Interview

Yu Fukumoto 5/5

“自分がやりたいものというよりは人が見たいのが自分のメンズなんですよね。だからそれを第一にやりたい”

‐最近洋服を買ったりしますか

しません。

‐いつからそういうことをしなくなりましたか

NYで少し買ったけどブランド物とかはほとんど買わないし、古着でちょっと安かったら買うけど日本に帰って来てからほとんど買わないですね。もうここ数年 あまり買って無いですね。10年くらい同じ服を着ているので。

‐好きなものはその間変わらないんですか

そうですね。買って捨てるのももったいないしそういう消費の一部にもなりたくないしボロボロになるまで着ようっていう。NYでもMarc Jacobsをたまに見かけたんですけど同じ服しか着ないんです。縁起が良いかららしいんですけど。あれだけ消費を押している、とは思えないけどファッ ション自体消費だからそれを担っている彼がなんで同じ物しか着ていないんだろうというのは面白いですよね。そのくらいで良い気がするんですよね。

‐僕はシーズン性というのが凄く良くない気がするんですよね。それが消費に繋がるというか

シーズンは良くないですね。もったいないですよね。今はシーズンだけじゃなくてどんどん早くなっているしお店によっては2週間に一回新しいものが入ってき たり。

‐8年間の間に日本のファッションは変わったと思いますか

凄い変わったと思いますね。それはマーケットとかに行くと思うんです。目で見ている部分には何着ているのかとかわからないですよね。女の子とかみんな体型 変わったなとか思うけど別に着ている服とか見てこれ着ているんだなとかは思わないけどマーケットに行くと「若い子って良いもの持ってないんだ」って思いま すね。たまにそういうマーケットの一角でおじさんとかが出しているところを見ると「良いもの持っているなー」って逆に思うんですよね。というくらい表面上 でしかものを買っていない気がしますね。

‐良いものとは具体的にどういうものですか

一角でアンティークの時計を売っているおじさんがいて40年代の時計とかを自分で直しているんですよね。どこかで習ったのか聞いたら「独学で学んだ」って 言ってて。自分で分解してやっているうちに直せるようになったらしくて、オーバーホールも全部自分でしてそれを趣味としてマーケットで売っている。片やほ んとに良いものを持っていない子がマーケットで良いものじゃないものを売っている。そんなに努力もしていない、その辺で買ってきたやつ、「もういらない1 シーズン着たし」って売っている横で40歳くらいのおじさんが自分で独学で勉強して直して売っている、勿論安くは無いけど。それはお金を払うに値する商売 だと思うんですよね。というのも努力なんですよ。

‐良いものを見れなくなった理由とはなんだと思いますか

やっぱりみんなが良いものを知らないというのが大きな理由だと思います。そこは自分達の役目でもあると思うんですけど。高いから良いものというわけではな くてほんとに意味があるものを作っていくこと。その人なりのストーリーがあるものだったり。そういうのがまずないから明らかにみんな売っているものが同じ なんですよね。ただ売っている人が違うだけで。結局売っているだけ。これはあそこのお店で買ってきて、これはどこかで拾ってきて思い出のあるものだという のもないしものの背景にストーリーがない。

‐ロンドン、アントワープ、東京と住んでますがファッションの捉え方は全然違いますか

違いますね。アントワープはちょっと奇妙なところだから一般市民と学生が遮断されているからファッションに興味無い人達との接点が無いんです。住んでいる 世界が違いすぎるから物凄い忙しい学校にいる人と片や横見たら全く仕事していない椅子に座っているおじさんみたいな街だからその辺でスピードはすれ違って いますね。ファッションは本当にその地元の人が求めているもの。その辺で売っている古着屋のものを着る女の子と学校に行っている女の子が着るものが全然違 いますしそのギャップは凄く面白いなって思いますね。

ロンドンは自分はチャリティーショップに良く行ってましたけど。ロンドンはストリートカルチャーが盛ん、アントワープに無いのはストリートカルチャーだか らストリートから面白いものが生まれるとか、今日道歩いていて面白い人を見つけたとかはない。「今日、変なホームレス見たよ」とか、「今日気違いなおっさ んいたよ」とか、「こんな格好している人がいたよ」とか凄い刺激があるのがロンドンだと思う。

‐ある意味アントワープは普通ということですね

そうですね。NYと東京は凄い対照的な気がするんですよね。NYでえっ?てなっているものが東京ではおっ!となっている感じがする。例えば日本のビジネス マンとかってみんな同じ格好していますよね。ああいう格好って意外と「あ、いいんじゃない」ってNYで見られるかもしれない。NYはみんなスーツなんだけ ど日本が求めているアメリカ像ってアメリカに無い。意外とそれが日本にあったりとか。アメリカでそういういわゆるああいうの素敵だなと思っているアメリカ 像というのはもうない。逆にそれをやっちゃうとえって顔されてしまう。

