Interview

writtenafterwards 4

時にファストファッション自体がファッションになることも有り得ると思うんですよ

-卒業コレクションで主席を取ったわけですがそれは最初から狙っていたのですか

狙うというか最初からそう(主席)じゃないと駄目だなって思っていました。その前にITSに参加していて評価してもらっていたので正直その時は学生に戻らなくても良いのかなって思っていたんです。ITSの後KENZOのAntonio Marrasから作品製作のオファーが来てそれを作っていたので1ターム目行ってないんです。でもそれでも先生が戻って来ればというオファーをもらったのでだったらやろうかなって。でも戻るからには主席を取りたいなというのはありました。

-海外から戻ってきてJFWに参加された理由について教えてください

単純な理由なんですけど海外は「もういいかな」って思ったんです。海外に居るとビザの問題とかお金の問題とかいろんなリスクがあるじゃないですか。そのリスクを負ってまで日本で活動することを否定する必要はないんじゃないのかなって思ったんです。

-実際に東京に戻ってきてどうでしたか

世界的な感覚で物を作っていきたいというのがあるんですけどその感覚が鈍くなるのは怖いです。ここだけの範囲内で考えるとやっぱりどこかで鈍るんじゃないのかなという恐怖感はあるのでいつも意識的に海外の流れとかは見なきゃなって思っています。そういう意味では今回アーネムとかアントワープにも行ってきたんですけど良かったですね。

-日本でやっていて海外とのファッション感の違いって感じますか

感じますね。けど日本も居場所がないわけではないのかなと思います。日本好きですし。

-JFWについてどう思いますか

ださいですよね。向こうで感じたのはファッションって文化だというところなんですけどそれが認知されてると思うし学問としても認知されてるし、教育としても認知されててフランスとかイギリスとかベルギーでも国がちゃんとファッションを認めていて文化事業としてサポートしているんですね。けど日本にはそれがないなと思っていて、でも経済産業省が支援するようになって一つのチャンスというかJFWに参加していると国の人と話せる機会があるんです。そういうチャンスってないじゃないですか。

海外には国立、王立でファッションの大学機関があって、日本のアカデミックな部分で成長しないのは国立にファッションがないので、そういうところからも人材がファッションに行かない部分があると思うんですよ。そういうのも問題があると思うのでそういうのは国単位で考えていかなければいけないという意味でただ参加してファッションショーをしてJFWに関わっているという感覚ではないんです。ファッションを知らない人が立ち上げてまだ期間も経ってないのでダサいのはしょうがないんですよ。ただそれをどんどん一緒にやってわかってもらうというのは努力してやり続けなければならないのかなって思いつつやっているんです。けどそれをダサいと思ってだらだらと1ヶ月とかショーをやっていたら、海外に対してのレベルもあがらないし文化としても認知されないと思うんですよね。

-海外帰りのデザイナーとして自分で意識することはありますか

自然とそうなっている部分はありますね。価値観が向こうだなとは思っています。



-ヨーロッパからの新人たち展以来、海外帰りのデザイナーが増えてきているわけですがそういった点についてはどう思いますか

そういった人達が多いというのは日本の教育が弱いと思うのでそれは駄目だなって思いますね。本当は日本で教育を受けた人ももっと出てくるべきなのに結局海外に流出しているというか。逆にこんな僕らでも注目されるんだっていうのはありますよね。

-自分達が引っ張っていかなければいけないという思いはありますか

当たり前に伝えなければいけないことが伝わっていないので、盛り上げるという感覚とか「最低限ここ必要でしょ」というのは伝えたいなとは思っています。ファストファッションがあってクチュールがあってとか色んなファッションが存在してファッションだと思うんです。でも全体的に感じるのがその価値観が狭いんですね。だけど本当に世界でやっていくならここもここも見なければいけないしっていうのは思うんですよ。僕が全部見れてるわけではないですけど僕が見れてる部分もあるのでそれは僕の伝えたいところの一つですね。あぶれちゃってる人がいて、でも実はそれが「いやそれありなんだよ」って時もあるんですよ。逆にありだよってされてる人が「それなしでしょ」っていうのもよくありますし。

-ファストファッションに対してはどうお考えですか

時にファストファッション自体がファッションになることも有り得ると思うんですよ。例えばセレブとかお洒落スナップでも今はがんじがらめのブランドコー ディネートとかより若干何か崩している方がお洒落だったりしますし、だからあえて否定する必要もないのかなと思います。実際に僕もそういった物も着ますし時代的に否定するのも無しな時代なのかなって。昔はブランドの姿勢として「そういうの関係ないです」ってするのが時代だったと思うんですけど、今はそうじゃなくてそれじゃ生きていけない時代というかそういう感覚はありますね。

-writtenafterwardsの顧客像について教えてください

20歳前後の若い子ですね。売りたい子とイメージは少し違っていて、着てもらいたいなって部分で考えると大人と子供の中間と男と女の中間の空気感を醸し出してる感じの子ですね。曖昧な精神性というか中性間というか。でも前回の廃材を使ったコレクションは分かりやすく言えばBjorkとかアーティスト肌を持った人に着て貰いたいなって思います。

-物作りのヒントってどういうところから得ているのでしょう

日常生活からですね。

-テーマはどうやって決めるのですか

テーマは日常で耳にすることや目にすることとかですね。多分みんなが見てるものと一緒の物だと思います。探し出してテーマを決めるというわけではなくて「時代を考えながら普通に入ってきて出す」みたいな感覚ですね。なんとなくもやもやしたものが最初にあってそれを具体化していくというか。

the everyone’s new Clothes


-物作りのプロセスについて教えてください

毎回違いますね。テーマはなんとなくぼんやり置いておいてコンセプトがあってそれをどんどん構築していって付け足していくんです。テーマは後付というか「こことここが結びついてるんだな」って後から気づくこともありますね。最初は気づいてなかったことが後から出てきて「あ、それをコンセプトに加えよう」 とか。

-服作りにおいて最も重要視している点はなんですか

「人の心が動く」ことですかね。感情って色んな形であると思うんですけどなにかしら感情が動くことが重要だと思うんです。

-それは否定的な感情でも良いのですか

無関心であれば否定の方が良いです。否定ならば感情が動いているので記憶に残るじゃないですか。そしたらもしかしたらいつか好きになるかもしれないし、感情が動いてること自体が重要なのかなと思います。

-今後やりたいことってありますか

活動としては今やってることの延長線上でやりたいというのがあって、気楽にもっと絵本的なものを書きたいなというのもありますね。やっぱり外に出て発表してコミュニケーションしたいという気持ちもありますし。それが無いと不安なのかもしれないですけど。日本だけで評価されてもそれで本当に良いのかなって 思ってしまってる自分もいるんですよ。勿論日本でももっと評価されたいですし、それを世界に出しても何かしらの評価はされたいんです。

-writtenafterwardsが最終的に目指すところってなんですか

世界のファッション界の中でwrittenafterwardsとか僕がやってることはこういうことで、それはファッションの中ではエッジだけど重要で、そういうことをしてるのはここしかないんだなって思われることですかね。「オンリーワンだけどそれはそれで必要だろ」って思われたいですね。

-山縣さんにとって「ファッション」とはなんですか

人生って言いたいなっていうのはありますね。イブサンローランが「ファッションは人生だ」って言ってたんですけど僕もそう言える様になりたいなと思いますね

HP – http://www.writtenafterwards.com/

Interview, Text/Masaki Takida

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