Interview

TARO HORIUCHI 後篇

「正しい生活ってなんだろう」と考える事が最近多いですね。何が正しくて何が正しくないのかを考え直す時期なんじゃないのかと思います。

-2年前(ヨーロッパで出会った新人たち展の後に)ブランドを立ち上げなかったという決断に対して今振り返ってみてどう思いますか

間違っていなかったと思います。あの時始めていれば、それなりの注目もあったとは思いますが、やはり自分自身が準備できていないと良いものが出来ないと思うので。

-ヨーロッパで出会った新人たち展に出店したほかのブランドは既に東京でもショーを行っていますが焦りとかはないですか

それはないです。自分は自分なので。

-今回東京でコレクションをやろうと思ったのはなぜですか

ビジネスの構造としては、やはり東京がやりやすいなというのがありました。

-最終的には海外を意識されてるわけですよね

そうですね。海外のショップなどにも知り合いは多いですし、展示会もどこでやるかはまだ決めていませんが、NYやParisなど少しずつやっていければと思っています。

-Taro Horiuchiのコンセプトを教えてください

コンセプトというか、自分はCoco Chanelに憧れているというのがあります。(Chanelが活躍した)その時代の人は、デザインありきというよりはどちらかといえば社会構造ありき。 社会の動きに対しての反応として、自分は何が出来るのかという部分が大きかったのだと思います。自分はやはりその方向に進みたいと思います。自分の個性と いうよりは、自分の考える社会に対しての答えとして一つ提案がある。デザインというよりは、生活を良くするためのプロダクト的な要素であったり、もう少し 精神的な物の豊かさをエクストラで与えられる、自分の個性の押し付けというよりは、社会に対しての職業の役割のような思いの方が強いです。自分のファッ ションコンセプトというよりは、職業としての服飾だと思っています。

-今現在最も影響を受けていることってなんですか

今は社会の構造が変わっていく時代だと思います。そういった時代で、反応が一番速く出てくるのがアーティストだと思うので、そういうものに着目して、美術館やアーティストの作品などから影響を受けています。

-どういったところからインスピレーションを受けたりするのですか

父が美術商なので、昔から多くの美術品、特に古代美術に触れてきました。
現代の進む方向性としての人間の生き方というのは、ある意味で後退していくことという感じがします。新しいアートと古いアートを同時に見たときのバランス など、そういうものが好きです。一つのコンテンポラリーアートを見てストレートに受けるというよりは、そこと自分の社会に対する考えと美しいものに対する 宗教的な考えというのでしょうか。古代美術はコンテンポラリーアートと違い、古くなればなるほど王族や権威というものよりも、自然というか神に対しての信 仰のための品ですから、(コンテンポラリーに比べ)シェープがもっとピュアだと思います。その価値観の混ぜ方というのでしょうか。

-自分のスタイルについて教えてください

難しいですね。でも正しくありたいなというのはあります。「正しい生活ってなんだろう」と考える事が最近多いですね。何が正しくて何が正しくないのかを考え直す時期なんじゃないのかと思います。

-デザインをする上でもっとも重要な点とはなんでしょう

「何が正しいのだろう」ということです。一番興味のあることは新しい生活の提案という部分です。自分の役職として、新しい生活の提案をしなければいけない のかなと。自分自身をアーティストだとは思っていません。欲求としては表現したいことがありますが、そこの兼ね合いが大切だと思います。

-自分がデザイナーという職業を意識したのはいつでしょうか

アントワープ行ったときも曖昧でした。今もデザイナーという感覚よりは、自分ができることをやっているというか。今後も服だけをやっていくつもりはないですし、生活の提案をしていければと思います。必然というよりは役職を与えられ、こなすという感じです。

-服を作ろうと思ったきっかけってなんですか

自然の流れでしょうか。でもコンセプチュアルなものが好きで、マルタンマルジェラを好きだったというのがやはり一番大きいのでしょうか。それが理由でアントワープへ行き、今思うことは、シャネルの考え方の方が好きだということです。

-では最も影響を受けたデザイナーといえばシャネルということになるのでしょうか

シャネルとマルジェラ、どちらか一方は選べないです。

-Taro Horiuchiの描く顧客像について教えてください

やわらかくて、理知的な人です。社会に対する自分の考えが一致している人に着てもらいたいです。

-2年前と比べて自分は成長したと思いますか

そうですね。真面目になったというか、ある意味少しずつ人間になれているのかなと。動物的な感覚だけではやらなくなったという点でしょうか。今は人の為に 何が出来るのかという事を意識するようになりました。与えられた職業で、今自分に何が出来るのかというのが一番大きいです。

-ヨーロッパで出会った新人たち展以来海外帰りのデザイナーたちが増えてきていると思いますが意識したりしますか

特に意識していません。個人個人だと思います。自分が海外帰りのデザイナーとして捉えられることに対しても、特に何も思わないですね。それをポジティブに受けてもらってもいいし、ネガティブに受けてもらってもいいと思っています。

-ファストファッションが持てはやされている現状に対してどうお考えですか

(ハイファッションとファストファッションの)両極化の時代だと思います。(ファストファッションは)一つの流れとしてあるのかなと。物に対する価値観が 崩れてきているとは思います。それに対しての自分なりの提案ができれば良いと思っています。そのアプローチとして、新しい生活の提案が正しくてニーズに あっていれば変わっていくものだと思いますし、変われるものだと思っています。

TARO HORIUCHI for Diesel
(Interview, Text/Masaki Takida) 2009/June

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