Interview

Jenny Fax “The Last Show” 1/2


台湾出身のシュエ・ジェンファン氏によるブランドJenny Fax。昨シーズン六本木TSUTAYAで行われたMIKIO SAKABE×最前ゼロゼロのイベントで本格的にデビューしたブランドは今シーズンbellesalle SHIBUYAを会場に初の単独ショーを行った。
デザイナーのジェンファン氏の学生時代、学校やクラスメイト、テレビで見たアメリカのホームドラマなど日常の記憶や経験を、女子の目線でデザインに落とし込んだコレクションは大きな話題を呼んだ。

―まず今回のテーマに関して教えてもらってもいいですか

私自身の学生時代、学校やクラスメイト、テレビで見たアメリカのホームドラマなど日常の記憶や経験を、女子の目線でデザインに落とし込んでいます。妹が「ファッションショーをやりたい」と言っていたので彼女の為のショーでもあります。
(モデルとして出た)私の妹は双子(二女、三女)だから最初はいつも一緒だった。着ている服も一緒だった。でも13、14歳くらいからだんだん太ってしまい、最後はおしゃれすることも諦めてしまった。スカートも履かなくなったし女性らしい服も着なくなってしまった。私の服はそういう普通な人、でもどこかコンプレックスを抱えている人の為の服でもあるんです。

―アメリカのどんなホームドラマを見ていたんですか

Twin PeaksやMy 2 dads それに古いほうのビバリーヒルズ高校白書が好きで小学生の頃に見ていました。My2 dadsは突然2人のお父さんが見つかり3人で一緒に住むことになる。主人公は12才なのですが私もそれを見ていたのが同じ年代でした。ドラマの中の彼女は凄くお洒落で影響を受けました。

―妹さんのメイクも印象的でした

イメージとしてはKISS(ヘビーメタルのバンド)です。アメリカのソープオペラ(昼ドラ)ってクラスの中に必ず一人は変な服を着ている子がいるんです。その子は主役じゃないんだけど脇役の子で少しオタクみたいな。そういう子は大体ヘビーメタルを着ている。
メイクは力強いイメージ、でも心は弱い。そのギャップを表現しています。

―アニメのようなイラストはどういうイメージだったのですか

彼女の絵に昭和の漫画っぽさを感じたんです。でも目だけは凄く今っぽい。この子が描いている絵が凄く好きだったんです。だから「一緒にやりたい」って私から声をかけました。
彼女の絵を見て「秋葉原っぽい」と言う人も多かったのですが、自分は秋葉原についてあまりよく知りませんし、秋葉原のイメージはありません。それよりは「キャンディキャンディ」や「DADDY LONG LEGS」、「レディジョージィ」などの私が好きだった古い少女漫画がイメージです。でもそれをそのままプリントにしたら新しくない。クラスの中で人気ある凄く綺麗な子。でもちょっと鼻はつぶれている。裏でちょっと悪いことしてそうな女の子。目の今っぽさが重要だったんです。

―今回はMIKIO SAKABEとの合同ではなくJenny Fax単独でのショーにもかかわらずたくさんの人が入りました

みんな優しいと思います。たくさんの人が手伝ってくれて私の為にお客さんを呼んでくれた。少し大きい会場なので、「人が来なかったらどうしよう」って凄く不安でした。来てくれた方、手伝ってくれた方、みなさんに感謝しています。

―ショーのインビテーションには’The Last Show’と書かれていましたがあの言葉にはどんなメッセージが込められていたのでしょうか

勿論今回が最初で最後のショーと言うことではありません。私は坂部とは違い自分自身のやること、創るものに自信がありません。心の中で思っていることと逆のことを言うことにより私自身のモチベーションに繋がるのです。またそれが私にとってのおまじないのようなものでもあるのです。

―妹さんのショー後の感想を教えてください

ファッションショーに出るのは凄く好きで楽しかった。でもデートのやつはあまり好きじゃない。そう言っていました。ファッションショーに来ている人はファッションショーを見る為に来た人。でもMIDTOWNでやったインスタレーションはインビテーションがなくても誰でも見れるもの。ファッションがわからない人も来ていたので少し恥ずかしかったそうです。

―MIDTOWNでやったインスレーションでは理想のデートと共にいじめの映像も流されていました。あのいじめは必要だったんでしょうか。それとも現実にあったことを表現したのでしょうか

そうではありません。私は妹のことは大好きです。でもLove(好き)とHate(嫌い)って表裏一体って言いますよね?彼女のことを好きすぎて悪いことをやりたくなってしまったんです。だからいじめ自体にそれ程意味はありません。
もう一つの理由としてはショーの華やかなイメージとその裏ではというギャップを作りたかった。クラスの中には綺麗な人やリーダーみたいな人が必ずいるけど、そういう人も裏でなにかやっている。あのいじめは表と裏を表現しているのです。
私は心が痛むことが好きなんです。だからバックステージでビデオを撮っていた時も正直心が痛かった。
元々のアイデアとしてはファッションショーでドッジボールをやろうと思っていたんです。特に理由はなく、ただそれが面白いと思った。でもその案は却下されましたけど。

