Interview

Jenny Fax 2014 S/S Collection “綺麗な山 綺麗な水” 2/2

ダサい頃の自分を今回は全部見せたかったんです。自分はファッションをしていたと思っていたのに全くの勘違いだった。でもそういうのを全部見せたかった

→Jenny Fax 2014 S/S Collection “綺麗な山 綺麗な水” 1/2

―コレクションをやっていくうちに周りからのJenny Faxというブランドのイメージが出来上がっていった。それに対して自らコレクションを寄せていった部分がこれまではあったということですね。女の子らしくてかわいいコレクションを作らないと、と。

そうですね。そういう部分は少なからずありました。だからカンボジアの旅行から帰ってきて今回のコレクションは自分らしいものにしようと思いました。
今回のコレクションを終えて三樹郎さんにも言われました。今までのショーはジェンファンらしいけどカワイイの部分しか見せてない。今回は全部ジェンファンのコレクションだったって。

―それは具体的にどういう意味ですか。

これまでのファッションショーはアメリカのドラマとかツインピークスとかから着想を受けて、古いけどどこかお洒落なイメージがあった。小学生の頃の記憶からだけど私自身は元々凄くダサい人間です。パリに留学するまではファッションのことなんて何も知らなかったしほとんどブランドも何も知らなかった。これまではそれを隠していたではないけど、例えばパンクにしてもロンドンが発祥というのを知らなかった。パンクを始めたのは(香港の歌手)フェイ・ウォンだと思っていたんです。私にとってフェイ・ウォンはファッションの先生でした。彼女は香港の人だからイギリスの影響を受けていたけど私はそれを知らなかった。香港発がオリジナルだと思っていたんです。でも実はオリジナルパンクではなくイギリスから輸入されて香港ナイズされたパンク。香港ロンドンパンクをいいなって思っていたんです。だから私が台湾にいた頃のファッションのインフォメーションは全部ストレートじゃないんです。香港の映画とか音楽とか凄く好きで全部憧れの香港の女優やシンガーからからきていたものです。パンクと言ってもヴィヴィアンウエストウッドすら知らなかった。ダイレクトじゃなくて経由していた、でもそれさえも知らなかったんです。
そういうダサい頃の自分を今回は全部見せたかったんです。自分はファッションをしていたと思っていたのに全くの勘違いだった。でもそういうのを全部見せたかった。だからアジアのテイストをいれたかったんです。ダサい自分を全部出してアジアっぽいテイストのコレクションにしたかった。

これまでのコレクションに日本っぽさがあるといわれればそれは勿論長く住んでいるので根底にはあると思います。でも今回のコレクションに関して言えば日本という部分は意識しないで作ったコレクションです。
香港はイギリスの影響は受けていますが少しずつずれている。ロンドンはほんとにパンク精神。香港はかっこつけてるパンク。女の子は髪の毛短いし、洋服の色も黒。今回バックスタイルは全部長くなっていますが香港の女優の服ってなぜかバックスタイルが長いんです。

―今回のコレクションはダサいものを意識して作ったということですか?

ダサいというよりは可愛いということを意識していないコレクションです。


イラスト左:チェン・シュウフェン / 右:せきやゆりえ

―今回のイラストは台湾人のアーティストの作品だそうですね。

昔台湾で凄く流行ったイラストレーターにコンタクトを取り作品を使わせてもらいました。陳淑芬(チェン・シュウフェン)という方で台湾では凄く有名なアーティストでゲームのイラストとかを描いたりしています。その他にもイラストレーターのせきやゆりえさんと私の妹が描いたイラストをコレクションに使用しています。

今回はショー終了後に台湾のブロガーが私のコレクションについて書いてある記事を見ました。そこには別にコレクションがいいとかではなくて台湾の要素が入っていて凄くわかるって書いてありました。それは凄く嬉しかったです。で台湾は神様を信じている国で自分の家にも神様の彫刻がある。その要素も今回のコレクションに入れています。

―どろが自分を意識したメイクだったというのは嘘だったといっていましたが結局どろのメイクははなんだったんですか?

カンボジアに行ったとき凄く暑かった。みんな顔が汚かった。だから顔を汚したんです。ショー後のインタビューではカンボジアの話説明するの面倒くさかったので。
ショーの最後の4人の女の子はTシャツとパンツで同じスタイルで登場しています。家の目の前に公園がありました。私は学校終わったらその格好(Tシャツとパンツ)で外に遊びに行っていた。あの4人はダサかった頃の私自身を投影していました。あの4人はいつもショーに出てくれる友達のモデルです。何かいたずらをしたいからあの4人だけは凄くチープな服にしました。特に意味はありません。


イラスト:季姈 (デザイナージェンファン氏の妹)

―コレクションをリピートした意味は何だったのでしょうか?

ショーをやる時には毎回使いたい音楽があって絶対使いたいなという音楽を最初に決めます。今回に関していえばHappy Togetherです。ゲイを描いたウォンカーワいの映画Happy Together(邦題:ブエノスアイレス 1997年)が凄く好きで今回のショーに使ったのはそれのテーマソングです。凄く好きでショーの前に絶対使いたいとずっと聞いていました。一番最初にあの音楽を決めました。でもHappy Togetherの音楽はショーに使うには凄く短い。どうやったらそれを長く使えるかずっと考えていました。結局音楽を長く使うにはショーを2回やるしかないとなったんです。だからショーをリピートした理由はただHappy Togetherの音楽を2回使いたかっただけで特に意味はありません。

―前回のコレクションに比べて今回は凄くボリュームが多かったです。

今回コレクションをたくさんつくったのには理由があります。前回は伊勢丹の催事の準備で自分自身いっぱいいっぱいになっていました。それが理由で海外のバイヤーに説教されたりもしました。コレクションが少なすぎてコマーシャル出来ないと。だから今回はリベンジの気持ちもあってたくさん見せたかったんです。だから今回は凄く頑張りました。

―今後Jenny Faxはどう変わっていくのでしょうか?今回同様自身のルーツに寄り添ったコレクションとなっていくのでしょうか?

それはまだわかりません。
でも自分自身今凄く嫌な予感があります。私はもしかしたら終わりなのかもしれません。自分の終わりは自分でわかると思うんです。コレクションをやっていくことで自分に才能がないというのは自分で気づくことが出来ます。今自分にその才能がないのかはわかりませんが最近凄く自分のブランドが終わる気がしています。

―それはどういう意味なのでしょうか?Jenny Faxをやりたくなくなるということでしょうか?それとも人気がなくなってブランドをやめなければいけない時が来るということなのでしょうか?

それはわかりません。癌のようなものでしょうか。今はそれが何かわかりませんが自分の中では嫌な予感があります。ブランドが売れるとか売れないとかはわかりません。でも嫌な予感があります。ブランドをやること自体が嫌になっちゃう可能性もあるし、才能ないことに気づいてやめてしまう可能性もあるかもしれません。

―終わる可能性はあるんですか?

それはまだわからないけど嫌な予感がある。だから自分でも怖いです。

Interview & Text:Masaki Takida

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