Interview

HOUSE OF LIZA

ロンドンではヴィンテージ自体は非常にポピュラーでありショップも数多く存在しているが、中でも伝説的なデザイナー達の貴重なヴィンテージ・ピースを見て購入できる機会は決して多くはないのではないだろうか。
昨年キングスランド・ロードの199番地にオープンしたハウス・オヴ・ライザは、Jean Charles de Castelbajac、Jean Paul Gaultier、Stephen Sprouse、Thierry Mugler、Kansai Yamamotoといった過去数十年間最も実験的でファッションを開拓してきたデザイナー達のプレタポルテを専門にキュレートし販売しているブティックである。
当時のストーリーやヒストリーをそれぞれに有している一つ一つの洋服は、数十年を経た今日でも未だに光り輝き、美しきアート・ピースやインスピレーションに溢れた歴史的レファレンスであることは勿論、最高にクールなストリートウェアでもある。
ヴィンテージ・プレタポルテ、特に80sと90sを心から愛するショップのオーナー、Goncalo Velosaが自身のヴィンテージ・コレクションへの情熱を持ってインタビューに答えてくれた。

―ショップのコンセプトを教えてもらえますか?

このショップではピースが創られた当時カッティング・エッジなファッションを生み出していたデザイナーのユニークなヴィンテージ・ピースを取り扱っています。今日の消費者は歴史を持ち過去のセンスを喚起する商品を好んでいます。ハウス・オヴ・ライザではその時代の前衛性を定義する洋服にフォーカスしています。ショップのコレクションは私自身が集めていた個人的なアーカイヴであり、私のファッションと私自身をインスパイアし驚かせてくれたデザイナー達への情熱が反映されています。コレクションは私が育ち、活気ある経済と反抗的な実験の感覚を持った大変エキサイティングな時代でもあった、80sと90sのものが中心になっています。

―このショップをオープンする前のあなたのバックグラウンドを教えてくれますか?どうしてファッションに興味を持ち、特にどのようにしてデザイナーのヴィンテージ・ピースへの情熱を抱くようになり、このショップをオープンしようと決めたのですか?

故郷のポルトガルでファーニチャー・デザインを学び、コスチューム・デザインもかじりました。80年代、10代のころはポルトとパリに住み、クラブ、ミュージック・シーンに関わるようになり、そこにはもちろんファッションが非常に深く関係していました。私は当時の実験的なことを行う革命的なテイストを発展させたジェネレーションの一部であり、間違いなく自身のパーソナリティーを探し求め定義するための手段としてファッションをしていました。そのような時期から洋服を集め始め、ポルトガルにいくつかのゲリラ・ショップを開くようになりました。その後ロンドンにやって来てロンドン・カレッジ・オヴ・ファッションでファッション・デザインを学んだ後、自分でデザインするよりも他のデザイナーの作品を扱うほうが自分は好きなんだということに気づいて、ヴィンテージの小売に戻ることにしたのです。

―ショップの名前である「ハウス・オヴ・ライザ」とは何を意味しているのでしょうか?どうしてこの名前を選んだのですか?

本当のところ、この名前は偶然やってきたのです。ショップをオープンしようと決めたとき、「ファッション・ハウス」かフランスの伝統的な「メゾン」という考えを言葉遊びしたいと思っていました。それに、ショップの名前には私自身のアートと音楽におけるパーソナルなインスピレーションと好みを反映させたいとも思っていました。私はずっとアンディ・ウォーホルと70年代後半から80年代のニューヨークの音楽に夢中でした。そして、ベストな名前は何だろうと思いながら壁を見つめていたときに、それは起こりました。そのときライザ・ミネリ(Liza Minnelli、アメリカの女優、歌手で、ウォーホルのスタジオによく出入りしていた)のためにアンディ・ウォーホルがデザインしたアルバム・ジャケットを見つめていたことに気がついたのです。私は心を打たれ、Liza Minelliには私のコレクションとショップのロケーションを反映する妖艶な魅力やボヘミアン・デカダンス的な面が要約されていると思いました。

―ショップではJean-Charles de Castelbajac、Jean-Paul Gaultier、Thierry Mugler、Stephen Sprouse、Kansai Ymamotoといった伝説的なデザイナーのレアなピースを非常に多く取り扱っていますね。このようなピースをピックするときに不可欠な要素、またはアイディアなどは何なのでしょうか?

