Interview

AKANE UTSUNOMIYA 2/2

“デザイナーは基本的に個人の考え方がとても作る物に反映すると思います。人として、個人としてどのように行動できるか、考えるかと言う事を思うと、デザイナーとして考え方が変わるのは自然の事の様な気がします”

→AKANE UTSUNOMIYA 1/2

―日本に帰国後一度就職していますがすぐにブランドを立ち上げるという選択肢はなかったんですか

それは考えてなかったです。30歳ぐらいになったら自分のブランドやりたいなって思って、続けたいなというのが1番根本にあるから、いきなり出てすぐに終わるようなやり方はやりたくなかった。だから30歳ぐらいでお金貯めてから、やろうかなと思ってたんです。

―日本に戻ってこられてからはなにをされていたんですか

atoに2年程いました。atoで日本のことを勉強させてもらったんです。

―シンマイに出そうと思ったのはなぜですか

就職活動してるときに、友人から電話があって、「シンマイ送らないの?」って。「ポートフォリオ、作品があんまりない」と言ったんですけど、「とりあえず送ればいいんだよ」って。シンマイに応募したまま就職探しを続行してたんですけど2つぐらい、どっちにしようかなと迷ってる時に、シンマイの件で電話がかかってきて、せっかくだからシンマイやろうって。

―シンマイに出る為にブランドをはじめたってことですか

そうですね。それが、一昨年の9月くらい。ちゃんと始動したのは10月末くらいからですね。

―日本でのデビューとなったシンマイでのショーの反応はどうでしたか

思ったよりは良かったです。「1着も、ひとつもつかなかったら(バイヤーが買ってくれなかったら)どうしよう」って作ってる間じゅう不安だったので。0じゃなかったので良かった。

―シーズンを問わずこれからもニット中心のコレクションとなるのでしょうか

自分はやっぱりニットが中心ですね。もっとニットばかりのコレクションにしてもいいのかなって。春夏とかって、ニットがやりにくいってイメージが多いから、逆に楽しいですね。

―デザイン画は描くんですか

私、絵が凄い下手くそなんです。だから描いても詳しくは描かないですね。それをいっぱい書いて。パターンにお願いするときも絵を描いて伝えようとするんですけど、絵が下手くそで・・・結局口頭でほぼ説明みたいな。

―学校では絵を描かなかったんですか

セントマのときも困ったんですよ。とくにMA。みんな絵がうまいのに私は絵がへたくそで、しかも大きい絵が描けないんです、A4に。小さいほうが描きやすくて、小さいのばかり描いていて、プレゼンのときはそれをスキャンして拡大してボディに組んでプレゼンしてたりしたんです。
なんとなく頭にあるのをボディに組んで写真撮ってっていうのが私の中では一番多いやり方なんです。

―同期でデビューしている人もいますが彼らを意識したりしますか

それはないですが、なにやってるのかとか、どういうのを作ってるのかというのは知り合いだから気になるし見ちゃいます。だから逆に知らない人のコレクションについてはあまり知らない。

―自分の知り合いの作品しか見ないということですか

そればかり見ちゃうっていうのがあるかもしれない。

―刺激受けたりとかもしますか

そういうのはありますね、頑張ろうって思います。同じ世代の人はやっぱりやりやすいですし。海外から帰ってきて大変なことも多いですけどなんとかやれてるのはそういう人達に支えられているからです。

―もともとは魅せる服のほうが好きだったようですね。写真にしたときの服が好きとも言われていました

好きですね。雑誌とかもそうですがもともと写真になったものが好きで、写真におこして終わらせることが多かったんです。ショーというところにあまり固執してないというか、イメージが伝わるものが好きなので。でもやっぱり作るものが確実に変わった気がします。

―日本に帰ってきてからですか。現実的になったんですか

そう、すごく現実的になりました。

―それは日本人を意識して洋服をデザインすることになったからでしょうか

そこは意識はしてないですけど、自分のいる環境で無意識にそういう風になると思うんですよ。
日本向けにつくろうとはやってないですけど、帰ってきて時間が経ち日本に慣れてるし、作るのはそういうふうになってるのかなと思います。
以前は激しいというか、日本の街じゃ着ないだろうっていうのを作ったりしていました。ボディコンはそうなんですがそれだけでなく変な赤のボディコンとか、肌がすごい透けるモノとか。

―自分が着たいものを作ってるわけではないんですか

そういうわけではないですね。ただ出来るだけ着るようにしています。自分で着るか着ないかっていうのは多少考えて。基本的に全部着て試しています。

―最終的に海外でやりたいという気持ちがあるようですが

行きたい、凄く行きたいですね。

―どこでやりたいんですか

パリに行きたいですね
海外に行くことによってやっぱり作モノもちょっと変わってくると思うんですよ、海外に行くっていうことになれば意識も変わってくるだろうし。

―意見を聞くことによって、また自分も成長すると

多分もっと昔自分にあった近いことにも戻ったりするのかなって。それを含めて洋服持って行きたいっていうのと、やっぱりヨーロッパで洋服始めたから、持って行きたいっていうのはありますね。

