Interview

MIKIO SAKABE / JENNY FAX 2011 – 2012 A/W Collection

2011年4月22日六本木TSUTAYAにてMIKIO SAKABE / JENNY FAX / 最前ゼロゼロによる合同ファッションショーが行われた。

―今回のショーに関して教えてください

震災があった中でクリエイションについてみんな考え直している、というのがショーをやる一番のポイントになっている。今回のショーはMIKIO SAKABEのブランド自体を明確にする為のショーというよりは、エンターテイメントとしてやっています。
ショーに出てくるディアステージのアイドルの洋服は完全に衣装です。それ自体をやることはビジネスに直接繋がるものではない。ただしその分クリエイションに特化したものを久し振りに作ってみたいという思いがあった。その象徴として日本のカルチャー、そしてアイドルというものを使い、洋服を使って表現するというのをメインにしているのでコンサートみたいなものがこのファッションショーのメインでもある。自分の作っているコレクションとアイドルの対比みたいなものを今回のショーでは見せたかった。

―今回のイベントではサイゼンゼロゼロとコラボレーションしていますがその経緯を教えてください

元々サイゼンゼロゼロというチームはファンタジスタ歌麻呂とセミトラの菅井さん、ディアステの喪服ちゃんとやっているのですが元々の背景が全く違う人達と組むというのが面白いところだと思っていてその中でなぜディアステだったかと言うときっかけはドリフのファッション研究室。そこに歌麻呂君と山口壮大君、喪服ちゃんが出演していて多分それはネオコスについての話だったと思うのですが、そのトークショーに僕が聞きに行っててそこで初めて歌麻呂君と話してそこですぐに息があって彼に誘われディアステに一度行ったんです。そこで初めて地下アイドルと呼ばれる人達のライブをみせてもらったのですがそれがかなり衝撃的だった。それまでにもYoutubeやテレビ等でオタ芸は見たことがあったのですがその中でも選りすぐりの人達であるTO(トップオタ)と言われる人達のオタ芸が凄かったんです。特に今回やる電波組のコンサートとTOの人達のオタ芸の息の合い方が普通のロックコンサートとかよりも息が合っているというか魂が一つになってるように感じて「こういうのってファッションに一番必要なんじゃないか」って。形は違うけど何かしら一番大事なもの、塊みたいなものは一緒でその面白いパワーをファッションの中でも見せたいなと思ったのがきっかけです。ただコラボレーションするのであれば衣装でという形で。

―今回のショーとコレクションのテーマに連動性はあるのですか

今回のテーマとショーは全く別ではなく被ってはいる、しかしコレクションの方はもっと暗い感じにしている。地下アイドル達は本当に面白い人達ばかり、でも彼女たちはもともとは暗かったり引きこもりだったり友達がいなかったり様々な背景がある。そのアイドルの過去の暗かった部分を、あえてモードで表現しているのがMIKIO SAKABEのショー、そして明るい部分はアイドルのステージになっている。その両方をショーで見せたかった。だからショーの途中に切り替えて見せています。
あくまでもメインはアイドルの華やかなステージとオタ芸のパワー、そういうのを全て見てもらいたい。そしてその背景、深みを出す為にMIKIO SAKABEのショーがある。
ただ今回は実験的すぎてどうなるかは正直やってみないとわからない。

―自分自身もどうなるかわからないということですか

そうですね。前回も正直ショーが始まるまでどうなるかわからなかった。でもわかんないくらいのことをやっている方がわくわくしている。ただし今回は前回と違って定員が会場の都合で500人と言われているので前回よりは小さい規模にはなると思う(前回は1500人以上)。前回のコレクションより今回のコレクションの方が嫌いな人は多いと思う。ただ逆に前回より今回の方が好きな人もいると思う。

―MIKIO SAKABE 2011- 12 A/Wコレクションのコンセプトを教えてください

シュールレアリズムです。凄く現実的なモノを見過ぎて、非現実的になるというのがテーマの一つ。引きこもりの人にある現象に近い。今回のコレクションでは歴史背景が全く違うものを混ぜ、本来であれば文脈的には合わないものが混ざっている。それをいかに自然に見せることが出来るか。時代も違うし、カルチャーも違うものを混ぜているがそれを着れるモノとして落とし込んでいる。

―震災前から六本木のTSUTAYAを会場にしていましたがこの会場に拘る理由というのはあったのですか

どうしてもTSUTAYAでないといけないというのは正直ありません。ただ場所探しをもう一度するというのは現実的にも大変なこと。今回のイメージに合うところを時間をかけて探してきてTSUTAYAというところに辿りついた。今回は凄くカルチャー寄りのイベントなのでショー会場やファッションのイベントの会場として使われているイメージの無い場所を使いたかったんです。写真に写った時にごちゃごちゃしている方が今回のイメージに近かったし普通の場所をどうにかイメージの中に入れたかった。
ただ震災前と後で演出は全然変えました。節電してやろうということでかなりの量のLEDに変更してやることにしています。そこは現実的に。

―服そのものに変更はなかったんですか

そこに変更はなかったですね。ただスタイリングに関しては最初から震災後考えたので、それ以前は全く考えていませんでした。

―前回のCHIM↑POMとのショーもそうですがカルチャー寄りのものとのコラボレーションが続いています。それはなぜですか

MIKIO SAKABE単独でやることでもファッションは勿論成り立つ。ただファッション内で成り立たせたいという意識よりファッション外の人にファッションを見せていきたいと最近凄く思っている。だからショーとしてファッションが成り立つということよりもそこでどういう人達に見てもらえるかというのが凄く大事。確かにMIKIO SAKABEだけでやったりThis is Fashionだけでやる方がファッションとしては成り立たせやすかったり、簡単なのですが、実験的だったり、危険であっても結局外に派生しなければもうファッショ面白くないし、それこそファッショナブルじゃない人達になってしまう。だからそういう意味でも今はこういうことをやるべきだと思ってやっている。

―会場選びに関しては一般人が来れる場所ということも重点を置いて選んでいるんですか

一応それは考えてやっています。勿論予算の問題があるのでみんなが入れる場所というのは無理ですが。

―MIKIO SAKABEというブランドにおいて一般人にショーを見せる意味とはなんですか

それは難しいところですが雑誌やジャーナリストが本当に成り立っているのであれば一般人を入れなくてもショーは成り立つと思う。ただ今はそれが成り立っていないというのが一番の問題。一般の人達に伝えるはずの雑誌等のメディアが一般に伝えられてないのをたくさん見ているし、それこそ今回の震災のニュースでも色々と問題になっている。メディアは今機能していないように見える。だからそれ自体も今までのやり方じゃ駄目なのかなというのは思っている。

―それはtwitterやBlog等の影響もあるということですか

それはありますね。一般の人に直接向けるという行為はファッションにとって凄く大事なことなのかなって思い始めています。

―今回一緒にショーをやるJENNY FAXについて教えてください

JENNYFAXは今回がショーデビューのブランドです。MIKIOSAKABEは僕と(パートナーの)ジェンファンの2人でやっているブランドですがJENNYFAXに関してはジェンファンが単独でやっているブランドになります。なぜ今回ということは特にないのですが一緒にやることは震災前から決まっていたことだしこのタイミングで新しいブランドを見せる時かなと思ったというのが一つの理由です。

―ここ数シーズンオーソドックスなショーとは遠ざかっていますがそういったファッションショーをやろうという気持ちはないのですか

やろうとは思っている。次回はオーソドックスなショーをやりたい。

Interview:Masaki Takida

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