Interview

forme 4/4

“作り手の価値観だけでデザインするようになったらまずいと思いますね。靴ってファッションという部分の方が大きいと思うので”

‐買う人側に靴選びに置いてどこに重点を置いて欲しいですか

デザインが気に入って1シーズン履ければいいという人もいますし、高いけどずっと履けるものであればいいという人もいるのでそれによっても変わると思いますけど結局デザイン好きなのを履くのが一番だと思いますね。いくら履き心地が良くてもデザインが好きじゃなかったらその靴は履かないと思いますし。

‐完全なドレスシューズは作ってないのですか

完全なドレスシューズは作ってないですね。ちょっと違うドレスみたいのは作っているんですけど完全なドレスはうちがやる必要はないと思っていますので。

‐ハイヒールシューズは作らないんですか

ハイヒールは怖いんです。それは歳を重ねた時に確実に足を壊すみたいであれだけハイヒールで先がとがったものにすると外反母趾のきっかけにもなるんですよ ね。それが怖いからうちでは5cmまでしか作っていないですね。だからそういうのは作る気はないですね。自分が作るもので確実に足に負担をかけるものを作 るのが怖いというか。コレクションだと綺麗に見せたいからハイヒールにするというのはわかるし僕も実際女の子を見ていてハイヒールを履いていると綺麗だなと思うんですけど自分が作るとなるとやっぱり怖いですね。だからそういう靴は自分の作っているものとは別物ですね。

‐勿論そういう靴はトレンドも意識していますしね

そうですね。ファッションですしね。コレクションを見ていて色々靴が出てるじゃないですか。それは凄い楽しいんですよ、変な靴とかいっぱいあって。でもやっぱり表層的なデザインというかテーマを反映させたデザインというのはわかるんですけどもともとバイクが好きで始めたというのがあるからなのかわからな いですけどあまり面白くてもそこまで魅力がいかないんですね。作り手としてかもわからないですけど。

‐formeではファッションブランドの靴も手掛けていますよね

僕はタイプ的にも人と一緒にやるタイプじゃなかったんです。先生の紹介でショー用の靴を作ることになったんですけどそういうのも先生の紹介が無かったらやって無かったですし。今は人と何かやるのが凄く面白いんですけど最初は人とやるというのは全然興味無かったですね。服の人は凄いデザインしてくるからそれを生産する為にデザインし直すというのが結構ネックになってくるんですね

‐ショー用に生産される靴と実際に販売される靴は別物なんですか

別物ですね。(ショー用の物は)どんな形にしろ歩ければ良いという感じですね。

‐コレクションに出てくるような靴はどちらかと言えば消費に近いものですよね。シーズン性も意識していますしファッション性が最初にきてその次に機能性が来ると言うか

そうですね。トライアンフというバイク知っていますか。それのエンジンが凄く格好良くて。でもそれって機能的なところから入っているデザインなんですよね。造形的に凄く綺麗で。エンジンのデザインに凄い興味があって昔よく調べていたんですけどまずエンジニアが構造的に形を出してそれをデザイナーに渡す。 お互いが凄い近い位置関係でやっているんですね。建築とかもヨーロッパはまず構造をどうするかを決めてからデザイナーとどうするか決めていく。でも日本は 逆らしくてまずデザインを決めてからそれに対しての構造を決めていく。そうするとどうしても一体感が無くなってくるんですよね。機能美みたいのはあまりないというか。そういう方が見たことないような面白いものは出来ると思うんですけど。ヨーロッパの靴というのはデザイナーと作り手が凄い近い位置にいると思 うんですね。精度的にもちゃんとしているし。でも日本の場合はデザイン的には見たことがないようなものを作っているブランドもあるんですけど説得力が無い。 それは作る側とデザイナー側に凄い距離があるからだと思うんです。例えばこういうデザインを提示してきたからと作り手のメーカーの方が言ってる通りに作っているだけだと思うんですよ。でも結局綺麗じゃないというか。僕はデザイナーさんから話をもらった時にはそういうデザインの話を凄くするんですね。

