Interview

MIKIOSAKABE 3

人と会って言葉で話すよりも深い物を一瞬でわかり合える物がファッションにあるなと思ったんです

-コレクションが毎回ジャパニーズカルチャーを感じられるコレクションだと思うのですがその部分は意識はされていますか

そういうつもりはないですね。むしろ最近は全く関係ない方向に行こうとしていますね。日本のカルチャーはキーワードにしやすかったのと、時代のグローバリズムと日本のカルチャーとが凄く合っていて日本はみんながなるべき未来の部分もあると思うんです。海外が今まで否定してきた部分がどんどん世界に出てきたというのがあるので。

-あえてそういうことをやることによって海外にわかりやすく伝えたいのかなとも思ったんですが

それは一個のシンボルですよね。ただ先にそれを考えてやったりはしないです。ずっと海外中心でやってたというのもあるのでその中で自分らしいという原点になったら僕達はアジアのカルチャーが入ってくるのかなとは思いますけど。

-日本デビューとなった21_21 design sightでの展示、ファッションショーから2年経ちましたが成長したと思う部分はありますか

デザイン的にはやりたいことはいつもあるし一緒なんですけどどう見せたらいいかっていう作戦は前より考えますね。あのときの方が純粋にクリエイションがどうやったら良くなるかというだけだったんですよ。今はクリエイションを見せること自体よりも他の方法で人に広めた方がいいなって思っています。

-21_21での反響はどうでしたか

あの時は良かったと思います。一週間で一万人くらい来たのでJFW内でも成功したイベントと聞いています。

-今回ヨーロッパからの新人たち展の3組(MIKIOSAKABE, Akira Naka, writtenafterwards)でスケジュールを固めたわけですがその理由について教えてください

明確に新しい東京として何かシンボルを作りたいなというのがあって、根本にはクリエイションには夢が無きゃいけないというのがあると思うのでそこら辺で共感出来る人と一緒にやりたいなと思っていて、3人とも方向性は違うんですけど目指している最終的なイメージは近いのでやり方が違うけど混ぜてやってもおかしくない。むしろ最近は一人一人のクリエイターがどうのというよりも思想であったり共感してもらうにはどうしたらいいのかといったら、イベントとして何かムーブメントを残した方が人の心に残ると思ったので3ブランドセットでというパック売りで見せたんです。

-その考えは3人とも一致したということですか

そうですね。多少のずれはありますがイベント自体が同じ方向性を向くものを一個作らなければ単体でやっても盛り上がらないと思ったので。

-会場が同じだと演出の面などの不利点も出てくると思うのですが

それは問題ですよね。問題はいっぱいあるんですけどそれを乗り越えてでもやらなければ駄目なのかなと思ったんです。だから次以降もこの3組でやっていこうと思っています。本当はもっと他の人も集めて一緒にやりたいんですけど一緒にやれそうな人もいないので。だからイベントにアーティストを入れてやろうかなとも考えています。一般の人達もたくさん招待してファッションに触れて欲しいんですよね。一般の人招待したら見たい人ってたくさんいると思うんですよ。特に若 い子たちにライブで見せてあげたら感動したり喜んでくれたりすると思うんです。一般の人に見て心から喜んでもらえた方がショー的にも面白いしやりがいもあると思うので。雑誌を見てファンになってくれるかといったらそうではないと思うし。でもライブで見せたら一生忘れないくらいの思い出になると思いますし。

-みんなに見せるということで映像での発表なども考えていますか

それもありだと思います。ただライブで見るパワーというのは映像よりもやっぱり強いと思うんですよね。だから出来ればライブで色んなところで見せてそれについて話してクリエイションということについて少しでも触れてくれればとは思っています。

-今回山縣さんのクリエイションは賛否両論でした。

こっちが考えさせられるまでのレールを引いてあげればちゃんと考えることが出来るのかもしれないです。僕と中君(Akira Naka)山縣君(writtenafterwards)の順番で見せると言うのも大事だったし何か前振りが必要なんですよね。普通のしっかりしたショーを見せてからじゃないと疑問にならないんですよ。最初からだとずれがひどすぎるから。3ブランドやってる中で僕を見て、Akira Nakaを見て結構普通にちゃんとしたショーをやるのでその後にwrittenafterwardsを見たらああいうのを期待してないだけに疑問符は生まれると思うんですよ。

