Interview

さとうかよ 3

writtenafterwardsは着たくないけど凄い。なんか妖怪というか怪獣みたい。

-やっぱり学校にいたから色んな経験を出来たというのが大きかったんですね

そうでしょうね。でも外に出てやる気も無かったんでしょうね全然。初めての個展、人が全然来なかったんですよ。何で人こんなに来ないんだろうってくらい。自分が好きな人にDM送ろうと思って高木正勝とかCDのジャケットの裏とか見て私が好きだと思う人に送りつけたんですよ。高木さんだけは返事が来て。Undercoverに似てるよって言われてその時に初めてUndercoverの店舗に行ったらぬいぐるみがいっぱいあってびっくりして「個展のDMを渡してください」って言ったら「駄目です」って言われて。「え」と思って。「じゃーあなたにあげます」って言って店員さんに渡して帰ってきて。なんか世の中結構けちだなと思って。なんか外は厳しいんだと初めて感じ・・・。

でも今流行っているギャラリーにへこへこするのが凄い嫌で。日本で10個くらいしかないんですよ、インターナショナルギャラリーって言われるところって。 アートフェアが色んなところにあるんですけどそういうところに出れるのが何個かしかないんですよ。でもそこに頭を下げるのは私は本当に嫌でなんかそれ違うんじゃないかなと思ってて、それって学校に入りたいとか「私はこれがやりたいからこうしてください」とか、なんか賄賂に近い気がして。人にへこへこするの嫌だと思って。もっとアートやるなら違うことがあるんじゃないかなって。カテゴリーと一緒だと思うんですよ。デザインか建築かとか。そういうのいらないんじゃないかなって。個展やったときにそういうのが嫌になっちゃって自分達の世代の人をつかまえようと思ったんです。この世代の人達で何かやりたいと思ったんですよ。だから別にアートじゃなくてもいいやと思って。

なんか色々やってるうちにmixiというのが出来てmixiに誘われて入ったら色んな人からメッセージ来るんですよ。全然やり方もわからないのに。そこで色んな人がメッセージくれて。今考えるとみんな大御所なんですよ。なんでこんな大きい人が一緒にやりたいのかなって。mixi始めたてでそういう早い人しかやってなくて、なんかわからないけど「はい」とか言ってたら色んなことがおきて今洋服のブランドやってるのもmixiの人からメールが来たんですよね。「Tシャツの絵を描いてください」って。怪しいじゃないですか完全に。展示会やってるからって告知があってとりあえず会いに行けばいいかなって思って会いに行ったら悪そうな人じゃないから「やります」って言って。

-mixiに自分の作品を載せてたんですか

ホームページがあったんでURLだけ載せてたんですよ。自己紹介のところに1行だけ。そしたら色んな人が見てくれててデザイン関係の人とかも知り合ったのは全部mixiなんですよ。mixiが無かったら多分有名になれてないです。ファッション界ってなんかやると凄い広がるんですよ。ちょっとイラスト描いただけで凄い広がったんですよ。で次の展示の時に凄いいっぱい人が来てくれたんですよ。「あ、これはいい」と思って。私洋服が好きすぎるから自分で作る気が無かったんですよ。自分で洋服作るの嫌で洋服はどちらかというと買いたかったんですよ。洋服を作って売るなんてぜったいわけわからないと思ってて。でもずっと小さい頃からファッション通信見ててショーの演出をしたかったんですよ。ファッションはやりたくないけどファッションに関わりたいとずっと思っててファッションショーの演出とかファッションショーの音楽とか。ファッションのデザインは出来ないけどなんかやりたいと思ってて、でも作ることになっちゃいましたけど。1コレクションそのブランドからテキスタイルとか任されていて。その時にインスタレーションも全部やらせてもらって。その後に「私デザインもやりたい!」って言って。二人でstofというブランドをやっていたんですけどその一人が辞めちゃって一人空きが出て、私その時化粧品の仕事をしてたんですけどその会社辞めてstofに入ったんですよ。自分の宣伝効果にもなるからやろうと思ったんですけど・・・はじめたきっかけが洋服は不順なんですよね。でも世の中に出れたきっかけは多分洋服なんですよね。

-それは洋服からアート界にアプローチしてという感じですか(洋服をきっかけにアートの人に知ってもらって)