第一の基準は私がまずそのピースに惚れ込んでいるということです。でも私にとって心からあるピースを認めるには、そのピースがユニークであり、ある時代やイノベーション、もしくはデザイナーのキャリアを集約したものを映し出していなければなりません。私のコレクションは非常にニッチなものであると言えるかもしれません。デザイナー達はマテリアルやカット、スタイルという観点でユニークなアプローチをしていて、ヴィンテージとなった今でもカッティング・エッジで実験的です。例えば、今日の多くの人々は川久保玲の脱構築した服やジャン・シャルル・ド・カステルバジャックの溢れんばかりの熱意やポップの美学を未だ理解していません。私のコレクションは80年代と90年代に強く傾倒していて(60年代のピースも所持していますが)、私のテイストと人生を反映しています。アート、音楽、ファッションそしてクラブシーン全体に深く足を踏み入れた時期です。ですので、そのようなデザイナー達と洋服は沢山の幸せと楽しい思い出を蘇らせてくれるのです。

―ハウス・オブ・ライザで扱っているようなデザイナーのヴィンテージと現代のデザイナーの新しいピースとの重要な違いは何だと考えますか?そのようなヴィンテージ・ピースが持ち新しい服にはない決定的な要素は何だと思いますか?

私のコレクションのデザイナー達は皆ファッションの進んでいく道と人々との関わり方を変えたという点において重要な貢献をしています。そこには継続と進化があると私は強く信じています。過去を見ずして今日のファッションを理解することはできません。私のコレクションのデザイナー達の多くは、現代の最もコンセプチュアルなデザイナー達の作品の道しるべとなっています。

―多くの人々が昔のデザイナー達のレアなピースを個人的に所持しているかもしれませんが、実際にそのようなピースを着ている人は決して多くはないと思います。そのようなデザイナー達のレアなピースは実際にストリートで着用されるべきだと思いますか?それとももっとアート・ピースのように扱われるべきだと考えますか?

間違いなく着用されるべきだと思います。私にとって、ストリートのユニークなセンスのスタイルをした人々を見ることに及ぶことは何もありません。ファッションは非常に多くのメッセージを伝えるパワーを有しています。例えばレディ・ガガやマドンナを見てみてください。二人のキャリアは共に刺激的かつ魅力的であるカッティング・エッジなファッションをクレバーに充当することによって成り立っています。私の顧客やショーディッチに住んでいるクリエイティヴな人々の多くは、自信を持って私のコレクションの中でも非常に実験的なピースを購入し着てくれています。しかしそうは言っても、将来の世代が非常に影響力のあるピースに直に触れ、ファッションの進化とクラフトマンシップをよりよく理解できるように、そのようなピースを保存し守っていくこともまた重要であると思います。

―日本には非常に若いレーベルからラグジュリー・ブランドまでを含んだ、巨大なデザイナーズ・ヴィンテージのマーケットがあるのをご存知ですか?非常に多くのブランド古着のショップがあり、またいくつかのインターネット・オークションは古着を売り買いする場としてとてもポピュラーです。そのような状況について、服をリサイクルできるのだから良いことだと言う人もいれば、売り買いのサイクルが早すぎて人々はファッションを楽しむというよりはただショッピングに取り憑かれてしまっていると言う意見もあります。そのような日本の状況とそれに対する意見について、どう思いますか?

日本のマーケットは非常にユニークで特別なものです。確かに日本人は消費主義であるということはある意味正しいとは思いますが、同時に日本の方は本当にファッションに夢中なのだとも思います。日本のファッションはライフスタイルだけでなく、人生における立場を伝えているという点において非常に重要です。ヨーロッパの人々が現在のトレンドや個人的なスタイルを反映してファッションを消費しているのに対し、日本におけるファッション、特にあるいくつかのブランドは、社会における立場やモラル観、あるトライブへの所属といったことが示せるようになっています。世界の他のところでこれが起こらないと言っているのではありませんが、日本ではそれが根付いていると思います。例えば数年前、アントワープ王立芸術学院が発行しメゾン・マルタン・マルジェラがゲスト・エディターを務めたA Magazineには、日本の極度なファッション・ヴィクティムについての内容がありました。そのA Magazineによると、日本の消費者だけがある特定のデザイナーやブランドに完全に取り憑かれ、毎シーズン多くのコレクション・ピースを買うのにほとんどの給料を使ってしまうそうです。雑誌内でフィーチャーされていたある人はマルタン・マルジェラの服に取り憑かれすぎて、不快な匂いを服に付けないように自宅で食事を取るのを止めていました。彼は香水内の化学物質がファブリックや色を変えてしまうという理由でオードトワレも使うのも止めたそうです。彼の行動は本当に極度で、全ての服は折り畳むのではなくハンガーに掛けられ、服が露出して直接日光が当たるのを避けられていました。このような現象は日本に独特のことです。日本のようにあるデザイナーやブランドに取り憑かれ献身的なところはどこにもないです。日本人の特定のブランドへの忠誠心や契約といったものは他のどこの国よりも大きなものです。

HOUSE OF LIZA
199 Kingsland Road, E2 8AN London, UK
Wed-Sat. 12:00-18:00
http://www.houseofliza.co.uk/
http://houseofliza.tumblr.com/
For a private view contact
gv@houseofliza.co.uk

Interview, Text & Translation:Yasuyuki Asano Photo:Wataru Fukaya

Comments are closed.