Interview

Nick Needles 1/2

アーティスト、スタイリストとして活動する千野氏と大学在学中から服作りを始め2009年エスモードジャポンを卒業した高橋氏の2人が手掛ける注目のブランドNick Needlesに話を聞いた。

―2人のプロフィールを教えてください

高橋:エスモードを卒業しています。僕はその前に栃木で大学に行っていました。
千野:エスモードの体験入学で出会ったんです。そこで意気投合して遊ぶようになって僕は1年間勉強して途中でスタイリストをやりたくなって学校を辞めたんですよね。僕は高校卒業した後留学したいと思っていて1年間バイトしてお金貯めてイギリスに行きました。イギリスではセントマーチンズのファンデーションコースに1年間行きました。

―なぜセントマーチンズだったんですか

千野:その時はファッションに全然興味無かったんですよね。雑誌を見ながらイギリスのアート&デザインっていいなと思っていてイギリスに行きたいと思ってアートとデザインを両方学べる学校ということで行ったんです。

―ファンデーションコースでは途中で専攻を選べますが何を専攻されたのですか

千野:ジュエリーですね。日本にいた時は全然服が好きではなかったんですけどセントマーチンズというのは服が強いということが行ってからわかって色々なファッションショーに触れるにつれてファッションに興味がわいてきて自分も作りたいなと思ったんですよね。でも技術を習得するのであれば日本の方が良いなと思ったんです。セントマーチンズはプロセスとか表現の部分は学べるんですけど技術とかになるとテクニカルになって授業も理解できないのかなと思って。なので日本の学校の方がわかりやすいし技術は上なのかなと思ったのでエスモードに行こうと思いました。それで帰って来てエスモード行くまでずっとバイトをしていました。

―高橋さんはなぜ大学を卒業してから専門学校に行ったんですか

高橋:実際やりたいことがあって大学に行っていたわけではないんです。何となく行っていて卒業する時にどうしてもファッションがやりたくなって作りたくなったのでエスモードに行きました。

―千野さんはなぜ途中で学校を辞めたのですか

千野:その時は服を作るというよりもビジュアルメーキングみたいなことがやりたくてその延長で服は作りたいのかな、色んな人が作った服を新しいビジュアルに作りかえる方が面白いのかなと思っていたんです。

―今現在はスタイリストとして活動はしているんですか

千野:今は少なくなりました。一度辞めてその後映画系のスタイリストにアシスタントにつきその後派遣会社に入ったんです。映画のアシスタントは面白かったのですがファッションに特化したものではなかったので派遣でファッションが多いところに入って色々経験させてもらいました。そういうことをやっているうちに繋がりが出来て六本木のリステアに就職することになったんです。

―2人でブランドを始めたのはいつですか

高橋:2009年の5月か6月くらいです。最初はパタンナーとしてレディースウェアーで就活していたんですけどなかなか就職出来なかったんです。自分の力が甘いのもあるんですけど男だからという理由でもとってもらえなかったり。不景気なのもあって思い通り就活が進まずどうせ失うものがなにもないのであれば自分でブランドを立ち上げた方が良いと思ったんですよね。社会やアパレルに対するフラストレーションがたまっていたんですけどそれをぶつける場としてブランドを立ち上げようと思って彼に声をかけました。

―なぜ男性だと駄目なのでしょうか

高橋:やはり女の子の体を理解していないということで普通の企業だと女の子のパタンナーが中心で難しかったんです。

―千野さんとやりたいと思ったのはなぜですか

高橋:感性とか好きなものが近かったというのとエスモード同士でやるより外で色々な物を見てきた人とやる方がデザインに広がりがあるのかなと思ったんです。

―千野さんはなぜ高橋さんとやろうと思ったのですか

千野:一番はタイミングです。自分が新しく何かを始めたいと思った時に彼が「服を作りたいんだよね」っていう話をしていて、でも一人でやるより誰かと組みたいって、僕もその時に一緒にやりたいかもって思ったんですよね。

―名刺上ではデザイナーとパタンナーになっているのですが完全に役割は分けられているのですか

千野:基本的には分けられています。2人で最初にテーマを話し合って僕が絵型を書いて高橋がおこすというのが基本の流れです。彼がなぜパタンナーをやりたいかというと立体とか少し難しいラインとかを作っているそこに喜びを見出している、そこから生まれてくるモノを僕も大切にしたいと思っているのでデザイン画をラフに描いてそれを渡して組んでもらってそこから生まれてきたモノをまたデザイン画に落としてという感じでやっています。2人ともデザインに関しては口を出してやっています。

