Interview

runurunu 2/3

文章も絵も動か静かでいったら静になる。結局服だったのは形にしたいと思ったからですね。パターンとかではなくて自分で実際にいじりながら作ることがやりたかったんです

→runurunu 1/3

—ホームレス時代は何をされていたんですか

ウォッチングです。
それに絵を描いたり、小説を書いたりしていました。生活していたのは渋谷周辺で冬から夏にかけて半年くらいです。荷物はスーツケースで引いて、盗まれそうになったことも何度かありました。ホームレスの知り合いは増えましたね。

―どんな文章を書いていたんですか

文章は物語性は嫌いで、散文に近いですね。服も物語性、有機的なものが嫌いなんです。有機的といっても生物的という意味ではなく連続性という意味。連続性が嫌いで切断する、繋がりがないものが面白いと思うから。
でも小説は2年間程書き溜めていた携帯のデータがなくなって書くのをやめました。
毎日絵を描いたり、文章を書いたり、そんな生活。でもそういうのがだんだん嫌になってきたんです。

—その時に持っていた荷物というのはどんなものですか

服と本です。ほとんどの服はホームレスになる時に処分して、風呂は代々木公園で浴びたりしていました。
ホームレス時代に一度万引きで捕まったことがあるのですが「家がないから留置所から出られない」と言われそれはさすがにやばいなと。(留置所の生活は)家はあるし、寝るところはあるし、食べ物は出るので良かったのですが。捕まった後はbodysong.の青木君のところでシャワーを浴びさせてもらったり、寝かさせてもらったりしていました。

―bodysong.の青木さんとはディナーも一緒にやられていますがその頃から仲が良かったんですね

そうですね。青木君は専門学校の先輩なのですが学生の時からずっと一緒だし彼には凄く影響を受けています。正直彼がディナーに誘ってくれなかったら、僕は服を作るきっかけがなかった。それがなかったら今僕は服を作っていないと思う。影響というか感謝しています。分岐点ではいつも世話になっています。

—その頃読んでいた本ってどんなものですか

バロウズやヘンリー•ミラー、それにフランシス•ベーコンのインタビューシリーズにノイズウォー。哲学書は読まないようにしています。読んだら答えをもらえちゃいそうな気がして嫌なんです。

—結果ホームレス時代がどう服作りにいきたんですか

ホームレス以前はがんじがらめにすれば良いと思っていて、悪い意味で言えば自分に凄く執着していたんです。ここが気に入らなかったらどれだけ面倒くさくても直すとか。
そういうのがなくなって今は楽しく作れています。

—それ以前は楽しく作れていなかったんですか

作れていなかったですね。楽しかったけどどこかにやらされているような感じがあった。それをやらないとおかしくなるみたいな感覚で好きなのかどうかもよくわからない感じ。とにかく浄化しないと、みたいな感覚です。

—ホームレスをやめたのは何がきっかけだったんですか

それは服を作りたいと思ったから、絵も描いていたけど結局服だったのは形にしたいと思ったからですね。
文章も絵も動か静かでいったら静になる。編集がきくのが文章だし、物語性みたいなものがどんどん嫌になってきたんです。結局形にしたかったんですよ。触ったりするのがやっぱり好きだから。パターンとかではなくて自分で実際にいじりながら作ることがやりたかったんです。

—今はもう絵は描かないんですか

描かないですね。立体がやっぱり楽しいので。

—runurunuを始めたのはいつですか

それ以前からディナーとして服は作っていましたがブランドとして始めたのは2010AWからだと思います。でもその時は一点ものだけのコレクションでした。

—runurunuというブランド名にはどんな意味があるんですか

runururuって名前に意味はないです。何か楽しそうじゃないですか?ルンルン!みたいな。音的にも特に意味はないんですけど。
でも意味のない音の連続が音になっちゃったみたいなところが自分の作っているものとリンクしている気がします。完全に後付けですけど。でもこの後付けっていうのが自分の中で重要なんです。

—普段服は見たりされるんですか

ほとんどしないですね。僕は服のことに関して何もわからない。勿論ファンみたいな見方はするんですけど裏返してディテール見たり、処理のやり方を見たりとかはしないですね。だからそこら辺も作りながら自分で考えてやっています。服もほとんど買ったりはしません。
店頭で平置きのものを見るよりも歩いている人を見て何か影響を受けることの方が多い。人が着ているコーディネートを見てどこの服かはわからないけどイメージに残ることが良くあるんです。

—影響を受けたデザイナーはいますか

思い浮かぶのはBernhard Willhelmくらいですね。彼の洋服は凄く好きです。
好きなものはどこかに即興制があるもの。今まで影響を受けてきた人は今思えば全部そんな感じの人だと思います。
絵だったらフランシス•ベーコンにもの凄く影響を受けているし、作り方にしても影響を受けている。音楽であればメルツバーグ、文学であればアントナー•アルト。
日本人で言えば大竹伸朗さん、それにPOTTOの山本さんも尊敬しています。

—どういう人がrunurunuの洋服を着るのでしょうか

それはCANDYの人にも聞いたんですけど実際わからないって言われました。

—作る時にどういう人が着るんだろうってことまで想定して作ってはいないですよね

してないですね。そういうことは全然考えてないですね。どれだけ正当化しても表現なんてエゴでしかないんです。
でも着る人のことなんか考えてないとは言うけど最近自分の作ったものを着て欲しいなと思うこともあるんですよね。
ただ、最終的には好きか嫌いなんです。そこで誰に着て欲しいなんて考えても無駄になるというか。

—正直runurunuの服は最終的に服という形に落とし込まれていれば良いのかなみたいな感覚はあります

そうですね。そういう部分はあります。
でも機能性としてちゃんとポケットを付けたりもしています。それに今はTシャツも作りたいと思っています。その操作みたいな部分を逆に今やりたいと思っている。Tシャツはシンプルに着れる、でも粋なものは作りたい。凝縮している感じですね。ぐちゃぐちゃしている複雑な服だけでなくそれをシンプルに見せれたらと思います。

—runurunuは色も印象的ですよね

色はやっぱり家がない頃に見ていたものが影響していますね。ホームレスになる前は色は全然使っていなかったんです。一度ぐらっとなった時は作っているもの自体が小さくなったし凝縮して細かいみたいな服になっていた。

―生地はどこで探されているんですか

生地は日暮里に行って見つかったら「これいいじゃん」って。なんでそれが良いかと言われたらそれはわからないですね。良いと思うからです。

—色で探しているのですか、それとも素材で探しているのですか

色で探している時もあります。そしたらだいたい予想外のところから見つかったりしますね。
素材も凄く重要です。お気に入りの素材は特にないですがニットは加工しやすいのでよく使っています。でも今は麻を使ってみたいと思っています。レザーには興味はないですね。動物が可哀想なので。わざわざレザーを使う必要はないのかなって。

—色に関して言うとオレンジが多い印象がありますね

東京はグレーじゃないですか。だから太陽に対する憧れがあるんだと思います。
それに民族が凄く好きだけど想像上の民族でしかない。だからイメージとしてオレンジを使っているんです。今はレオ•ズルエタのタトゥーが凄く気になっています。

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