Fashion Show

Roberto Cavalli

ピーター・デュンダスがロベルト・カヴァリで初めて手掛けるプレフォール・コレクションは、雰囲気的、そして美学的にも1960年代後半から70年代前半にかけてのボヘミアンらしい自由な空気に満ちている。
「自分の友人が着ていたらいいな、と思えるワードローブを作りたいと考えました。ロックスターのオーラ、ボヘミアン、神聖なデカダンスといったカヴァリの気風に富んだものをね」とピーター・デュンダスは語っている。
当時のロックンロールを象徴するパワフルで官能的なミューズたちと、その意味を読み解くイコノグラフィーが新しいロベルト・カヴァリ コレクションのインスピレーションを形成している。今回のコレクションは力強く、美しく、エレガントでありながら突拍子もない、常に自由奔放な女性の典型的なワードローブを起点に、21世紀における解放的な装いを追求している。
 
今回のコレクションは、日中と夜の装いがミックスされている。ビーズをあしらったドレスにはスニーカーを、貴重なファーにはデニムを合わせ、気ままでグラマラスな魅力を表現している。繊細なシフォンのドレスには、ロベルト・カヴァリの重要なモチーフであるアニマルプリントと花柄をミックスした。テーマは“サーカス カヴァリ”で、色や柄がメリーゴーランドのようにめまぐるしく移り変わる。プリントはその世界観を最も自由に表現しており、ジプシーフラワーや星、打ち上げられた色とりどりの花火を描いたものがさまざまなアイテムに使われているほか、ワイドなシルエットのリラックスしたイブニングウェアとしてのパジャマには、ビンテージ物のサーカスのシーンが描かれたカラフルなシルクプリントとレオパード柄でコントラストを表現している。怪しく気だるげなラグジュアリーを感じさせるデザイン。
 
シルエットは全体的に長くすっきりとしており、ボディを細長く見せる。イブニングドレスは細身のストレートなシルエットで、裾が床まで届いている。パンツはなめらかに揺れるフレアスタイル。カヴァリが描く女性像は、カヴァリを着こなす男性のワードローブを自由に借りることで、お互いのスタイルの密接なつながりを表現している。ブランドのトレードマークであるダメージ加工されたデニムはローライズで、腰回りはゆったりしている。くすんだピンクのジャカード織や、金色の模様を散りばめた細いピンストライプの生地を使ったパンツスーツを着て、おてんばな印象を与えることも。でもその着こなしは、ビーズをあしらったイブニングドレスと同じように気軽でエレガント。
 
ハイブリッドなウェアは、シンプルなものと高度に手の込んだものを組み合わせている。前合わせと裏地にコヨーテのファーをあしらった騎兵隊風のユサールジャケットには質素なウールのパンツを合わせ、コットンのデニムには貴重なビーズの刺繍を施した。カヴァリの並外れた技が光るレザーウェアでは、ヘビ革、カーフ、ファーを組み合せたパッチワークのジャケットやコートを提案している。
カラーパレットは明るさと暗さ、カラフルな彩りと抑制された色合わせのコントラストが効いている。真っ黒なミッドナイトブラックにはアメジストやビンテージ感漂うグリーン、淡いムーンストーンブルー、そしてパラジウムやアンティーク調のゴールドを合わせている。そして目のくらむようないくつもの装飾が、メリーゴーランドの色のきらめきを再現している。今回のコレクションはワードローブ全体を通じて現代的な雰囲気を取り入れつつも過去を振り返るもので、ノスタルジアと今の時代とが常に対話している。
 
今回のコレクションの撮影現場には、壮麗な空間がコレクションと自然にマッチするクレリチ宮が選ばれた。贅を尽くした空間と現実とが一体となった宮殿は、ロベルト・カヴァリを愛する女性にとってラグジュアリーとは日々楽しむもの、ということを強く印象づけている。


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