Interview

POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 2/4

“僕は世の中にははっきりしたことってないなって思っている。1個の何かに向けてやるという感じではなく、色んな人がいるから良い。僕が「こういうテーマなのでこういうことを表現する」ということにはそんなに興味がない”

→POTTO “ワイルドスタイルとか恐山” 1/2

―モデルの配置には意味があったんですか

配置に関しては特別な意味はないんですけど何となく合う場所にはなっています。ただ指定の場所にいなかったモデルもいますね・・・・。気付かなかったかもしれないですがリリースは地図になっているんです。枝光(りえ)と野木(息子)は1Fになっているんですがその2人は実際は2Fにいたんですけど。リリースをちゃんと見てる人がとりあえずいなかったなーって。
リリースに「ご自由に押してください」と書かれている場所があるんですがそこには観光名所に良くあるような記念スタンプが置かれてありました。それはオバマんが「暇だから作るよ」って作ってくれたんです。

―ワイルドスタイルゾーンとか恐山ゾーンとかに別れているというわけではないんですよね

それは違いますね。明確な境目があるわけではないので。

―音楽はYESTERDAY BOYのライブがメインの音楽だと思っていたんですけど結果的にはBGMの一部でしかなかった。全員がそれぞれに音を出して会場の音楽になっていましたよね

そうなんです。あれも実は会場の音を荒木君が拾って音を出していたりもしていたんです。全然違うことをそれぞれがみんなやっていてそれが音になる。でもそれに違和感がない。それがいいなって。でもそれは僕がコントロール出来ることではない。こっちでカラオケが聞こえつつ、あっちでヒトミトイが歌って、またあっちでは誰かが喋ってる声が聞こえるっていう。

―全てに明確なものがないというか全体的に曖昧な感じが多いですね

服は曖昧ではないし、そうではいけないんですけど僕は世の中にははっきりしたことってないなって思っている。1個の何かに向けてやるという感じではなく、色んな人がいるから良い。僕が「こういうテーマなのでこういうことを表現する」ということにはそんなに興味がない。色んなものがあることが素晴らしいと思う。それと自分が作る服がうまく共存?・・・・そういうことを考えているんですよね。
テーマに合わせた服作りというのは勿論出来るんですけどそういうのではなくもう少し別のところから出てくるものがいいなーって。やってみないとそうなるかはわからないんですけど今回はまーまー良かったかなって。
ランウェイは作るデザイナーがいてそれを見てるという感じですよね。でも見てるだけ。それはそれでいいんだけど自分が今やるにはそういうのじゃない方がいい。新作を見せるという感じではなくモデルとお客さんが喋って欲しかった。勿論それは”服が凄く良い”という前提があってのことなのですが。

―結果的に自分の思い描いていたものは出来上がったんですか

比較的ですね。でも僕自身正直そんなに最終形は描けていなかった。僕がそんな感じだからモデルの人はわけがわからないし「大丈夫なのかな」って感じだったと思う。僕は理由はないけど「まー大丈夫」だろうという気持ちはあった。でも「こうなるだろうな」というのはあまりなくて。結果的に良かったなとは思っています。僕がモデルにお願いしたことと言うのは「疲れたら休んでいいです」というのと「モデル同士で関係無い話はしないでください」それと「お客さんとなるべく喋ってください」くらい。だから後は各自でやってもらうだけだから最終的にはモデルを信用しないと出来ない。信用し切るというか。それが結果的に凄く良かったということだと思うんですけど。

―それぞれのモデルさんには旗があったんですがあの旗は山本さんが作ったんですか

旗は僕が「こういうのにしてください」と伝えて手伝ってくれた久保田さんという方が作ってくれました。

―旗には意味があるんですか

それぞれ意味があるんです。それぞれの好きな物や嗜好が反映されている。洋服と一緒です。

―DM(ショーのインビテーション)の写真は選手宣誓で旗に囲まれていましたが旗が好きなんですか

個人の旗は嫌いではないのですが集団としての旗や国の旗は嫌ですね。最終的にはなんでも個人個人だと思うから。だからDMの写真の旗は僕にとってはNGの例の旗です。
旗が駄目というよりは集団、組織が好きじゃないんですよね。それも結局個が集まって集団になっている。でも集団と言うだけでなにか嫌じゃないですか。例えば「この集団はこういう人達です」とか。

