Interview

地下アイドルとファッションの競演 MIKIO SAKABEのショーを業界関係者はどう捉えたか vol.2

秋葉系地下アイドルとの共演で話題となったMIKIO SAKABEのコレクションに関してのコメント、第2回目はアントワープ王立芸術アカデミーをデザイナーの坂部氏と同期で卒業し、自身のブランドMA deshabilleも今季からスタートさせた村田明子氏、エディター、スタイリストとして国内外の様々な媒体で活躍するアメリカ人ミーシャ・ジャネット、high fashion ONLINEのチーフエディターの西谷氏、MIKIO SAKABEと同日にrooms LINKにてランウェイショーを行った翡翠のデザイナー伊藤氏、そしてBALMUNGデザイナーHachi氏の5名に話を聞いた。

→MIKIO SAKABE 2011 – 2012 A/W Collection

→地下アイドルとファッションの競演 MIKIO SAKABEのショーを業界関係者はどう捉えたか

女性の内面的な変身願望を刺激された、エモーショナルなショーイングだったと思います。
まず、まだまだ余震が続く中でのあの(不謹慎w)な靴。
安全とか、安心とかそういうのは置いておいて、私はまだまだ先にいきますよ、未来にいきますよ、って云う、最高のファック ユー シューズだと思いました。あと半分高さを削ってくれたら、購入したいです。
”シュールレアリズム”の文脈ですが、マグリットですね、これは、ベルギー、アントワープ派ってカテゴリーをつくると、絶対にみんな、”マグリット”が入っている。で、ミキオさんも、例に漏れずアントワープ派なんだなーー、って強い共感を覚えました。
ベルギー人の鬱っぽさと、日本人、オタクのみなさんとかの鬱っぽさって共通する部分があって、そのイッちゃってるものをバランス良くごちゃ混ぜに、ある意味露骨に、可視化させたのは流石だなっと思いました。
カオスラウンジの黒瀬さんが、
”『スモールワールド、スケールフリー」という言葉があるけれど、
 『フリー』な『スケール感』こそ今、描くべきだ。今それぞれの
 スモールワールドは不安がいっぱいかもしれないが、フリーに
 つながれるスケール感は希望そのものだ。”
と、震災後に、カオスラウンジについてつぶやいていらしたのが、心に響いて、メモしておいたのですが、ファッション関係者には、これはファッションじゃない、って、不満が残ったかもしれないし、電波組ファンからは、彼らの純粋な気持ちをファッションとして扱われるなんて侵害だ、って思われたかもしれない。だけれど、私にとってはあのスケールフリーな、三次元なキャンバスは希望そのものだったし、難しいキャンバスに立ち向かったミキオさんの勇気に感動して終始涙しました。ありがとうございました。

村田 明子 / MA deshabille / スタイリスト

ショーの前にroomsLINKでピースを見せてもらった時「秋葉原のアイドルが登場します」と言われ、正直ぴんとこなかったのですが、実際見てみたら最初は新しいと思った。
常日頃からMIKIO SAKABEの秋葉系とモードの融合は新しく感じるし、凄く尊敬している。ただ今回はアイドル達が着ている衣装はモードというよりは衣装になっていた気がする。衣装ではなくショーピースの服をアイドルに着せた方が私は共感出来た。アイドルだけを見ているとファッションではなく単なるエンターテインメントに感じる。
MIKIO SAKABE自身のコレクションはグランジを感じ、クリスマスのプリント等は良い意味で気持ち悪いけど面白い。ファッションは良い意味でショックを与えるところがあった方が良い。
 秋葉系とモードの融合をコレクションで示していた彼のやっていることは新しいと思っていたがそれがだんだん秋葉系そのものになってきてしまっている。もうちょっとファッションの要素が入ってくればいいなと感じた。