-坂部さんもどちらかといえば山縣さんよりの物を作りたいとのことだったのですが

そうですね。けどそこはバランスがあるので。僕は山縣君と根本の考え方は一緒なんですよ。ファッションは洋服よりデザイナーの思想がまず大事なんです。そう考えたら彼は「じゃー洋服はこれでもいいじゃん」ていうのを見せるんだけど僕は逆に「洋服は普通でもいいじゃん」って思っちゃうんですよ。思想がしっかり していてその中で洋服がどれでもいいのであれば「みんながわかるものでもいいじゃん」って思ってしまうんですよ。

-でも山縣さんくらいまでやればそういった思想の部分は伝わると思うんですけど坂部さんのクリエイションだと思想の部分は表面的には伝わりづらいと思うんですが

そうですね。そこはレイヤーがあるんですよ。山縣君のクリエイションがわかる人は逆に言えば普通の服があんまり面白く感じないタイプなんですけど僕のを好きな人はファッショ ン界には意外と多いんですね。でも山縣君までいっちゃうと「あれはファッションじゃない」って言われたりするじゃないですか。そうなると僕達の位置が被るよりはそのレイヤーがちゃんとあったほうが良いのかなと思いますね。中君を好きな人はもっとモードよりだと思うし僕はその二人の中間くらいだと思います。だから意識してじゃないんだけど一緒にショーをやってる3人がちゃんとレイヤーになってるんですよね。

-ではその一番根底となる思想の部分について教えてください

ファッションという物は何かということから始まるじゃないですか。ファッションは何よりもコミュニケーションがファッションの中心にあって言葉より深いと ころで結ばれると思うんです。だからクリエイションという物は言葉よりも強い教育だと思うんですよ、その人の心を動かすという意味では。そういう意味で僕の芯になるのは「クリエイション」と「教育」と「コミュニケーション」その3つがリンクしている物がファッションです。表現するのは洋服だけじゃなくてもいいんです。僕の活動とか言葉とかでもいいしもしかしたらこれから地方に回ってライブの物を見せていってそれで何かを感じてもらうのでもいいし、ファッション自体はビジネスだけにしたらファストファッションになってしまうので人とのコミュニケーションをファッションで一からやりたいと思っています。

-ファッションショーをやらないブランドも最近では増えてきました

ショー受けするデザイナーってコンセプトが強い人だと思うんですけど、ただコンセプトが強い=今の時代感が無いんですよ。ライブでやらなきゃ意味がないものといえば今は東京ガールズコレクションくらいだと思います。だとしたらかなり限られるしライブでやること自体今は時代に合ってないから他の方向性も探さなければいけないとは思っています。

-でもMIKIOSAKABEとしてはショーにこだわってるんですよね

そうなんですよね。一応ライブの良さはどこかで見せたいんですけど、そこで迷ってるのはもし出来るのであれば東京ガールズコレクション的なやり方の方が良いなとも思っています。一般の人に開放出来るのであればしたい、一般開放出来て一般の人に見せられなければ今は良くない時代だと思います。

-もし仮に他のデザイナーが共感してガールズコレクション的な感覚(お金を払ってチケットを買って)でやろうよってなったらやりますか

やります。ただそこは実際問題架空な話になって難しいんですけど。今考えてるのは東京で前回の様に3ブランドでショーをやって、その後出来れば地方の学校とかと協力して色んな人に小さくてもいいからライブで見せたい、ライブ周りをしたいなって思っています。

-自分達は90年代の一番良い部分を見てきたといつもおっしゃられてるんですが坂部さんの見てきた90年代のファッションについて教えてください

ファッションの可能性を見てきたんですよね。何がファッションで表現できるか、どこまで人の心を動かせるか、というのを考えると90年代のファッションが一番人の心と繋がっていたファッションだったんじゃないかなと思います。

-もう少し具体的に教えてください

着れる着れないよりも何かコミュニケーションツールとしてRaf SimonsやMartin Margielaに会った事が無い時から彼らの服を見て「あ、この人達はこういう人なんだな」というのを感じたり、Rafの服を着ることによって彼らのバックグラウンドを知った、彼らの記憶を知った、という凄い密なコミュニケーションを取れる方法というか、人と会って言葉で話すよりも深い物を一瞬でわかり合える物がファッションにあるなと思ったんです。

続く

MIKIOSAKABE 08 A/W Collection

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