Interview

HIRO 後篇

自分は買ってくれてる人の近い位置にいたいなーって思うんです。店頭に服並べてるだけじゃ想いってわからないから

—ここ最近ランウェイをやっていませんがそれはなぜですか

東京にいるからかもしれないですね。現実的に自分も諦めていたところがあったので・・・

—それはどういうことですか

たとえばクレージーな服を一着作るじゃないですか。でもそれに対しての人のリアクションが「あ、これ着れないよね」とか「これ縫製悪いよね」とか。でもファッションの大切なところってそこじゃないと思うんですよ。やっぱりその一着に対する想いとかどんだけ時間かけて自分の想い詰め込んだかっていうそういうものが大切だと思うんですよ。自分も作品の見方ってそうなんですけどシルエットが悪いとかいう以前に本人のどれだけ情熱があるかだと思うんですよ。その感覚ってロンドンにはあるんです。ジャーナリストにしろマガジンにしろ若手に対しても凄くオープンだし。でも東京に帰ってきて思ったのはそういうとこ見てなくて「着れないよね」とか「派手だよね」とか「こんなの作ってどうするの」とか言われたりするんですよね。多分ファッションの本質が違いすぎて。だからショーをやる気が起きなかったんですよね。だから今ストップしてて・・・

—ロンドンから東京に帰ってきて服作りは何か変わりましたか

東京の良いとこは職人さんがいるじゃないですか。デニムにしてもそうだしそういう伝統技術みたいのが洋服に加わってくるからクオリティが半端なく上がるというのはありますね。自分の感覚プラス工場の職人さんたちが加わってくるから物自体の縫製の技術とか加工の技術が加わるのは凄い素晴らしいなと思います。それは世界的に見ても東京というか日本の工場がトップクラスなんじゃないかなと思います。

—ロンドン以前と以後で変わったことはありますか

全然違う職業していたんですけどそれをやめさせるきっかけを与えてくれたというか「あ、ほんとやりたいことやった方がいいんだー」って思った街というか自分に嘘をつかなくなりましたね、ロンドンに住んでからは。考え方も180度変わった気がします。

—ロンドンの利点、また悪い点があればお聞かせください

ロンドンにいるとお金がなくなりますよね。食えないというか。ロンドンにいるとビジネスっぽくならないので余計お金は稼げないんですけど自分の感覚的なものは開放できる。そういう点は良いと思いますね。東京帰ってくると帰ってくるで日本人だし、物自体は作りやすいですよね。パンツ一本にしろ、ブルゾンにしろやっぱり物が困らないので。

—ロンドン時代と服自体のテイストは変わりましたか

変わりましたね。ショーをやってないというのが一番の違いなんですけどショーに出すような服を今作ってなくて本当に多分「友達に着て欲しいな」とか周りの友人に着てもらいたい服を作ってるんで。実際周り見ても自分の服をたくさん着てくれる友達がいるのでそういうことは素直に嬉しいですね。ロンドンいるとクレイジーな服ばかり作ってしまうので誰も着てくれないんですよね。だから今現実的に物作ってて、シルエット一つにしても縫製一つにしてもちゃんと考えるようにはなったのでそこは成長していると思います。

—HIROというブランドは自分の着たいものを作るということですか

そうですね、単純に。今自分が着てるものもそうですし。周りにいる友達が着て欲しいなというもの作りですね。コンセプトは毎回決めてやっていますが。その後にデザイン画を書き始めてという工程ですね。

—パターンは自分でやられているんですか

パターンはパタンナーさんと一緒にトワル組んでサンプル作ってという順序で。

—自分のコレクションと今回のエキシビジョンのような創作活動で考え方というのは一緒ですか

180度逆な気がします。ああいう展示とかはパターンも引かないしデザイン画も描かないんですよね。即興で物を作るからそこがいいと思うんですよね。先を考えて物を作ったら枠が出来てしまうので、偶然あった生地で偶然ひらめいたアイデアで物を作るのが新鮮なものが出来上がるんじゃないかと思うからそういう服をつくってランウェイ歩かせたいというのはあります。今展示会ベースで作っているのはやっぱり自分が着たい服なのでちゃんとデザイン画描いて着心地だったり縫製だったりを考えて作るから180度別だと思いますね。自分のプライベートなアートピースを作る時はまったく別ですね。完成しても意味わからないですからね。

—それは着るものを前提として作ってないからでしょうか

そうですね。逆に着れないものというか。とりあえず袖があって羽織れればいいとかそういうのりでつくっているので。一応どちらも同じHIROではあるんですけど取り掛かる姿勢が真逆というか。だからできるものもテンション高いし。

—HIROでは時代性などを意識したもの作りをされていますか

時代性はとくに考えないんですけど僕らはやっぱり自分の美学があると思うんですよ。自分の育った環境で格好良いなと思えるものがつまってると思うんです。たとえば音楽だったり自分が着てた服もそうだし自分の綺麗だなと思えるものを毎回出すだけなので特に流行とか意識したりはないですね。

