Interview

BO NINGEN

イギリス在住、Stolen Recordingsに所属する4人組ジャパニーズ・サイケデリック・ロックバンド”BO NINGEN”。
The Horrorsのファリスが2009年に見た最もエキサイティングなバンドとして紹介され、一気にイギリス国内で注目を集める。 その破天荒かつ驚くほど快楽的なパフォーマンスやサイケデリックを全身で体現しているような奇抜なファッション、ジャンルや垣根など飛び越えたような至高の音楽性などが話題を呼び、2010年11月にリリースされたセルフタイトルとなるデビューアルバムで海外の音楽メディア、そしてインディーファンからも高い評価と支持を勝ち取ったBO NINGEN。
今年1月にはアルバムリリース後初となる凱旋日本ツアーを成功させ、ついに4月6日Knew Noise Recordingsより日本盤をリリースすることになった4人にインタビューを行った。

―日本盤がついにリリースされますが、どのような心境ですか

Taigen:単純に嬉しいです。今まで(UK盤を)邦楽/洋楽のコーナーに置いて貰っていましたが この日本盤が正式な日本でのデビューということになるのでとても嬉しいです。
Kohhei/Yuki: Knew Noise Recordings の山田さんに感謝です。

―UK盤から新たにデビューEPに収録された楽曲やリミックス数曲を加えたボーナスディスクがつき、ジャケットの仕様などもそれに合わせたスペシャルなものに仕上がっていますね

Kohhei: ボーナスディスクとなる2枚目がおまけのような形になるのが嫌で、2枚組のアルバム、となるようにデザインし直しました。
Taigen: おまけというよりは、日本盤は日本盤として ひとつのBO NINGENの作品として発表したかったよね。

―”Koroshitai Kimochi”のようなサイケデリックなリフが鳴るロックからBO NINGENを知ったリスナーの人は、幻想的でアンビエントともいえる”Yuruyakana Ao”などで心地よくそのイメージを裏切られるように感じますが、アルバム一枚を制作する上で意識したことなどはありますか

Taigen: よくインタビューでどのようにアルバムの曲を作ったのですかって聞かれるけど、基本的に今ある曲を集めて作ったファーストアルバム、という感じかな。
Kohhei: ライブでやってる曲だね。
Taigen: そうだね。録音した時点での 今のBO NINGENというものをパッケージした、というような。特にアルバムをこういう風に作りたいから、BO NINGENをこう見せたいから、と意識して作ったというよりはライブでやってる曲たちをそのままパッケージした、という感じです。

―楽曲を作る上でもそうですか?

Taigen: 本当にそういうことは何も考えないようにしてるかな。
Kohhei: 空気を吸うようにね。
Taigen:うん。特に何も意識しないようにしてる。意識したら呼吸だって過呼吸にもなるから。
4人でジャムをしながら曲を作るし、自然に湧き出て来る、にじみ出てくるものをBO NINGENの音楽として外に出せるのがいちばんだと思ってます。

―ではchange fashionでのインタビューということで、少し音楽以外のことについて伺います。
Taigen君はDAZED誌上にモデルとして登場していたり、BO NINGENはUKでファッション/アート関連の媒体に取り上げられることが多いですね。サイケデリックというイメージを牽引するスタイルアイコンとなっていることについてどう思いますか?

Taigen: 僕自身は全くファッションに興味がないというか、頓着がないのでよく解らないんだけど、
サイケデリックという言葉にリミットがない所が好きで。
楽曲やパフォーマンスしかり、衣装やこの髪型しかり、メンバーそれぞれが好き勝手にやっていて。それが最後 結果的にサイケデリックというイメージになっているのが、あまのじゃくみたいで面白いなと思う。

―アートワークを担当しているKohhei君はどうですか

Kohhei: ジャケットのデザインなどに関しては なるべく、いわゆるサイケデリック感というものを出さないようにはしているかな。
Taigen: いわゆるサイケデリック感、を求めちゃうと制限が出来ちゃうしね。

―三角形やシンボルの組み合わせなどは土着的な、妖怪のような雰囲気を感じます。

Kohhei: ああ、妖怪は、好きです。
Taigen: 僕たちは外国にいると 妖怪みたいなものだし・・日本にいてもそうだけどね。
Kohhei/Monchan: シンパシーだね。

―では、4つの個性が混じり合っている、ともいえるBO NINGEN、
各々が影響を受けた時代やミューズなどを教えて下さい。

Kohhei: 僕がいちばん影響を受けているのはシュールレアリスム。超現実主義。思想的にも外見的にも影響を受けてる。
シュールレアリストの集合写真って皆スーツを着てるんだよ。本当は僕もスーツ着たいんです。