‐靴を作ろうと思ったらどんなものでも形に出来るんですか

例えば誰かが「こういうのを作りたい」って絵を描くじゃないですか。その通りには絶対作れるんですよ。でもその形に作ることは出来るんですけどそれを量産できるかって言ったらそれは結構違ってくるんですよね。それを量産できるかどうかって言うのは最初の設計で変わってくるんですよね。ちゃんとした靴を作ろうとしたら凄く難しいと思います。勿論服よりは制約があると思うんですけどある程度はどんなデザインでも出来ます。でも思いついてこういうものが作りたいとなっても6,7万とかすると一般的に考えたら高いですよね。若い人なら家賃1カ月分くらいですし。そうなるとすぐに壊れるような靴は作れないなと思う んですよね。

自分でも変わった構造のを作りたいとか、自分で絵を描いてデザインするというよりも構造的にこういう風にしたいと言うところからデザインすることが多いんですけどそれも例えば木型が削れなかったり、作りを知らないと出来ない部分だから学校にいっていて良かったなと思うんです。例えばデザイナーさんが僕を通 してではなくて直にメーカーを通して「靴を作ってください」となるとまず効率悪いとか面倒くさいところとかは出来ないと言われて終わるんですよ。でもこっちがサンプルを作って提示すればその通りに作るしかないじゃないですか。「出来ない」とは言えないから。僕の場合は自分でサンプル作って職人さんに「こういう風に作ってください」とお願いできるからある程度生産の時の自由度と言うのが他のブランドよりは高いと思うんですよね。自分でやってそれを作ってもらうだけだから。そういう意味でも構造をわかってそういう風に生産をしていく方が作りたい物を作れるし、面白いものも作れると思うんですよね。

‐洋服ならなんとなく高い理由が説明がつくというか、でも靴って難しいですよね、なんでこんなにシンプルなのに高いのって思う部分もありますし

そこをもう少しうまく伝えられないととは思いますね。僕が全部言ったこととかも、見てちょっとでも伝わらないといけないことだと思うから。染料とかもそうなんですけど革の質感とかでもちょっとでも良いと思われるような加工の仕方や木型に関しても説明しなくても伝わる部分を増やしたいですよね。作り手としての価値観だけでデザインするようになったら多分まずいと思うので。それは媚びてるというわけじゃなくて靴ってファッションという部分の方が大きいと思うので常にそこは考えていかないと。作り手ではあるけど買ってくれるのはそういうのを知らない消費者なので。

‐デザイナーが消費者にどれだけ自分の声を伝えられるのかというのはこれからの時代凄く重要になってくる気がします

バイヤーさんと話をしていても伝わっていないというかそれをうまく説明するのが苦手なんですよ。初めてのバイヤーさんが来たら説明するじゃないですか。それが凄く苦手で。例えばこのベジタブルタンニンの革の説明をするじゃないですか。それって流行りで、薬品を使ってないからエコになるんですよ。勿論そういう 部分もあるんですけどベジタブルタンニンじゃなくてもそういう風に言ってるところもある。例えばハンドメイドじゃなくてもハンドメイドっぽくしてハンドメイドって言ってるところもあるし。うちはハンドメイドではあるんですけどそんなに「ハンドメイドシューズブランド」みたいなことは強く言わないんです。「うちのは作りがいいですよ」と言っても僕が言ってるだけじゃないですか。そこを履いてとか見た目とかでも出来るだけ伝わるようにしていかなけ ればいけないと思っています。レディースでもこういうタイプの靴を買っている人が増えてきている気がしますし。自分の革はここの革を使ってこういう製法だから と言って買われても嬉しいですけどそれだけじゃない部分もあるのでデザインでもそれがもっと伝わるように出来たらと思います。

Interview & Text:Masaki Takida

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