Interview

HIRO 前篇


新宿のCandyで行われたエキシビジョンも話題を集めたブランドHIRO。今回はBALMUNGデザイナーでありエキシビジョンのオーガナイズも手掛けたHachi氏にも同席していただきエキシビジョンのことをはじめ様々な話をHIRO氏に聞いた。

—今回のCandyでのエキシビジョンはHachi君が企画したんですか

(Hachi)企画というか「やりましょうよ」というのをまず持ちかけて、展示の実際のコンテンツというか内容はHIROさんに考えていただいてみたいな。「Candyからビジネスを抜きに社会に発信できる何かをやりましょうよ」みたいなことでお話させていただきました。

—Hiroさんはその企画があった時どう思いましたか

とりあえず自分は何でもやるというタイプなのでやると。

—それが何ヶ月前なんですか

2月くらいに話をして具体的な内容を話し出したのが3月くらいです。ただ自分の展示をやっても面白くないなと思ったんです。デザイナーとお客さんが近い位置にいるのって大切だと思うんですよ。バイヤーさんもそうだし。結局自分一人では何も出来ないと思うし。やっぱり人がいて自分の作品が作れているので例えば工場さんだったりパタンナーだったり色々な人が絡んで出来上がってるからなんだかんだ東京って仲良かったりするじゃないですか。でもデザイナーの人って案外自分のブランドは自分のブランドって孤立してしまうんですけどそうじゃないと思うんですよね。なんかその壁取っ払ってデザイナー同士が近い位置で物を作るのがいいんじゃないかと思って。

—いい感じにゆるーいコラボレーションでしたよね。いい意味で既存の枠に囚われていないというか

今回は規制とかもかけてなくて「着れる服」というのを意識して欲しくなくて、ファストファッション系などの大量生産がどんどん出て来ているからこそチャンスだと思うし、自分達みたいにテーマを持って自分の個性をぶつけているブランドにはチャンスだと思うんですよね。中途半端にやってるブランドはこれから多分なくなるからそれくらい強い意思をもったデザイナーさんが逆にちゃんと出てくるんじゃないかなというのはありますね。

—ちゃんとしたオーガナイザーがいないからこそあのようなジャンルを取っ払ったデザイナーさんのセレクトになった気がするのですが、色んなものが混ざり合って。Candyに関係ないブランドも多くて面白かったですよね

そうですね。そう思います。

—エキシビジョンの準備をしていた期間というのはデザイナーさんにとって(展示会の準備など)一番忙しい時期だったと思うのですが

展示会やりながらこの企画のことどうしようかなって考えていました。展示会やっている最中にデザイナーさんに話して「こういう風なことやりたくて」って。今回は全部仲が良い人たちだけでやりたくて。誰でもではなく自分の友人とか自分が好きなブランドさんとかだけでやりたいなって。

—話が進んでいく中ですぐにこのブランド達とやりたいっていうのは浮かんだんですか

そうですね。

—完成したのはいつ頃だったんですか

直前ですね。3日4日前に僕が1個1個受け取りに行ったり、(デザイナーさん自身が)届けてくれたりとかして。

—あの中ではHisui/翡翠も意外なセレクトでしたね

Hisuiの良さはデザイナーさん自身にわけのわからないパワーがあるので、服のクリエイションどうこうというのではなくやっぱり人で判断しているので(デザイナーの)伊藤さんの人柄と前向きなパワーにいつも元気貰うんですよね。服というかボタン踏んだら叫ぶ装置があってそれに今回も力入れてて。そういうのも伊藤さんぽいなって。

—デザイナーさん達から作品を受け取ったときどう思いました

良いも悪いもわかんないですよね。「おーー!」というか「こー来たか」みたいな。凄く面白いと思いますね。物を渡してその人なりに再構築して戻ってきてその時のデザイナーさんの感情というか考えてることがその服に詰まって返ってくるから「あ、このデザイナーは今こういうこと考えてるのか」っていうのが言葉じゃなくて物でわかるというのが凄く面白かったです。

—こういうことだけはしないでくださいっていうのもなかったんですか

ないです。

—全体像としてはどうでしたか

もうちょっと広い方が良かったけど・・・。もうちょっとやりたいこともあったんですけどやっぱりスペース的にクリーンに見せたいというのはあったのでぎりぎりのキャパシティの中でぎりぎりの詰め込みだったのでもうちょっと広ければなというのはありますね。ただあそこの場所(Candy)の良いところは今の東京のセレクトショップに無いパワーがあるからそれは凄く良かったですね。来るお客さんもそうですし。

—(エキシビジョンを行って)反響はありましたか

本音かどうかはわからないですがみんなが「凄い良かった」って言ってくれましたね。まずやったデザイナーさんがみんな「凄い楽しかった」って言って、当日も来て凄いテンション高くなってたから「やってよかった」って思いましたね。

