Interview

フラワーアートユニット plantica “plantica/nomadic” 1/3

昨年12月、フラワーアートユニット”plantica”が初の大型個展「plantica/nomadic」を開催した。植物をテーマに何に規制されることなく、自由な手法で表現を繰り広げる。 「伝統的な華道の流れに新たなレイヤーを重ねたい」という思いのもと新たな華道の形を次々と生み出していく。今回は彼らの活動内容に触れると共に、華道、そしてフラワーアートによる幅広い可能性について伺った。

→フラワーアートユニット”plantica”の初の大型個展「plantica/nomadic」

-plantica の活動の経緯を教えてください。

自分1人で華道家として単独で活動していた時期もありました。しかし、華道だけにとらわれず、植物を使った表現はまだまだ多様で可能性があるはず、と思い、実験的な表現の場として plantica という新たなプロジェクトを立てました。最初は気心知れる幼なじみの大栗と2人で始めました。今では5名で様々な表現活動しています。

-華道家とフラワーアーティストの2つの名称を肩書きにされていますが、どういう意味合いがあるのでしょうか?

 華道とフラワーアート、言い変えれば植物で表現する際の東洋的な手法と西洋的な手法で区分けされていますが、planticaではその両方を組み合わせて新しい花の表現のスタンダードを創りたい、と考えて両方の名称を使っています。今はまだそれらの融合を実験して活動している途中なので並べて表記しています。
 華道というと作品の中で花を美しく見せるために、間や余白を作る引き算のアプローチがあります。また、左右を不均等に構成することで緊張感と迫力を持たせる方法もあります。一方、西洋でいうフラワーアートは、シンメトリーの構成や色の組み合わせで魅せるアプローチがあります。
 それらを自由に組み合わせて表現をしていく活動をしています。

―では、そもそも最初に華道を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけは普通で、母親が生け花を習っていました。大学生の頃に母親と同じ趣味があっても良いかなと、ふとそういうことを考えて、始めたのがきっかけです。
植物や花って、街中に花屋があったり、またお祝いに花を贈る人がいたり、日常的に接することができるアイテムです。それを使ってアートをする、それを使って造形をしていく、というアプローチにすごく新鮮さを感じました。身近なもので、これだけ表現できちゃうんだ、という衝撃があった。また同時に、もともとデザインやアートに憧れもあった。しかし、写真や映像を始めるにも高価な機材や照明機器が必要な気がして、華道は花瓶とはさみがあれば直ぐに始められそう、と感じたのもあって、気軽にスタートできたんだと思います。

―大学生の時から華道家を目指していたのですか?

今は超有名なフラワーアーティストの東信さんのお店でアルバイトをさせていただき、花を使った商業ディスプレイや表現を学ばせてもらいました。様々な現場を経験する中で、花を使ってこんなにも多様な表現ができ、また花を使った仕事はこんなにもお客さまに喜んでもらえるビジネス、なんだと感心したのと同時に、とても魅力的な職業だと感じました。

ですが、大学を卒業してからは、他の業界も社会経験をしてみたいと思い、3年間くらい普通にサラリーマンしたりもしていました。その後にplanticaを始めて、現在は5年目になります。

―花や植物でアートすることと、商業ディスプレイをつくる、というのは別物になるのでしょうか?

鑑賞する側からすれば一緒に見えるかもしれませんが、創る側としては全く違う考え方でアプローチしています。例えば、エルメスの店鋪でディスプレイを作るのであれば、ブランドのオレンジというキー・カラーを使い、エルメスの空間とイメージにあわせて花のディスプレイをデザインしていく。一方、アートは広く社会に対して自分の気づきやメッセージを発信することです。デザインはクライアントの為にやるもので、アートは自分のメッセージや社会に対する自分なりの未来像を提案することだと思っています。

―作品に使われる材料はどうしているのでしょうか?

自分たちで山に入り採ってくることもありますし、海岸で流木を拾ってくることもあります。また、華道の流派に対してそれぞれ専門の材料屋があります。そこには街の花屋で売っていない珍しい花材も売っています。
普通ではあまり見たことのないような海外の植物も、日本の花市場や流通業者を通すと意外と手に入りやすいんです。たとえば、希少植物を入手する時には、世界で一番植物の種類が豊富だと言われている中国の雲南省からも仕入れたり、また上質なモス(苔)をアイスランドから仕入れたり。日本からだとそのように世界の植物にもアクセスしやすいです。

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