‐ロンドンでいうBarbourとかですかね

そういうものを逆にロンドンではなくNYで着るといいじゃんて見えてしまう。女の子に関して言えばヨーロッパと日本、アメリカは大差がある。ヨーロッパは Barbourとかほとんど着ないから。アメリカとか日本の女の子ってボーイッシュなんですよね。そんなに境界線が無いと思う。アメリカ見てても女の子で 少年みたいな格好している人いっぱいますしね。

‐どこのファッションが一番好きでしたか

ファッションはNYはいいですよね。やっぱりスーツ着ている人も凄く素敵な人がいるし日本みたいにしわしわになっていないし。女の子も可愛い格好している 人がいるし。

‐僕はNYに行ったことないんですよね

自分もそれまでNYに行ったことなかったんですけど見方が変わりましたね。NYはアメリカじゃないと言われているくらい他とは違うだろうけど。でも凄いロ マンチックですね。あとはわけわからない人からメール来たりするんですよね。どこからどうやって自分がNYにいることをかぎつけているのかわからないです けど。「プライベートにデザインしてくれ」というメールが来て、結局会わなかったんですけど今思えばやっておけばよかったなーって。凄いお金も貰えたかも しれないし。そのくらいアメリカンドリームみたいなものは絶対にあると思う。一攫千金じゃないけどやれるかもとは思う。エネルギーもあるし。

‐またNYに行ってみたいと思いますか

いつか行ってみたいと思いますね。あの感覚は東京では絶対に無い気がする。

‐企業でやることは考えていないんですか

最初はそれも考えていました。でも大体どこの企業も「私たちの会社はこうだから」とかやっぱりもう止まっちゃっていますよね。何か変えていこうという気持 ちが無いと思う。変えなきゃいけないという疑問を持っていない人よりはどちらかといえば変えていこうと思っている人についていく方がデザイナーとしてもい いですよね。あとやっぱり組織に入ると組織の一部になるわけだし想像することも退化する気がします、体験したわけではないけど。少なからず自分の生活も安 定してないし、お金もないけど想像することは退化していないから。それでいいかなと思いますね。

‐東京の街で生まれるデザインもありますか

自分が想像してなかったくらい疑問や納得いかないことが原動力になっていると思います。

‐疑問などを原動力に洋服をデザインするということですか

そういうのもあるし逆にそういう環境だからこそ自分みたいなアイデアが必要なのかもしれない。必要に駆られる気がするんですよね。ベルギーにいると疑問を 感じても人の国だしなと思うし変えるのもどうかなって。でもここだとやっぱりやんなきゃなって気分になりますね。周りもいるし。

‐みんなの影響も強いと

そうですね。みんな頑張っていますので。

‐自分がブランドを始めるのであればどこでやりたいですか

それは日本かな。やっぱり結局自分の国だしなんらかの形で産業をバックアップしていくべきだと思うんですよね。(山本)耀司さんも「自分を支えてくれる産 業の為にも辞めない」と言っていたから中国生産とかするのであれば別だけど自分は国の産業を使って作る。しかも良いものがありますし。

‐ではやるのであればベースが日本というだけでなく日本の素材を使って、日本の工場を使ってとなるわけですか

そうしたいですね。自分の求めていることと正反対のところに力を注ぐのではなく、リスクはあっても消費社会、大量生産、中国生産もそうだけどそういうのに 関わるのではなく違うところに関わっていきたいと思いますね。

‐そうなったらパターンも全部自分でやることになるんですよね

工場に出すならパタンナーを介していかなければいけないかもしれないと思っています。自分でわけわからないものも作れるし、パターンも引けるんだけどそれ は産業では通用しないと思っているし、それで何らか工業パターンを引ける人が出てこないと無理だと思います。

‐そこまで自分で全てやりたいとこだわるわけではないと

でもほんとに自分で出来るだけやりたい、引きたいと思います。

‐始めるとしたらどんなブランドになると思いますか

なるべく小さい規模で。日陰だから。日陰に咲く花みたいな感じで目に留まる人だけ留ってもらえれば。

‐ショーをやりたいわけでもなく

後々やりたいですけどね。

‐でもショーやったら日陰じゃなくなりますよね

そうなんですよね。日陰でショーをやればいいかもしれないですね。でも最初はほんと小さい規模でやれたら。

‐それは日本人の為の洋服ですか

それは全部ですね。日本人だけというよりどの国の人もというのはありますけど。良すぎないやつを。

‐目標としてはいつ頃でしょう

それは難しいですね。時が来れば。でも見たい人がいるっていうのが支えになっています。やってくれっていうのは色々なところから来るし、自分のメンズを見 たいって言ってくれる人もいるし。メンズやる理由はそこにもあるんですよ。自分がやりたいものというよりは人が見たいのが自分のメンズなんですよね。だか らそれを第一にやりたい。

‐いつになるかはわからないけど必ず自分のブランドはやるということですね

やります。

‐まずはwrittenafterwardsでということですね

そういうような運動の中で力を注ぐのであれば山縣君のような人かThom Brownのような良いビジョンを持っている人に惜しみなく自分の力を注ぎたいなと思っています。無駄に捨てるくらいなら。

Interview & Text:Masaki Takida

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