—HIROさん自体は(今回のエキシビジョン用に)服の製作はされたんですか

今回は(みんなを)まとめた感じですね。過去の一点ものとあとは什器とかちょっと作ったりもしましたが。

—空間とかレイアウトとかはHIROさんが全部プロデュースされたんですか

はい。そうですね。

—どういうイメージだったんでしょう

クリーンだけどタイトルが「I am Blind」(盲目)で物作りって普通の服ってデザイン画書いてこういうの作るって決めるんですけど僕は一点物を作るときってパターンとかなにも作らないんですよ。本当に頭真っ白にして感覚だけで作る服って先が見えないから楽しいと思うんですけど。物作りって前が見えないっていうのが基本にあってパンクとかもそうじゃないですか。なんかいいんだけどなにがいいのかわからないみたいな。初期衝動的な感じってあるじゃないですか。そういうのをお客さんに伝えたいなっていうのがあって。物作りの素晴らしさじゃないですけど本当に計算された服じゃなくて感情で語る服みたいのを各(デザイナーさん)それぞれに作って欲しくて。

—あの(エキシビジョンの)延長でまた何かやろうということはありますか

次ですか。それはHachi君次第ということで。ショーをやりたいですね。

(Hachi)ショーとか出来るかなと。あれをやったことで更に僕も確信が強まったというか絶対に出来るというか。

(HIRO) Hachi君から「何かショーをやりませんか」という話を言われるまで本当に最近思ってたことなんですけど、次かその次くらいでちゃんと東京コレクションのスケジュールに入れてあのランウェイで無茶苦茶やろうかなとか考えてて、途中で人が帰るくらいの。

—JFWのスケジュールでということですか

そうですね。JFWのスケジュールに入れて途中でジャーナリストが席を立つみたいなショーをやりたくて。

—しかしその考えは変わったということですよね

そうですね。どうせやるなら一緒にやったほうがいいかなって。

(Hachi)最終的にはそれぞれ個人個人で動いていてもお互いが影響しあって結局カルチャーになるので良い意味でみんなで作り上げていくパワーみたいのをもうちょっと示していければ良いかなと思うんですよね。

—東京にはそういうことが受け入れられる土壌はあると思いますか

(Hachi)(受け入れられる)そういうのを凄いはっきり確信してmixiもそうですけど東京のファッションの現場ってやっぱり若者だと思うのでそういう人たちが好む服であったりブランドであったりそういうものをもっと本場にぶつけていけば本当の意味での良い進化が絶対に出てくると思うので。パリとかロンドンとか特にDior HommeとかRaf Simonsとかもそうですけどやっぱりストリートカルチャーをああいうハイブランドなりの解釈を加えてというか。あれもやっぱり相互効果であって、そういうブランドが出しているデザインをそのまま格好よく着こなす若者がいたり、もしくはそういうもののコピーを好んでいる人がいたりとにかく影響しあって積み上げられていくものなので今の東京のメインステージみたいな人たちの現状ってどちらかといえば相互効果みたいのが全然なくて消費者に一方的に流れているというか、凄くそういうのを感じてて。それじゃー本当の意味での東京の良さは全然ないし。それはやっぱりお客さんも楽しくないと思うし。ファッションの一番の面白さは現場のそういうところだと思うので。この前のパーティーを見て「あ、出来る」って思いましたね。こんな場所なのにお客さんもこんなに来て人もこれだけ集まって出来るんだなと思って。

—それはHiroさんも感じましたか

僕はちょっとわからなかったですけど・・・。

—Hiroさん的には今の東京をどう思われますか

カルチャーとかって生まれてないからある意味ジャンルは全然違うかもしれないですが裏原ってかつて凄いブームになってそれってやっぱり同世代の人たちが繋がって作ったムーブメントだと思うんですよね。最初ビジネスじゃないところから。(裏原世代は)一つ上の人たちだから自分達は自分なりの何かが作れるんじゃないかなとは思いますね。ただやるだけというか。

—ロンドンではそういうのはありましたか

ロンドンではありましたね。帰ってきてなかったから結構「あー」みたいな。全然ファッションに対する考え方が違うんだなーって。

—具体的にどう違いますか

ロンドン住んでて思ったのはまずコレクションにしろなんだかんだオンスケジュール、オフスケジュールって若い子もちゃんとスケジュールに入ってコレクションが発表出来てそれなりにちゃんとこ人がショーに来れる状況が作られているんですけど東京コレクションって若手が入りにくいっていう現状ってあると思うんですよね。お金が絡んで入れなかったり凄い現実的になりすぎてるから買うバイヤーさんも名前が出てないと展示会も来ないし。ビジネスビジネスしすぎてるって思いますね。

—コレクションをやる場としてはロンドンと東京どちらの方が良いと思いますか

今となっては東京の方が動きやすいし住んでるところのほうが動きやすいので今は東京ですね。

—ロンドンでの人々の反応と東京での人々の反応というのは違いますか

自分自身が違うというか。ロンドンにいると本当にクリエイターっていう人が多いし、自分に素直に物作ってる人が多いからその分同世代がCarry(CassettePlaya)とかGarethとかNokiとかあーいうひとたちが周りにいたからそういう人たちが回りにいると「負けてらんねー」みたいな。Paul Smithみたいな服を作ってるわけではないのでやばいというかいかれたショーやらないと満足しないみたいなところがあったから近い人にそういう人がいると自分が影響されるというか。「やってやろう」みたいな。

続く

Comments are closed.