ミーシャジャネット / エディター / スタイリスト

髪の毛が濡れていて、うつむきながら歩いてくるダーティーなイメージのモデル。アニメからそのまま造形にしたようなヘアー、2次元のイメージのでんぱ組のアイドル。その対比が今回のテーマだったと思うが、その接触がファッションのショーとして見た場合はうまくいっているとは思えなかった。ショーの楽しい部分、おたくの人達も登場人物の一人として配置されているライブなのでどの位置で見たかによってまた感想は違ってくると思う。私自身は建物の外で見ていたのでオタクの人達の近くで見ていたらまた違った感想をもったかもしれない。
ただ私は洋服のメディアに携わっている人間なので、洋服がどうなっているのかをやっぱりチェックする。そういう意味で言うと洋服的にはあまり面白くなかった。改めてじっくりと洋服の構造を見ると凄くクラシックで、クラシックなものを少し変えていたり、プリントに見える死んだ鳥の刺繍は凄く綺麗だったりするのですがそれは良く見ないとわからない。その良く見ないと分からないという部分と、高いブーツ等のぱっと見て伝わってくるようなものとの全体のバランスが今一つだと感じた。
 またファッションと関係の無い人達にあのショーがファッションの面白さとして伝わるかと言うとそうではない気がする。それであればでんぱ組の衣装にもっと切り込んでいきヘアの2次元ぶりをもっと洋服の方に取りこんでいけば良かったのではないか。
 アイドルはアイドルで良いと思うし、でんぱ組の女の子たちが着る服でもファッションにはなり得る。洋服としての成熟度を、作る人であれば追求して欲しいと思うしその辺の追求が甘い。方向性は否定しないし、そういうことはやって欲しいと思うがファッションの面でももっとやって欲しかったと感じる。

西谷 真理子 / ハイファッションオンライン チーフエディター

40代のおじさん方が楽しんでいる姿、フィナーレの時,秋葉原のアイドルの周りをMIKIO SAKABEを見に纏ったモデルがすれ違っている様を見て凄く東京らしさを感じました。
秋葉原のアイドルのはっちゃけた感じの女の子と暗いモデルの対比を意図していたと思うのですが洋服は個人的に好きでした。また、街おこし的なファッションの可能性を感じました。

伊藤 弘子 / HISUIデザイナー

ぼくの意見の結論から言うと、今回のショーはついに坂部さんの一番得意とするところの能力が過去最高に発揮されていたショーであったと思います。そして今までファッションとして回収されていなかったアキバ文化の氷山の一角にファッションからの視点を与えることによって陽の目を浴びさせたことが、良くも悪くもこれからの時代の多様化の速度を一歩促したのではないでしょうか。

非常に強い緊張感を感じました。その強い緊張感とは言い換えれば強い現実です。
今回のMIKIO SAKABEのショーで見せてくれた(そして会場と観客によって共に作られた)あの場のたった10分や20分程度だけの”限られた現実”の中には、人々が普段社会の中で様々なことを感じている”普段の現実”の延長線上に在る何か、が存在していたのではないかと思います。(もちろん全ての人というわけではありませんが。)

ただ、アントワープの学校で作品を発表していた坂部さんの例えば3年生の修了コレクションのような服を映像や写真などで知っている自分にとっては、今回のショーに込められている想いのエネルギーや伝えたい狙いという点、もう少し実際に商品(プロダクト)としてお店に並んで服を着る人々がそのプロダクトからどのような想いや感触を受けるのかという点、この二つには少し乖離した部分は否めないです。
もう少しディテールやアイテムとして、コレクションやショーから独立した時に感じる感覚や機能という部分がショーで伝えようとしている意味や感覚ともっと繋がりを強く持つことができれば、本当の意味でそのコレクションで行った活動が実を結ぶのではないでしょうか。
学生時代にはもっとディテールにそのコンセプトを迫るような姿勢が見えていたように思います。

ちなみに話は少し変わりますが今回「MIKIO SAKABE×秋葉原ディアステージ」と2010AWに時を同じく「MUGLER×LADYGAGA」がパリコレクションで発表されていて場所は大きく離れているのに時代の共通点を感じずにはいられません。
有名人がショーモデルとして出ていたから注目を浴びていた〜、だなんてよくある話で片付けられるようなものではなく、よくよく見てみると服のデザインやその構成そして作られているその”緊張感”などは、LADYGAGAの関係ナシには成り立たないようなものであったと思います。
現に、日本でLADYGAGAのライブがあったのですが、リトルモンスターといわれる熱烈なGAGAのファンたちはそのライブのためだけにものすごい服装をして行き、また渋谷のCANDYでは「今日はGAGAのライブがあるからそれに着ていくため」ということで例えばJUNYASUZUKIの10万円ほどもするような日常的にはものすごく派手で激しいデザインのドレスを買って行ったという話もあります。

最近は、なにか強いものを創造(想像)するために、なにか強い現実を必要とするのかもしれません。

Hachi / BALMUNG

One Response to “地下アイドルとファッションの競演 MIKIO SAKABEのショーを業界関係者はどう捉えたか vol.2”

  1. あきこ より:

    てか、ねむキュンかわいい♡♡♡