―高橋さんはあまりデザイン画を描いたりとかはしないんですか

高橋:僕の場合は基本的にデザインは立体で作るという感じです。絵で描くんじゃなくて彼の絵を見ながらそこに自分の提案だったりやりたいことを立体で入れていく。

―千野さんも洋服は作れるのでしょうか

千野:パターンは高橋の方が全然上なので彼に任せて出来上がったものにまたデザインを加えてそれを縫ったりとかはしています。

―2人で一番最初にデザインしたものはなんですか

最初にブランド名を決めてから棘の入ったパンツを作りました。

―Nick Needlesの意味を教えてください

千野:最初は人の名前をブランド名にしたいと思ったんです。2人で一つの物を作るので一人の名前にしてそれをデザイナーにしてやろうかなと言っていて。でも最初からニードルは決まっていたんです。高橋が棘のディテールを昔から好きで、それが彼のキャラクターになっていたんですけどそれは僕らのこれからやりたいことのメッセージ(尖る)ということにも繋がっていたのでニードルは入れたいと思っていました。ニックというのは僕らの名前、イニシャルを少しまぜて人の名前っぽくしたのがニックだったんです。ただ良く良く調べてみたら“Nick”という言葉には俗語がたくさんあってその中に中心を打つという意味があったんです。それが凄くイメージに合致してる、音的にもNick NeedlesっていいねってことでNick Needlesにしました。



―ブランドコンセプトを教えてください

千野:核を貫く棘で内なる反逆心です。

―2人が社会に感じるフラストレーションとはどういうものでしょうか

高橋;アパレルの企業はクリエイションが弱い。学生の方が自由にやっているから良い物を作っている気がするんですよね。でもそれが企業に入ると普通のデザインになる。海外のことはわからないんですけど日本は凄くクリエイションがやりにくく感じる。そういうところに一番怒りを感じます。

―内なる反逆心や核を貫く棘というものをどうデザインに落とし込むのでしょうか

千野:何で貫くかといったら自分を貫くことが一番大事だと思うんですけどやっぱりそういう風に格好良いなって自分が思うものを見に纏っていると凄く自信が付いたり、わくわくして新しいことしたいと思えるようになると思うんです。そういうことが出来るブースターみたいな役割もあると思うのでそういうわくわくするような服を作って着る人に自分を貫けるように助けられたらいいなって思います。

―シーズンに拘って服作りされていますか

千野:それはないですね。
高橋:ただゆくゆくはちゃんとシーズンを決めて展示会をやろうと思っています。

―近未来のバトルスーツをイメージしたコレクションBlack Soldierについて教えてください、黒に統一された理由はなんですか

高橋:生産数が少なかったので良い生地で色んな色を使うのが難しかったのが大きな理由です。黒であれば良い生地が手に入りやすかった。黒は格好良いと思うしイメージにもあっているのでとりあえず最初は黒でやろうとなったんです。

―メンズレディースどちらメインでやられているんですか

千野:メンズで作ってサイズダウンしてレディースにも対応しています。
高橋:ただデザイン的には女の子より男の子が好きな感じのデザインに仕上がっていると思います。

―今現在生産はどうされているんですか

高橋:工場に出さないで全部自分達で作っています。

―ルックブックにもあったマスクはどのような素材で出来ているのですか

千野:フェルトで出来ています。

―ネックレスにも使われていますがなぜフェルトという素材を使おうと思ったのですか

千野:レザーとか鉄とかじゃなくて他のブランドがあまり使っていない素材を使いたかったんです。フェルトにはこれから可能性があるんじゃないかとも思うんです。洋服に関しても。それだけで洋服を作っているブランドもありますので完全に新しいわけではないんですけど自分達の使い方を模索したいと思っています。

―洋服に関しては自分達の着たい物をデザインしているということでしょうか

千野:そうですね。ただマスクなどはストリートで付けてもらいたいというよりもちょっとスペシャルなイベントとかで付けたり、リース目的で作っている部分もあるのでそれがアーティストさんとかにリースされたら良いなと思っています。

―お店はどうやって探しているんですか

千野:基本的には探していないんです。XANADUはたまたまブログを見てメールしていただいて。CEMENTの田島さんは銀座でやったクリスマス展で見てくれて連絡してくれて。凄く嬉しかったですね。両店舗とも凄くおきたかった店なので。

―どういうお店に置きたいとかありますか

千野:XANADUに置いてあるのって僕らが目指している世界観に近いと思うんです。ちょっと硬くて近未来っぽい物があつまっていてそれでいてあまり普通じゃない物が集まっていて。だからここに置けたら僕達の世界観も歪まずに見る人に伝わるんじゃないかと思いおきたいと思いました。
CEMENTは新しい可能性という感じで置きたいと思ったんです。僕らは基本的にはメンズライクでストイックな物を創りたいと思っているんですけどCEMENTは可愛らしいお店ですよね。ネックレスはでも可愛い方向にも持っていけるなと思っていてアクセサリーだけ可愛い方向で展開するのも面白いなって。自分達の作品も見る人によって捉え方が全然違って面白いなって思いますね。XANADUに置くとクールな印象に見えるんですけどCEMENTに置いた時ってなんか可愛らしい雰囲気になる。

続く

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