―でも今回のショーでやったことってPOTTOの集団ですよね

それは個です。あくまでも個人です。集団として向かっているものではないです。

―ワイルドスタイルとか恐山という集団ではないんですか

それは「とか」だし。ワイルドスタイルだったらこいつら「ワイルドスタイル」なんだろうなってなるかもしれないんですけど。逃げ道とかではなくそういう感じなんだろうなって。「そういう感じ」っていうのが大事なんだと思います。

-山本さん自体の旗はどういうものだったんですか

猫ですね。それは何も意味していないです。ただ可愛いっていう可愛さ押しです。ショーで作った旗と言うのは特定のモノを区別する旗ではなくその人の人柄を表したもの。無くて良いものだけどあった方が嬉しいし、いいですよね?旗自体はどうでもいいんです。団体の旗とか国の旗よりは個人の旗の方がいいということの個人の旗なんです。旗はでも基本的に気持ち悪いですね。
旗自体は全然良いんですが”旗自体に意味を持つ”のは良くないんですよね。国旗が嫌いと言うよりは国旗自体をありがたがるのが嫌いなんです。国も無くて良いと思っているし、性別も無くて良い。

―全て個人で良いということですか

そうですね。そういうことも基本的に全てクリエイションに繋がりますね。DIYって普通のことだと思うんですよね。「服作ってください」って言われて作ることが出来るのであれば作りますよね。基本的にはブランドもあまり好きじゃないんです。

―POTTOはブランドではないんですか

僕はそういう風にはあまり思ってないですね。説明上そう言ってるみたいな感じなんです。「POTTOのデザイナーの山本さん」って変な感じなんですよね。

―でも「POTTO」という名前をつけていますよね

それがここ何年かのテーマなんですよね。名前は愛着わくからいいんですけど分類と言う行為が人間の不幸の始まりなんじゃないかって思うんです。最初の分類は男と女で、「こういうのは魚」、「こういうのは犬」、そういうことをすることでどんどん壁が出来てくる。本当は分類なんてないんじゃないかなって。分類しているのは人間だけじゃないかって。だからそこに戻れたら凄い良いのではないかという気がする。「ノアの方舟」的な。モノに名前を付けて分類していくことが物事を悪くしていくと思うんです。

―極端な話、名前もいらないということですか

本当はいらないんですけど愛着わくし、可愛かったりするんでそれは良いと思います。名前があるのはしょうがないんです。そういう風に生まれちゃったんで。ただファッションのシステムは無くなっていいと思います。秋冬、春夏とか。結局ファッション業界がなくなっても服はなくならないし、服が好きな人は無くならないですよね。シーズンがあるのは売りやすいからってだけで。

―山本さんは夏に夏の服を作って冬に冬の服を作っていますもんね

でもそれでやっていけるなら本当はそれが良いと思いますよ。卸は勿論大事なんですけど。自分が全部出来るわけではないし、自分が拠点としているところから遠い人もいるし。

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(接客の為、休憩を経て)

旗はやっぱりいいですね。今見てたらそう思いましたので訂正です。もしかしたらショーで作った旗が良いだけなのかもしれないしデザインの問題なのかもしれないですが。

―良くある旗はDIYじゃないから駄目なんでしょうか

逆に国旗がDIYだと困りますけどね。数で勝負みたいなところが良くないと思うんです。「人は何してもいいんですよ」ってことですよ。人は本当は悪いこととかしないと思います。

―性善説ですか

そうですよ。システムとかいらない。ショーではそういうことをやっていきたい。
そういう気持ちになったのは多分お店をやってるから。お店をやっていなかったらああいうショーにはしてなかったんだろうなって思います。お店をやってることで直接お客さんから「こういうのが欲しい」という意見を聞けたりする。
それに僕はみんなのことが好きなんです。ゲンズブール的な意味ではなくて・・・。人間みんな好きで可愛いなと思うんです。それを普通に考えているとそういう風になるんです。

続く

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