Interview

DAMIR DOMA 2/2

ブランドを始めた当初から明確に強いブランドにする、強い基盤を作るという目標を持っていました。そのようなビジョンがなければリスクをとって仕事をすることも出来ませんし、ブランドとしての成長はあり得なかったと思います

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―インスピレーションの話とも繋がるかと思いますが常に目を向けている、興味を持っているものはどんなことですか?

重要なことは何に対しても常にオープンマインドであるということです。「こんなのは無知だ」とか、「こんなのは絶対だめ」とか、「馬鹿だ」とか思わないことです。「あれは興味深かったな」とか「こういう状況だからこうなんだ」とか、「時代がこうだからこうなんだ」とかいったん引いて後で振り返り良く考えることが重要です。目に入ってくるもの全てを吸収しそこからインスピレーションを得ています。

―クリエイションの中心になっているインスピレーション源はなんでしょうか?

私は色々なところからインスピレーションを受けるのですが文化、それから芸術をリサーチしたり、その背景を重要視しています。
例えば今季のレディースコレクションはドイツの写真家Erwin Blumenfeldの1943年のVOGUEに掲載された『The CROSS』という写真から着想を得ています。この写真はその当時凄くアヴァンギャルドな作品とみなされましたがその斬新さは今見ても変わりませんその写真では女性が帽子を被り、背景がぼやけていて、オレンジ色の十字架を付けている。アートからは簡単にインスピレーションをもらえます。

―建築をインスピレーションに挙げるデザイナーも多いですがDAMIRさん自身建築にも造詣が深いのでしょうか?

昨年の5月から初の旗艦店を建築中ですのでやはり建築にも多大な興味を示し、学びました。こういうようなプロジェクトに取り組むと建築にも突っ込んだ知識が必要だなと感じます。特に昨年からは建築からもインスピレーションを得るようになりました。
建築とファッションというのは仕事上も類似性があると感じています。
ジャケットの素材への拘りというのとおなじようにお店で使う建築素材によっても雰囲気も違いますし、アプローチも違いますよね。ファッション、アート、そして建築もインスピレーションという点で共通点があると思いますが、技術的なアプローチという点でも共通しているかと思います。どちらもインスピレーションを必要としますが長さがどれくらい必要だとか、重さはどのくらいだとか技術面も必要です。そういう意味で類似点があると思います。

―ショップの話が出ましたが今年の6月 にDAMIR DOMA初となる旗艦店がパリにオープンします。そのショップに関して拘った部分を教えてください。

私の服に出来るだけあうような空間をクリエイトするということを一番に考えています。多くの店舗はお客様のことを考えた空間になっていないと思います。旗艦店ではインフォーマルな空間を作ることにより、来客されるお客様にあたたかさだったり、居心地の良い空間、そしてお気に入りの空間になって欲しいと思っています。
店舗設計はイタリア人のCarlo Scarpaという建築家にお願いしています。高度な素材を使いながらも野蛮さがあり、なおかつエレガンスさを兼ね備えている。それによりインフォーマルな空間を作りあげています。
それから洋服のプレゼンの仕方も流れるようになっており服が実際に融合するような印象を受けます。様々な文化やインスピレーションが最終的に融合し、新しいものを作るというような雰囲気を醸し出しています。

―文化のインスピレーションというのはクロアチア人であるご自身がドイツで育ち、ミュンヘン、ベルリン、アントワープ、パリと移動を繰り返したことにも起因しているのですか?

そうですね。そういう風に生活してきたことも勿論影響しています。色んな国を渡り歩いたことで一国だけに愛国心を持っているわけではありません。こういうような背景があるために色んな国の文化がミックスされ、アウトプットしては国の境界線がぼやけ、新しくモダンな、今までになかったようなアイデアがクリエイトされていきます。例えばドイツにだけいたら非常に明確にドイツ的なモノになってしまっただろうし、クロアチアだけにいたらクロアチア的なアプローチになってしまっていたでしょう。
それぞれの国の国民性からも影響はあるとは思いますが、例えばここの部分がクロアチア的だとか、ここの強さの部分がドイツ的で、エレガンスの部分がフランスということではありません。哲学的に私はどこの国にも帰属しません。私の場合は両親がクロアチア人で、元々は共産圏だったのです。ですが私は純粋にヨーロッパ人だと考えていますし背景もそうだと考えています。これは私だけでなくヨーロッパの人で各国を移動していると普通のことなんです。色んな国を巡ることにより、よりグローバルな視野を持ち、本当のコスモポリタンな人間になりそれが私自身のフィロソフィへと繋がるのです。一カ国だけでなく色んな国を渡り合ったのでファッションにおいても非常に自由な発想が出来るのです。

―DAMIRさんの母親はデザイナーであるというのを何かのインタビューで読んだことがあります。デザイナーとしてのルーツは母親の影響が大きいのでしょうか?