Monchan: ファッション的なことで言うとホームレスの人とか、格好いいなあと思ってて。純粋で。
装飾性とか日常の刺激としてあるファッションじゃなくって、機能性が先に来るというか。
Kohhei: 肩に鍋つけている人とかいるもんね。
Taigen: 生活感出てるもんね。飾りがない。
Monchan: ね。だから自分もそうやって(マルタン・)マルジェラの服じゃないけど、自分からどんどん朽ちていくというか、風化していく格好をして 自分自身がバンドとしての経過を体現していこうとしてる、かも。

Yuki: 僕はゼロ年代か、年代関係なく映画に出てくる人たちかな。
今の自分に反映されてはいないけど、大好きなフランス映画の 俳優がスーツを着てハットをおさえて走っている、みたいな 音楽におけるスター性とは違うきらびやかさに凄く惹かれてる。
あとはやっぱり音楽を別としたら、高校生の頃に見て来た大阪のアンダーグラウンドシーンのバンドの人たちの服装。
あのおよそ尋常でない配色センスとか。
Monchan: すごい色彩感覚だもんね
Yuki: サイケデリアとしての派手さじゃなくて、どこかネジひとつ取れてるみたいな、感覚には影響を受けたかな。

Taigen: 小さい時から、映画でもアニメの中ででも 中世的で髪の長い男の人が格好いいなと思っていて。
今衣装で着ている服は母親のものだったりするけど、だからといって女装がしたいという訳ではないんだよね。
現代で女装をしようと思ったらどこまでも女性になれるとは思うんだけど、
僕は単純に中世的な存在、女性的ではなくて中性的なものに惹かれます。

―では最後に。今後、V&A Museumで開催中のYohji Yamamoto回顧展での演奏や、様々なイベントが控えていますが今後チャレンジしたいプロジェクトなどを教えて下さい。

Kohhei: 今まで何回かやってきた 映画にサウンドトラックをライブでつけるイベントをシリーズ化したいね。

―前回はショーディッチにある教会で ねこぢるのショートフィルムを流しながらライブでサウンドトラックをつける、という形でしたね。

Taigen: シンプルな即興演奏のライブではなくて場所やアートワーク、全部込みでの「フィルムスコア」というものをやったかな。
Yuki: みんなそれぞれ案を出して最終的にねこぢるに決まったね。
Taigen: 案の中から、一番日本らしい、アニメーションということで。
Kohhei: The Holly Mountain (Alejandro Jodorowsky, 1973)は長過ぎて出来なかったし.. ショートフィルムで尺もちょうど良かったね。

―日本でも機会があったらそのようなイベントをやってみたいですか?

Taigen: したいですね。普段とは全く違うオーディエンスの前で演奏ができるのも魅力だし。
Yuki: ロンドンの良い所でもあるのが、色々な分野の人が興味を持ってくれて、垣根を越えてじゃあ何かやろうって物事が始まるところ。
Taigen: 日本だとどうしてもライブハウス以外でバンドが演奏するのが難しいけど、
こっちは普通に小ちゃいお店でもバンドに演奏させてくれるもんね。あとで警察が来たりすることもあるけど..。
難しいけれど、日本でも切り開いていけたら良いな と思っています。

その素晴らしい音楽性や狂気すら感じさせる創造性だけでなく、オフステージで見せる真摯さからも人々に愛されるBO NINGEN。インタビューを終えて、言葉や人種の壁を超えた新しい創造のあり方を彼らは体現していると感じました。
次週はメンバー4人による、アルバムディスク1に収録されている9曲 全曲解説を掲載する予定です。

BO NINGEN / BO NINGEN (棒人間)

2011年4月6日 on Sale

[ Disc One ]
1. 4 Seconds To Ascension
2. Yurayura Kaeru
3. Koroshitai Kimochi (reprise)
4. Gasmask Rabbit
5. Kage
6. Post Yohkai
7. Maguro (rewind)
8. Yuruyakana Ao
9. △

[ Disc Two ]
ボーナスディスク、デビューEP全4曲に加えてMerzbowによるRemix、Taigen Kawabe(Vo.Ba)によるRemixの5曲、合わせて9曲が収録
Koroshitai Kimochi EP & Remix
1. Koroshitai Kimochi
2. Psychedelic Misemono Goya
3. Atami
4. Maguro
5. Kage (Arai Shu Remix)
6. Post Yohkai (Ena Remix)
7. Yurayura Kaeru (Dead Fader Remix)
8. Yuruyakana Ao (Taigen Kawabe Remix)
9. Maguro (Merzbow Remix)

TOWER RECORDS / HMV / DISC UNIONではそれぞれ内容の異なる特典ディスク付き。
詳細は以下でご確認下さい。

FILE-UNDER/Knew Noise Recordings
http://blog.livedoor.jp/fileunder/

Interview & Text:Sayaka Wagatsuma

Comments are closed.