Interview

KOU 後篇

何も考えてなくて。だから完成したときに本当に自分が描いたのかなって思います。

-コラージュをやろうと思ったのはなぜですか

コラージュも見たんですよね。コラージュをやっている人をたまたまPCで見てそれもまた細かいって絶賛されていたんですよ。そうすると何でこれが細かいんだよってなっちゃうんですよね。「俺の方が細かいわ」って。400パーツ500パーツ切ってずーっとバランスよく貼っていっただけなんですよね。それを誰かに見せたいと思ってやっているわけではないですし。

-コラージュのメッセージは意味があるのですか

言いたいことですね。なんかわからないけど例えば美大生で細かいといってコラージュをやってる人がいるとするじゃないですか。その人が「俺の細かいだろ う」って言うとするじゃないですか。で自分が「うるさいよばか」って言ったりしますよね。でもそれじゃ効力ないじゃないですか。じゃ、「今度一緒に展示会やりません?」ってなったときに「偉そうなこと言ってるんじゃねーよ」ってコラージュに描いた方が説得力があるんですよね。「こんばんは」っていってもその人がそのコラージュを見たら「あっっ」て思うじゃないですか。それが面白いんですよ。「ざまーみろ」って。ひねくれてると思うんですけど。音楽も人を馬鹿にしたようなものが好きなんですよ。

-自分の方が上だという気持ちが創作活動に繋がるのですか

自信があるんですかね、細かい作業においては。本当に細かいことをやっているんだと言ってそれを見せてもらうとしますよね。でももし自分に時間があってそれをやれば絶対に自分が負けない自信があるんですよね。でもただ白い紙を点だけで真っ黒にするということは面白くない。そういう細かさはいらない。だから 面白い細かさが良いんですよ。

-描きたい物はありますか

想像ですかね。わからないんですよ。勿論頼まれた物はお題があるじゃないですか。想像して下書きして資料を見て描くんですけど。

-客観的に自分で自分の作品を見てどう思いますか

「よくやってるな、なんだこれ」って。自分自身が理解できないので。「なんなんだろうな」って思います。何も考えてなくて。だから完成したときに本当に自分が描いたのかなって思います。わからないから客観的に見すぎるんですよ。(描くときに)明日の約束のことやくだらないことは考えてるんですけどその絵については何も考えていないですね。

-なに描いていいかわからなくなる時っていうのはありませんか

ないですね。描きたいときに描いているので描かないときは描いてないわけじゃないですか。その描かないときはわからない状態なんじゃないんですかね。だから描きたいときは何かあるんだと思います。でもその描きたい物が何かは自分でもわからないです。

-誰かに見せたいと思って描いたりはしないのですか

それは無いですね。4年くらいずっとそうで急に誰かに見てもらいたいって、PCでは見る限りあんまり細かい人もいなくなりましたので。デザイナーさんとかだったら今まで見て来たもののキャパが広いじゃないですか。そういう細かい人を見たことや知り合いだったりするかなーと思って。だから見せたいなって思うんですよ。それでその人が「細かい」って言ってくれたらその段階では細かさが一番じゃないですか。で次の人に見せてもし「これより細かいの見たことがある」って言われたらその人を見て「あ、勝てるんだろうな」って思っちゃうと思います。

-自分より細かい人が出てきて欲しいということですか

出てきて欲しいと言うか絶対いるはずなんですよ。目標とする相手がいないとやる気がなくなっちゃうんですよね。細かい人がいればいるほど嬉しいですし、だからそういう人に会いたいので見せたいんですかね。

-海外のギャラリーを回ろうとは思わないのですか

海外怖いんですよね、行った事ないので。3年位前知り合いにここまで描けるなら「NYに知り合いがいるから連れてって上げるよ」って言われたんです。でも 「なんでこの絵がいいと思うんですか」って聞いたら多分自分のことをわかってないからだと思うんですけどこの人あんまり凄くないんだろうなって思うようなことしか言えないから「行かない」って言っちゃったんですよね。「人間的にこの人は浅いな」って思ってしまって。

-もし自分の絵を理解できるという人がいたらどう思いますか

話したいですね。で「やっぱりわからない」って言わせてあげたいです。絶対わからないですよ、描いている人がわからないんですよ。誰がわかるのっていう話ですよ。(自分が描いた物は頭の中の)どこかにいるのかもしれないですけど、どこにいるかもわからないんですよ。

-描くときは全く無心で描くということですか

でも描くときは文章書きますね。ストーリーじゃなくて。ストーリーだったら展開があるわけじゃないですか。そういうのも全く無くて花があります、きのこがあります、脳みそが落ちます、踏み潰されました、ぐちゃぐちゃです、死にます、ざまーねーやって僕は思いました。足があります、でも指が8本あります、普通は5本なので3本切りました、でもなんで普通にしなければいけないんでしょうか、というのをばーっと書くんですよ。

-その文章はどこから出てくるんですか

それがわからないんですよ。ただ書きたくなって。自分の家の壁には全体に張り紙がしてあって「きのこ」「りぼん」「ぼろぼろ」とか書いてあって。でもそれを見てると凄く心地良いんですよ。