―ショーをやることではなく展示会ですか

ショーか、海外で展示会どちらか選べるとしたら、海外で展示会をやることがしたいですね。勿論ショーが出来ればいいですけど。

―コレクションを見ている人が着てたほうがいいけど、特別ショーじゃなくてもいいのかなっていう印象はありますね

そうですね。あまり動きがどうのこうのっていうタイプでもないので。もうちょっとシルエットだったりとか、素材感だったりだと思います

―コレクションではどのよう服が人気なんですか

水着や下着は正直あまり人気がなかったですね。人気なのはカーディガンやワンピース。やっぱりリアルに着れるものが人気ですね。

―シンマイでショー、展示会をやってなにか反省点はありましたか

反省点は、もっとデザインをいれないと駄目なんだと思いました。あとは価格のつけかたが甘い。布帛は人に手伝ってもらって、値段つけたので、そこまで違和感はないんですが、ニットの値段は工場から来た値段に、そこから単純に計算してたので値段設定が少し甘かったです。

―自分の中で”デザイン“の面は弱いなと思っているのですか

物によってはですね。ニットからきてるから、デザイン的にはまだちょっと弱いかなって。
以前は値段があまり高くなるのが怖くて、それで抑えたり妥協してる部分も正直多かったですね。。

―先に値段から考えてデザインした面もあったのでしょうか

値段から考えたというよりも、最終的に色んな仕様だったり、デザイン決めるときに、これやったら確実にすごい値段高くなるから、妥協しようとかそういう部分はありました。

―素材の面でもバリエーションを増やしていこうという気持ちはありますか

そうですね。あんまり落ち着かないでやりたいというか、人が着てみたいっていうものは作りたいなっていうのはあります。あそこ行ったら、面白いものがあるんじゃないかなっていうものを作りたいですね。それが素材だったり、小さいことでも。
展示会を次どういう風にやろうかっていうのも含めて、見せ方だったり、どういう風にしようかなっていうのはすごい考えてます。

―日本で一から始めようと思ったら誰も見てくれない。そういう意味ではシンマイに出ることでメディアにも出るし支援ももらえるという部分では良かったですね

日本は新人は凄く難しい。逆にロンドンは面白ければ、ついていく人もいっぱいいる。

―損得なしに、面白ければいいじゃんみたいな感覚で、無償で動いてるから新しい物がどんどん生まれてくる。日本はそういうのが弱い気がします

お金がどうのこうのとか、仕事の関係でとか・・・。ただロンドンの人が言うには、ロンドンはすごい面白いけど、お金にならないって。

―お金にはならないかもしれないけど、いろんなものが結びつく

たしかに。ロンドンはそういう意味では凄く良かった。

―自由ですしね

洋服だけじゃなくても、写真とかでも、ヘアメイクとかでもそうですよね。

―学生がこんなに凄い人と組めるんだっていうのが良くありますよね

ポートフォリオ作るには世界で一番いい場所でした。

―日本って一人でやりづらい環境ですよね

結構恐いかもしれないですね。向こうでは突然メールうったり、突然連絡しても、相手の作ってるものが好きだったりすると、そこでつながったりするけど、多分そういうの日本では少ないかもしれない。

―自分の一番の特徴って言うのはどう考えていますか

得意なスタイル、、、やっぱり自分が女の人なので、そういう目線で作れる洋服ですね。

―女の人が着たい服ですか

そうですね。わりとリアルというか、リアルだけど面白い物を作りたいなって思っています。

―コンセプチュアルになりすぎず?

それはそうです。洋服じゃなくても物を作るときに、イギリスはコンセプトがどうのこうのでそれにしばられて、物づくりが進まないことがあったりして、そこにこだわるのってどうなんだろうっていうのは思っています。アートだったらいいですけど、それがデザインとなると、なにか・・・。デザインって結局、対人のモノで人が着るものであるから、それに自分のコンセプトがどうのこうのって固まりすぎてもどうなんだろうっていうのはあるので、あまりコンセプトには縛られないでやろうと思っています。

―テーマは最初に決めるんですか

いや一番最後です(笑)

―出来た後に決めるんですね。今回、これにしようみたいな

そうですね。

―じゃあテーマ性というより1体づつ考えて作っていく感じですか

一応はじめになんとなくこれやりたいってのがあって、そこからどんどんどんどん膨らませていく。テーマを言葉で表現してくださいって絶対言われるのは知ってるけど、どうしようどうしようと思って、大体いつも最後に考えます。

―ないと困るから付けるということですか

なくていいんだったら、つけない。テーマがないというのもどうなんでしょう。またそれも逆に固く思われそうですよね。プレゼンとかでも、作り終わったあとに、表紙何にしようとか考えたり。そういうのは割と最後に考えますね。

―最後に、3.11東日本大震災がありファッション業界も多大な影響を受けました。デザイナーとして作品に対する取り組みや考え方等何か変化はありましたか

この度東日本大震災により、多くの方々の命が失われた事に対し、深くお悔やみを申し上げます。

自分にできる事を長期にわたり、意識して生活して行きたいと無力ながら考えております。

今回、デザイナーとしてはチャリティーTシャツとして微力ながらお手伝いさせていただきました。

私は大きな会社として動いてないので、個人レベルとして意識を持ち、知る事からはじめ、自分にできる事を長期に渡って行動して行きたいと思っています。

原発問題など、今まで普通と思い意識していなかった事を白紙から見直す事の大切さなど、個人レベルですが大きな影響を受けています。

デザイナーは基本的に個人の考え方がとても作る物に反映すると思います。
人として、個人としてどのように行動できるか、考えるかと言う事を思うと、デザイナーとして(個人として)考え方が変わるのは自然の事の様な気がします。

本当に一日でも早く復興が進み、被災された方々が安心して生活が出来る事を、心から願っております。

Interview & Text:Masaki Takida

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