Interview

Noir Sound Production Setsuya Kurotaki 前篇


プロジェクトにより様々な名義で活動するアーティスト/サウンドスタイリスト黒瀧節也氏が運営する音楽プロダクションNoir Sound Production。イベントやファッションショーのサウンドプロデュースから子供達のリズム感やコミュニケーション能力の向上を目的としたプロジェクト”KIDS Hi-5″まで音楽を通して幅広い活動を行っている黒瀧節也氏に話を聞いた。

-ファッションショーの音楽について教えてください

写真やイメージが送られてきてそれに会う質感の楽曲を作ってくれと言われることもあります。もしくはそういう曲を選んで配置してくれみたいな。素材の部分 の説明であったり、ポイントとなる部分を書いてあってそれに合わせて、弱い印象の服が並ぶ時には強い印象の音を使わないとか、色味とかでダークなトーンの ものが多いときにはダークよりにしないとかいう部分でバランスをとったりしますね。マスタリングの部分でキックを強くしてあげるとか、こういう音楽を使っ てもらいたいとかあるんですけどエディットしてもともとある音圧よりもビートの部分を強めてあげるとかブレークをちょっと長く取ってあげるとかこのタイミ ングで洋服が切り替わるから、そのタイミングでループを長く取るとか時間でエディットしてあげたりとかもしていますね。

-Trunk Showの音楽も手がけられているんですよね

(Trunk Showは)普通のショーと違って洋服の説明が入るんですね。だからその部分の音を打ち消さないようにするというのと、服に集中させる為の音をどうやって 作るかというのをコンセプトに毎回作っています。専門的な用語で言うと周波数待機、声とぶつからないところで鳴らしてあげるとか、テンションをあげてあげ るようにポイントポイントでビートを変えてあげるとか、揺らぎを作ってあげるとかの部分で聞いてないんだけど聞いている状態、目に神経の行きやすいような 状態の音作りをしています。

-自分がショーを見たときに「素晴らしいな」と思う音作りとはどういったものですか

始め(入りの部分)の印象ってすごく大きいんですよね。最初に強い音が鳴って始まるよりも、薄くある程度鳴ってて耳をそこに準備させてあげる空白を作って あげてるメゾンがあったりすると「あ、この選曲は凄く考えられてるな」と思いますね。一番聞かせたいときの音の前というのはまったく無音よりも、何か鳴っ ててかかるほうが実は一番印象に残ったりするんですね。それはホラー映画とかにも言えて、視覚的に怖い場面の前って遠くで高い音がなったりとか何かしら雰 囲気を作ってる音が入ってるんですよ。それは結構心理学的にも音がメンタル部分にどういう影響を及ぼすかという結果でも出てて。

-日本と海外のブランドで音楽性の違いはありますか

海外の方ってのりで選曲される方が多いのかなと思いますね。楽曲に依存する部分が多いのかなというのが見受けられたりしてて。ただ東京でとか海外でとかで はなく選曲家がどれだけ音楽のことを掘り下げて知っているのかということの差だと思いますね。音楽的なアプローチが構成とか、楽曲、メロディーとかキーと かというのが分かってて選曲すればするほど音を落とし込みやすくなってくるような気は凄くしますね。

-ファッションショーで音が強くクローズアップされたりすることもありますよね

音とファッションの結びつきが強ければ強いほど逆にそこを飛び越えられなくなるんじゃないのかなというイメージはもっているので、ファッションの為の音楽 なので自分は音を前に出しすぎるということはやらないようにしています。それをすると耳に意識が行ってしまうので全体のおぼろげな印象しか視覚的に残らな くなるような気が凄くしていて。

-音楽のイメージってすぐに浮かんでくるものなのでしょうか

自分の中でどこから音を引っ張ってくるかみたいなトレーニングは出来ていますのですぐにイメージは浮かびますね。

-それはどういったトレーニングですか

自分はもともとCMの音楽とかを作っていたのですが、CMの音楽というのは撮影と同時進行なんですよ。演出コンテといわれる4コマ漫画みたいなものを先に 渡され、そこに歌詞があったりだとか、ポップス途中エレクトロディスコみたいなのが書かれていたりしてて、それを15秒で作り込まなければいけないという 時に大体3パターン作るんですね。(CMの音楽は)オファーがあって納期までかなり短納期の場合もあるんですよ。何回か打ち合わせがあるのでその時に監督 はどういうイメージでこれをとりたいと思ってて、どういう曲が好きなのかリサーチして音を考えるという順番です。

-音を作っていくうえでどういったプロセスが一番重要なのですか

一番最初のコミュニケーションが一番大事ですね。どこに訴求したいのかとか。どういうストーリーをもってショーを進めていくのかとか。音先行の場合もあるんですが、その時は音を先に投げてそのタイミングで順番を作るから先に音を作って下さいとか。

-サウンドスタイリストについて教えてください

普通のファッションスタイリストってこの人に似合うだとか、撮影でこのコンセプトに似合うような服の組み合わせでひとつの世界観を作るじゃないですか。そ れは音も実は一緒で「この建物の中にこういうショップを作りますと、このくらいの年代のお客さんが出入りしていく中で音の訴求をどうしていきたいかという オファーが自分に来るのですが、その時に世の中で流行している旬なものも入れつつどういう音がこの店に合うのか、どういうボリュームがこの店にあうのか、 どういうスピーカーの位置が合うのかということをセットアップしてあげることによって、スタッフが音に疲れないだとか、飽きないでいられるとかという部分 でもそうですし。お店自体の印象とか「この曲ってなんなんですか」というコミュニケーションが生まれることをスタイリングしてあげる部分でサウンドスタイ リストと呼んでいます。

続く

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