-例えばハッピーな絵を描こうと思ったら描けますか

それは描けないかもしれないですね。そのハッピーがわからないので。

-もし私生活がハッピーだとしたらハッピーな絵にはなりますか

ならないでしょうね。別物なんだと思います。私生活の中であれを見たからというインスピレーションは全く無いです。

-気分が暗いから暗い絵になるというわけではないということですか

全く無いですね。全く関係ないんですよ。絵描いているときこっちはわからないんですから。2日間寝なくても平気だし。「うわー」となってて寝れないし。

-絵を描いているときに音楽をかけたりしてますか

音楽はかかっています。入り口なんで重要です。最初かけてこれじゃない、これじゃないって20,30分かけて決めて最初の1,2曲聞いた後は多分もう聞こえないですよ。で、ぱっと気づくと今この音楽なんだって感じですよ。ずーっとリピートなんで気づいたら止まってるとかはないですね。

-ずっと同じ曲を聴き続けたりもしますか

それはしますね。例えば人間の足音だけを7時間とか8時間とか「カツカツカツ』っていうハイヒールの音を大音量で夜中に聴いて描いてぱっと気づくとやべー音でかくねーって感じで。

今は(自分を)コントロールできますけど前まではおかしくなるっていうのがわかりましたね。なんか人を殺しちゃいたくなるんですよ。誰でもいいから。でもそれがやばいって事に気づいてから上手くコントロールできるようになったんですよ。クールダウンじゃなくて入っていって上手く抜けてって友達に会った時に最近何してるの的なテンションに持っていけるようになりました。

-彼女がいたときはどうするんですか

おかしかったとは言われますね。二日酔いじゃないですけどやべーまたやっちまったみたいな。椅子とか投げたり。でも今は大丈夫ですよ。今はつかめたんですかねパワーを落とす瞬間のぽんとぬけられる感じ。前までは抜け出し方がわからなかったから、もし街で喧嘩売られたら「絶対殺してやろう」とか思ってました。だから自分でも怖かったですね。だってまずいですよね。絵描けなくなっちゃいますし。絵描いていたいんで。

-美術館に行ったりしますか

美術館は行かないですね。美術館にあるものは好きじゃないので。商業的というか絵とかじゃないですよね。お金というかやらしいものに見えてきて。描いている人達は純粋だったのかもしれないけどその人達が死んで何年もたってそれを取り扱う人達はその気持ちがないというか。お金ですよね。 だから自分はまだ一回も売ってないですね。多分迷ってる部分があるんだと思います。描きたいだけなんですよね。でもそれで食べていくにはお金が必要じゃないですか。だから売るというのも描くことなんじゃないかなって最近思うようになりました。売るから描けるしって。

-こういう風に描いて欲しいと人に言われた時、そのように描く事はできますか

出来るという自信はありますね。まだHIROさんとしかやったことがないんですけど。HIROさんの時は二時間くらい面白い話して、打ち合わせ自体は10分くらいなんですよ。「来期のテーマはこうだから自分の好きにやってくれればいいし拡大縮小があるけど大体ああいう感じで描いてくれればいいよ」って。それでわかりましたと。で1ヶ月後に持っていって完璧だわって終わるんですよね。

-期限が与えられたらすぐにやり始めるんですか

例えば一ヶ月あるとするじゃないですか。そうしたら最初の1日で資料を集めて1ヶ月丸々使いますね。極力それに時間をかけたいので。それより早く終わることもないですし。25日の何時にどこっていったら25日の午前中までそれをやってますね。少しでも完成度を上げて。

-わかりやすくとかポップにとかっていう対応も出来ますか

HIROさんの場合はわかりますね。5分くらい話しただけでこういう感じだなというのがすぐに掴めますね。

-誰にでも理解を出来る絵も描けますか

描けないですね。理解の範囲にもよりますけど。モノクロで相手が言って来るようにはかけると思いますけどさすがに水彩で描いてくれとか言われたら断ると思いますね。だったら自分じゃなくて水彩でしか描いていない人に頼めばいいと思いますし。

-人に理解してもらいたいと思って絵を描いたら全く違うものになりますか

理解してもらいたいと思わないですね。だから描けないですね。それじゃいけないんだろうなとは思いますけど。

-完成を決める基準は

あるんですよね。ここまで行ったら完成だっていうのが自分の中で。ただ自分の好きな絵とかは終わりもないし細かいので何ヶ月もかかっちゃうんですよ。だから真っ黒で隙間がなくなっちゃう、描くところがなくなるまで描いちゃう。空白が嫌いなんですよ。写真で撮ると真っ黒になるくらい埋めたくなるんですよ。 で、原画を見ると「えっ」みたいな。

-洋服はどんな物が好きですか

HIROさんも好きですしUndercoverとか好きですね。捻ってるじゃないですか。捻りといっても人それぞれわからないですけど、自分が見て「いい、これ欲しい」っていうか。だから(服を)消費する物とは考えてないですね。

-自分で作りたいとは思わないですか

作りたいとは思うんですけど資金的にも機械がないですからこれからそういうのがあればとは思いますけど。自分の着る物、シャツとかは作ってるんですけど。でもそのうちやると思います。

-それも「こいつには負けない」という反発からの作品作りになるのでしょうか

思うと思います。でもHIROさんは特別なんですよね。敵対心もないですし特別ですね。一番最初に拾ってくれたというのもありますし恩は絶対返したいって気持ちはありますしね。それに絵とかだと自由だけど服とかって結構決まりがあるじゃないですか。その決まりを破ったら服じゃないじゃないですけど。でも決まりに従う必要もないのも服じゃないですか。そのさじ加減が難しいですよね。

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