Interview

SADAK / Sasa Kovacevic

ベルリンのKunsthochschule Weissensee Berlin ファッションデザイン科を卒業し、ベルグレードの Academy of Art で舞台美術と衣装デザインを学んだセルビア出身のデザイナーSasa Kovacevic氏。

卒業後にベルリンを拠点にして立ち上げたSADAKは、故郷であるセルビアの伝統衣装との強いつながりを維持しているデザインが特徴。そんなSADAKのブランドアイデンティティは現代ファッションや現代芸術との肉体や精神への相互影響を重要視した『個性の尊重 』。斬新かつ独創的でありながらも、さまざまな過去の歴史や民族文化がもたらす特徴的要素も取り入れ、個性や自主性に対する姿勢、傾向、意見を表現したデザインとなっている。また自作ファッションブランド SADAK のほか、TeZukA(振付: Sidi Larbi Cherkaoui)などのダンスプロジェクトで衣装と舞台美術を担当している。

今回は4月1日に行われた、表参道wut berlinでのAW 2012/2013 exhibitionの開催と共に来日したデザイナーSasa Kovacevic氏にクリエイションや出身国であるセルビアについて話を伺った。

―最も影響を受けたカルチャーは何ですか?

私はセルビア出身です。当然の事ながら、セルビアに根づくセルビアの伝統文化に一番を影響を受けています。
セルビアの民族衣装は黒や赤の色使い等が印象的です。そういった色使いも自身のデザインに反映されています。

―セルビアは歴史的に見て、紛争や戦争などがとても多い地域ですが、ご自身は体験されたのですか?

はい。子供の時から25歳までセルビアにいました。その後ベルリンに移ったのですが、それまでの間に3度の紛争を体験しました。

―そういった紛争などは非常に強く記憶の中に残ると思いますが、それらもデザインに反映されているのですか?

とても強く反映されています。例えば今季のプリントでしたら、感情的な部分を強く表現しています。感情は発散することは簡単にできますが、それをちゃんととらえることが難しい。そこでチェーンのプリントを使い、感情に見立てた蝶を捕まえるといったテキスタイルをデザインしました。

―コンテンポラリーダンスなどの舞台のプロジェクトに携わっていますが、それらの衣装はどういうアプローチでデザインを行っていますか?

一番最近の舞台は手塚治をイメージしたものでした。それを例にとると、まず手塚治のキャラクターを見ます。アトムなら体は機械、心は人間ですよね。そのままそのキャラクターを落とし込むのでは無く、その「体は機械、心は人間」というイメージから、新しくキャラクターをつくりだします。そして、そこに元のキャラクターを組み合わせることで、さらにイメージを膨らましデザインを作りました。

―舞台などのプロジェクト衣装と服のデザインの違いは何ですか?

プロジェクトは依頼されるものなので、何を求められているかを明確に意識します。コレクションは自身のイマジネーションをそのまま使いますね。自由にやれるのでとても楽しいです。

―ブランドのコンセプトに【個性の尊重】とありますが、現代のファストファッションについて何か思う事はありますか?

マスプロダクトには良い面と悪い面があります。良い面は、大量生産をすることが出来ることです。また回転も早いので、新しい物がどんどん作れます。
悪い面は、みんなが同じものを着る事により個性が薄くなります。その結果、個人が均一化してしまい、どんどん同じ人が増えてしまうところです。

―では、個性を出すという一つのアプローチでオリジナルプリントを使用しているのですか?

そうですね。オリジナルプリントはそれ自体で他とは違います。そして、その時点で他の人と違いますからね。

―常にテキスタイルの研究をなさっているようですが、いま気になっている素材はありますか?

基本的にはシルクが好きです。色もカラフルであったりモノトーンであったりしますし、 気になるものは常に変化しています。

―SADAKの服はどのような人に着て欲しいですか?

若い世代ですね。仕事をしっかりとしているけど、個人がちゃんと確立した人物をイメージしているのでそういう人に着て欲しい。もちろん年上で最新のものを着たい人にも着てほしいです。

―日本から影響を受けたものはありますか?

とても多くの影響を受けています。昔アジアの歴史を勉強していたので、宮本武蔵をイメージしたテキスタイルもあるほどです。

―好きな日本人アーティストはいますか?

草間彌生です。インタビューもたくさん読んで勉強しました。とても素晴らしい方だと思います。

―今後の展開を教えてください。

始めたばかりなので、まずは続ける事を一番に考えたいです。

Interview & Text:Yoshiaki Miyahara, Tomoka Shimogata

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