―ジェンファンさん自身の過去の投影ということでもないのでしょうか

そうではありません。私がもしこのショーの中に入っているのであればアウトサイダーよりのキャスティングになるでしょうね。

-音楽も特徴的でしたが自分で選んだのですか。どんなイメージがあったのですか

私のブランドは自分の記憶や感情から成り立っています。それが唯一のコンセプトでもあります。私はトレンドなどにも疎い、だからショーの音楽でも私の感情を表現したものにしたかったので自分が好きだったバラードが多く使われています。

一番最初は”I need to be in Love” (青春の輝き/ Carpenters)です。今回のデザインを考えている時にずっとこの曲をYoutubeで見ていたんです。
2番目の曲はBen (Jackson 5)です。この部分は少しブラックジョークです。マイケルジャクソンは偉大な人物ですが彼自身は少し変な部分もある。Benを歌っていた時のマイケルジャクソンはそのままの姿(整形前)でしたがその後の彼の姿はみんなも知ってる通りどんどん変化していきましたよね?だからこの曲と同時に私の妹が登場し、そこからレッドシルエットになっていった。このレッドシルエットはアメリカのドラマ”Twin Peaks”からきています。私はホラーやB級映画が好きなんです。今回のコレクションを作っている時に急に「Twin Peaksが見たい」となり、坂部にDVDを買ってきてもらいました。「赤」という色はそのドラマの中で凄く大事な意味を持つ色なのです。それを見てからなぜか赤を入れたくなりそれ以降に作ったものは赤だらけになってしまたんです。
その他にTwin Peaksの曲も「Just You and I」も使用しています。

―Jenny Faxを始めた時は自分の着たい服を作ると言っていたと思いますが、“本人が着たい服”という点では少し違うのかなという印象を受けました

今の私にとっては着れない服かもしれませんが、その当時、その時で私が着たかったものを作品にしています。
例えば自分が一番着たいのはファーストルックのドレスです。凄く覚えているのは幼稚園のプロムパーティでのこと。みんな白いワンピースを着なければいけないのですが私の家族は子供が多いからあまり新しい服を買ってもらえなかった。でもその時は親が白いワンピースを買ってきてくれると言ってくれたので凄く嬉しかったのを覚えています。しかしその時お母さんが買ってきてくれた服はナイトマーケットで買った安物の服で自分のイメージしているものとは違った。だからその時自分が着たかった服をファーストルックで表現したんです。

―制服は日本の制服をイメージしたのでしょうか

制服は台湾で買ってきたモノです。制服を使ったのは学校のイメージを作りたかったからです。台湾の制服と日本の制服は凄く似ていて白いシャツにプリーツスカート。だからあれは日本の制服から着想を得たと思う方も多いと思うのですが実際は台湾の制服スタイルなんです。
猫のTシャツも台湾で買ったものです。それにタグを付け刺繍をし、ネックも少しだけ変えています。

―ジェンファンさん自身の妹がブランドのミューズとのことですが、妹さんにとっての理想の服も製作しているんですか

彼女にとっての理想は反映されていません。
私にとってミューズというのは“イメージ”、そして”フィーリング”です。それが彼女の為の洋服ということではありません。私は彼女からたくさんの刺激を受け、それがイメージとなり、形になっていくのです。

―今回はモデルの数が凄く多かったですね

半分以上はモデルではありません。ひな壇のように並べたのはフィナーレで卒業式の記念写真を撮りたかったので数が必要だったんです。その為に武蔵美等にアシスタントとスカウトに行きました。ショー自体はプロムパーティをイメージしています。花のゲートの前で男女が写真を撮る。アメリカのホームドラマにはそういうシーンが良く出てくるんです。
モデルの数は歩いていない人をいれると25人くらい。歩いた人は10人くらいです。
ファーストルックに歩いてくれたモデルさんは凄く綺麗なんだけどどこか悲しい感じの表情をしている。だから彼女を一番最初のモデルにしました。

―ウォーキングをしたのはモデルではなく女優志望の女の子が中心だったそうですがモデル選びに関しても教えてください

あまりファッションショーっぽくしたくなかった。女優であればウォーキングの経験が少ない。その方がモデルより自然に歩けるし、女の子っぽい雰囲気が出るのかなと思ったのです。でもあまりにもプロじゃないモデルばかりを並べるとショー自体がファッションではなくなってしまうと思い数人だけ本当のモデルも使っています。

―モデルの選び方はMIKIO SAKABEと少し似ているかもしれませんね

それは少しあるかもしれません。MIKIO SAKABEもあまりプロのモデルを使いません。
前回のMIKIO SAKABEのショーは20代の子が多かったのですが、今回のJenny Faxに出てくれたモデルの子は10代前半の子が多かったです。

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