形にならない物なので。

-大阪にもお店がありますが大阪に出店した理由は何ですか

大阪の取引先がなくなってしまったからです。セレクトもしていますが大阪に関してはどんどんセレクトも増やそうと思っています。東京と大阪との違いを持たせたいので。取引の形態は他と違うんですよ。うちはラック貸しでラックいくらみたいな。だから他のブランドにとっては自分達で世界観を表現しやすいと思い ます。

-コーディネートの部分にはこだわりが強いのですか

自分達はコーディネートあり気だと思っています。スタイリストをつけていないんですけどその理由はそういうのが大きいですね。この服作りにはこの服と合わせたいというエゴがありますので自分達二人でスタイリングをしています。どちらかがレディース、メンズと言うわけではなくお互いにメンズもするしレディースもするしとやっています。

-ブログを見るとお店のスタッフのスナップが多いですがそれはスタイリングの提案と言う意味合いが強いのですか

そうですね。そういう意味合いが強いです。

-サイズ展開はどうしているんですか

フリーサイズでやっています。僕のサイズか彼女のサイズですね。外人は着れない細さです。モデルを今回女の子を使ったのもそういう理由があります。 どちらかで統一したかったんですけどメンズはオーディションしたときに着れなかったんです。本当に線が細い人で服を見せたかったので女性を選 びました。

続く

Comments are closed.