仰るとおりです。母親はサンプリングや製造の会社を運営し今も私のコレクションに深く携わっています。親が医者であれば自然と医者という職業が身近であるように私にとっても母親がそういう職業でしたの自然と小さい頃から洋服に接してきました。彼女の影響はとても大きいと思います。

―2006年にブランドを設立後、僅か6年で世界でも最も注目を集めるブランドの一つとなり、非常に順調に成長しているようにも見えます。ブランド設立当初からこのようなヴィジョンを思い描いていたのでしょうか?

私自身の中ではまだまだ順調に成長しているという段階には至っていません。ですがブランドを始めた当初から明確に強いブランドにする、強い基盤を作るという目標を持っていました。そのようなビジョンがなければリスクをとって仕事をすることも出来ませんし、ブランドとしての成長はあり得なかったと思います。ですからただ偶然に成功したというわけではありません。

―ブランド設立当初とビジネスの規模は勿論変わったと思いますが、デザインに対するアプローチの仕方や考え方等何か変わった部分はありますか?

デザインも勿論進化しています。ブランド設立当初は若くてストリートデザイン的なものだったのが今では高度な技術を用い、よりエレガントなブランドに成長しました。それから私自身も個人的に人間としてもとても成長しましたし、微妙なデザインも出来るようになりました。これは毎日仕事をしていれば培われることだと思いますが。
メンズとウイメンズ、サイレントと3つのブランドが出来ましたので意図的にブランドのポジショニングは変えています。サイレントコレクションを作ることにより元々あったDAMIR DOMAブランドがより高度なものとなっています。
そしてやはり各コレクションの関連性も重要ですからただ一つのコレクションだけとかブランドだけに盲目的にやるのではなくグローバルなヴィジョンを持つことが必要だと思います。

―メンズ、ウイメンズは互いに関係性の強いコレクションだと思いますがサイレントに関してもDAMIR DOMAのシグネチャーコレクションと互いに強く影響を受けあっているものなのでしょうか?

私は一人の人間で三つの人格を持っているわけではありませんので三つのコレクションはそれぞれ関連性があります。まずデザインリサーチをする時には三つのコレクションを一つのインスピレーションとしてムードボードを創り上げて行きます。それから各コレクション毎にどの部分を強調したいのかを分けて行きます。サイレントの場合にはカジュアルとスポーティ、メンズとウイメンズに関してはエレガント、ただ三つとも非常に関連性は強いです。

―近年ラグジュアリーブランドにとって環境に配慮したコレクションというのはとても重要になってきていると感じます。DAMIR DOMAにとってそういうものは重要だと感じますか?

2,3年前は環境に配慮したもの、環境に良いと言われるものが市場ではトレンドとなっていました。DAMIR DOMAのコレクションはブランド設立当初から、環境に優しいものを考え作られており、サイレントも同様です。実際ファブリックはイタリアのものを使用し、ドレスは日本で生産され、縫製はイタリアでされている。コレクションは高品質を追求していますし、委託する企業も一流の企業を使用しており、トルコやインド、中国などでは生産していません。環境に優しいということを強く打ち出しているわけではありませんがそういったものに必然と配慮されたコレクションとなっています。
例えばNYの大手のブランドでも中国製で品質についてはあまり気にかけないというブランドもあると思いますが我々は高品質なものを追求し、より良い製品をお客さんに提供することを心がけています。

―最後に今後の展望について教えてください。

毎シーズンのファッションショーもありますが、まずは6月に旗艦店がオープンするので是非皆さんに訪問していただけたらと思います。それをきっかけにこれまで以上にブランドを発展させ、DAMIR DOMAの世界をより構築していきたいと思っています。ですのでオープンがが待ち遠しくてしょうがありません。皆さんの反応も聞きたいですし、そのお店が成功になればと思っています。

Interview & Text:Masaki Takida, Tomoka Shimogata

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