Interview

Kentaro Tamai / ASEEDONCLOUD 5/8

“やっぱりこの人は損益を考えずにものを作るというか、そういうもの作りが出来る彼に対して凄い羨ましい気持ちとちょっとした妬みもありますよね”

―(writtenafterwardsを)辞めることを決めてから1シーズンあったわけですがそれが決まってからの玉井さんの立ち位置は変わりましたか

ショーに向けてのもの作りというのは完全に山縣に舵を取ってもらいましたね。前まではコレクションをするにも僕が意見を言っていましたし、2人である程度すり合わせてものを作っていた部分が完全に山縣の主導でショーに向けて動きだしました。その間僕はプロダクトというか売る物のデザインであったりニットの生産をしていました。

―コレクションに関してはほぼ関わっていなかったということですね

そうですね。意見を聞かれたら言うくらいでした。

―ごみ(09A/W Collection)で行きたいと言われた時にはどう感じましたか

「面白い」と言いましたね。だから僕は反対していないです。

―あのコレクションは凄かったですよね

ごみ良かったですよね。本当にその時は抜けるのを決まっていたのである意味客観的に見ている部分があって。

―もし自分がこれからもwrittenafterwardsを続ける立場であってもあのコレクションをやれていたでしょうか

もう少しリアルな部分に落とし込んでいたとは思いますね。あそこまでぶっちぎってはいないですね。

―あのコレクションは見るものにパワーを与えたというか、何か考えさせたというか

自分も関わっていたんですけど最近見たショーの中で一番面白かったですね。

―僕にとっては日本に帰国してから初めてのJFWだったんです。それで一番最後にあれを見せられて色々考えましたね。こういうことやる人がいるんだとも思ったし

ある程度麻痺していたのであの表現が初めてみる人に比べたら衝撃は少ないかもしれないですけど、でも実際にあれをやるパワーというか魂の削り方はデザイナーとして凄いなと思いましたね。山縣の姿勢、凄いと思いますよ。決して僕の出来る方向性ではないですね。

―勿論批判する人がいるのはわかるんですけどあれをやれることは凄いことだし意味があることだしもっと色んな人に見せたかったですね

そうですね。実際その前後に日本でもファストファッションが勢力をつけていったじゃないですか。あの時期だったから面白かったのか、それとも今回の神様コレクションが逆でごみだった方が面白かったかどちらだと思いますか。

―うーん難しいですね

なにか今回やったらマッチしすぎだと思うんですよね。メッセージ性がある意味リアルというか。あの時期だったからこそ面白かったのかなって。今回ごみやっていたらクレバーすぎて面白くなかったのかなと思いますね。
でもあれを見て、反応を見て確実にwrittenafterwardsは僕の方向性じゃないなと思いましたね。

―抜けるべきだったなって

そうですね。

―実質Prince Prince Princeが玉井さんがwrittenafterwardsとしてちゃんとコレクション製作をしたのは最後になるわけですね

そうですね。ごみの時はデザイナーでありながら第3者でもありましたからね。

―ごみ作りは手伝っていないんですか

最後の方は一緒になってやっていましたけど僕は山縣ほど追い込まれていないですね。彼の追い込みようは凄かったですからね。でもそこまで追い込んだからこそあのパワーは出せたと思うんですよね。そんじゃそこらの人でファッションに関してあそこまで魂を削れる人はいないと思いますよ。

―玉井さんは削れないんですか

削る方法が違いますね。あんなに粗い削り方はしないですね。勿論僕もぎりぎりになって表現しますし、僕もスロースターターですし、山縣みたいに常に変化するもの作りするんですけどでもあんなに最後に吐き出す感じではないですね。

―寿命縮まりますね

そうですね。だから僕は常に彼の体心配ですね。でも心配ですけど常にあれを続けて欲しいです。

―同じデザイナーとして凄いと思いますか

あの追い込みようをずっと続けられたらいい刺激ですよね。

―完全にwrittenafterwardsを抜けてからの11月のデザイナーズビレッジでのショーですが客観的に見てどうでしたか

個人的にはごみの方が良かったと思うんですが、writtenafterwardsのショーを外から見るというのは変な感じでしたね。ある程度何やるかは知っていましたし直前までみんなが作っているものも見ていたので出てくるもののイメージはついていたんですけど、それでもやっぱり相変わらずあの姿勢がファッションに正直というか。見ててやっぱりこの人は損益を考えずにものを作るというか、そういうもの作りが出来る彼に対して凄い羨ましい気持ちとちょっとした妬みもありますよね。いい刺激にはなったんですけどまだちょっと神様は綺麗だったというか、まだ余力を感じましたね。

―自分の力が加わったらもっと良いものが出来たとは思いますか

それは思わないですね。僕のパワーがそれに良い作用を与える風には思わなかったですね。本当に客観的に彼の作品として見てましたね。やっぱりwritttenafteerwardsは自分もいた存在なので歯痒い部分はありましたけど。でも純粋に何か手伝えることがあったら手伝いたいと思いますし

―writtenafterwardsを卒業とのことですが今後再び一緒にやることはありますか

今は僕は考えていないですし、山縣も考えていないと思います。それよりも僕は自分のもの作りをちゃんと確立したいですし、山縣もちゃんと社会と自分のもの作りとをどう向き合うかというのを構築していかなければいけないので今交わることがプラスに働くと思わないですね。

―writtenafterwardsを通して何が一番変わりましたか

もの作りに対しての姿勢ですね。やっぱり最後まで僕自身は出来ていなかったですけど、デザイナーとして最後まで貫き通す方法、山縣がいたから出来た部分があってそういう彼の姿勢を間近で見ていてそれは僕の中でwrittenafterwardsでやっていて一番意味のあることでしたね。周りがどうこう言おうと自分が責任を持って最後まで貫き通す気持ちというメンタルな部分ですね。そこを彼に学んだのが一番大きかったですね。

続く

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