—どういったところから物作りの影響を受けるのですか

僕は好きな音楽とアートですね。

—例えばどんなものでしょう

最近だと音楽であれば80年代から90年代のパンクからニューウェーブに移るときの音楽だったり、ファッションが凄く好きなのでそこが自分が詰まってるところだし。アートでいえばフルクサスというオノヨーコさんとかジョンレノンとかあーいう人たちが集団でやっていたものがあるんですけどそういうものが好きだったりそういう自分の好きなアートとか音楽とかファッションもカルチャーが詰まってるんでそこから引き出しが開いてって感じですね。

—影響を受けた人物やデザイナーはいますか

個人的に好きな人はスタイリストのJudy Blameでその人は凄く昔から好きで、あとはJohn Mooreっていう靴のデザイナーさんがいて高校一年のときから履いてるんですけど今回正式にコラボレーションして靴が自分のブランドから出せたんですよ。ロンドンの90年代とか80年代の後半のカルチャーが好きですね。例えば裏原が盛り上がったのもカルチャーだし。

—カルチャーが好きだったからロンドンに渡ったと

それはあるかもしれないですね。最初はNYに行ったんですけど全然英語喋れなくてNYって冷たいなって。ロンドンに試しに行ってみたらゆるいし住み心地が良かったのでロンドンに一年だけ住んでみようって思って。最初作った服はカスタマイズなんですけど、どこも置いてくれなくて。「じゃーやめる前に一度ショーやろう」と思ってやったんですよね。そうしたらPineal EyeとFactoryというお店と福岡のお店さんが買ってくれて。

—物作りにおいて最も大事にしている点とはなんですか

まず自分が着たいと思えるものと友達に来て欲しいなというのとやっぱりパンツにしろTシャツにしろ一着作るだけで(工場の人だったり、パタンナーだったり)物凄い数の人が関わってくるので人との繋がりを大切にしてて。だから今回こういう展示も出来たと思うし、同世代で服作ってることもそれも人の繋がりだし。

—今回みたいな形ではなく商品としてのコラボレーションも展開してるんですか

仲の良いブランドさんとはしていますね。結局人だと思うんですよね。バイヤーさんもそうだし。買ってくれてる人たちもそうだし。だから自分は買ってくれてる人の近い位置にいたいなーって思うんです。店頭に服並べてるだけじゃ想いってわからないから。だからやっぱり取引さんとか地方でも直接行ってみてお客さんと話してみて。半年に一回なんですけど地方とか福岡とか名古屋とか大阪でもそうなんですけどやっぱり新しい服作ったらお客さんに実際のサンプルを見せて自分で説明してっていうのを結構最近実践してるんです。それも凄く良いなって思えますね。直接自分から買ってくれる人に「この服はこういうところにこだわってて」とか伝えられることは自分でも嬉しいし、多分お客さんも嬉しいと思うし。

—なかなかデザイナーさんの気持ちをお客さんにダイレクトに伝える機会ってないですよね

ハンガーとかにさがってて5,6万とかしても意味わからないじゃないですか。素敵だけど「なんでだろう」みたいな。そこでまた自ら説明できて「あーこれこういうところが凄いんだ」って理解してもらったら買った人も嬉しいんじゃないかなって思いますね。

-実際お客さんの反応はどうでしたか

凄く嬉しそうでしたね。サインとか求められたり。居酒屋に色紙も飾ってあったり。買ってくれたTシャツにメッセージとか書いたりするんですけど「洗いません」とか言ってくれるんですけど、そこはちゃんと「洗った方がいいよ」って伝えてます。

—服としての機能性は勿論重要だと思うんですけどデザイナーさんの想いも凄く重要ですよね

それは凄く意識していますね。洋服一着に対して自分の服には全て説明書があって。自分の手から離れたらバイヤーさんしかわからないじゃないですか。だからそういう人たちがお客さんに説明できるように細かく書いた説明書を渡してて全部の取引先さんに自分の服の説明が出来るようにしています。「こうやって作ってこういう想いでこういう糸使ってこういう素材でこういう風に着てください」みたいなものがあるので普通の服よりは伝わりやすいのかなって思いますね。

—最後にHachiさんから見たブランドHIROについて教えてください

(Hachi)自分が初めてHIROの服を見たのがさっき言ってたFactoryというお店で今回の展示にもその時に感じた衝動的な感動見たいのを自分なりに50:50な感じで表現したのが今回の作品なんです。HIROさんの服は通ずる部分が多くてファッションの大切な、よくいわれてる着心地だとかそういうこと以上に個人が持った時に何が大切か、何が服としての違いがはっきり出るかとかそういう大事な部分を理論的にではなく感覚的に感動させてくるというか。感じる部分で「がつーん」ってやられるというか。初めて見たときは18とかで今より論理的に物事を考えられなかった時なんですけど感覚で感じさせてくれて。HIROの服はルールとかじゃなくて感じるというので良いなーってその感情が強かったですね。そういう魅せてくれたっていう。感情的な部分で訴えてくれるという感じですね。

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Blog – http://hiro-nippon.blogspot.com/

Interview, Text/Masaki Takida

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