同時といえば同時なんですけどね。ただオシャレな人が見てくれるようになったのはファッションのおかげだと思っています。アート界の人ってオシャレじゃないんですよ全然。秋葉に近いというか。

-グラフィックアートの人達はファッションと密接にかかわっていると思いますが

でもなんかあーいうのってグラフィックだと思ってて、アートじゃないと思ってるんですよ。その日本のアートとグラフィックの差を分けないというかそれが凄 く嫌な時期もあってそれ「グラフィックじゃん」みたいな。なんかアートってもっと違うものだっ、て多分アートに凄い崇高な人に教えてもらってたので。

-グラフィックアートとアートは別ですか

全然別ですね。でもそういうの(議論)も今はいいかなと思ってるんですけど、学生の頃はそういうのがほんとに嫌だったんですよね。一緒にして欲しくなかったです。(グラフィックを)なんでアートって言うんだろって思っていました。

-自分の中でのアートの定義は何ですか

精神的なものだと思っています。グラフィックアートって表面が綺麗じゃないですか?表面はアートは磨かなきゃいい気がしてて、表面を整えちゃうとアートじゃない気がするんですよ。核が大事なわけであって細部はそんなに重要じゃないとずっと思ってて。でも作品を売るとか色々考えると大事だと思うんですけど。なんか凄い細部まで作り上げた物って工芸に近い物だと思うんですよ。工芸とかグラフィックとか綺麗に刷ることって取り繕う気がして、アートってもっと丸裸な気がして。だから全然違うんですよ、グラフィックアートとアートって。

-では工芸もアートじゃないということですね

工芸もアートじゃないです。工芸は工芸です。クラフト界もクラフト界で。アートって凄い狭いところしかないと思ってて。そこへのコンプレックスがあるような憧れがあるような状態でずっとやってるんですけどデザインになるともっと簡易的になる気がするんですよ。消費的というか。アートって本当は消費されない物なんだなと思いながら草間彌生が携帯をやってたりすると「なんなのかな?」と思っちゃうんですよ。アートって消費とは遠いところにいる気がして消費であって欲しくないと思ってて。だからファッションやると量産なんで消費なんですよ。そこに凄い矛盾を抱えててそれが本当に嫌で2年前くらいに辞めようといつも言ってて。「こんな気持ちで洋服を作ってたら失礼だから私辞める」とずっと言ってて。「でも一度始めたものは辞められない」とずっと言われてて。社会的責任が出来てきちゃうとしょうがないじゃないですか。ブランドが立ち上がってお客さんも来てくれると、自分がさじ投げるといけないので。そしたらここもちゃんとやらなきゃいけないしアートもちゃんとやらなきゃいけないし。でもやっぱりそこには矛盾があって消費じゃんとか。結局一点一点自分で洋服作れるならいいけど作れないし工場任せになったり、パターンはパターン任せになったり。本当は私パターンまで引きたいんですよ。でもそれはパタンナーと言い合いをして良いラインを引いてもらうしかないんですよ。だから妥協しないで「ここはこう思う」ってちょっとしたことも全部言って直してもらおうと思っていて。デザイナーで入れるならそれをするしかないと思って。工場も工場に言えばいいし縫製がどうとか。だから一点物みたいに洋服を作れればいいと思って。でもやっぱり30型とか作っちゃうとそうもいかない洋服も出てきちゃってやっぱり1シーズンで1着くらいなんですよ。自分が凄く気に入ってる洋服って。でもそれはそれでいいのかなと思うんですよね。ファッションフォトとかほんと手が回らなくて。全部作りたいんですよ。小道具みたいなやつも。展示と重なっちゃうと何を優先していいのかほんとわからなくなって、でもやっぱり展覧会を優先するべきだと思って。どれも手を抜くわけにはいかないし どれも全部自分の名前が出てるって事が辛いですよね。いつの間にこんなになっちゃったんだろうって最近思っています。楽しいんですけどね。
-ファッション(bedsidedrama)にはアート的要素は入ってないんですか

入っていますね。

-でも消費であってアートじゃないんですよね

アートじゃないですね。アート的な脳みそを使ってそこで最小限ですね。発想はアートだと思っています。でも出てきた物はアートじゃない、ファッションです。だからわたしwrittenafterwads凄いなと思って、まんまやっちゃってるんで。writtenafterwardsが一番怖いです。

-怖いとはどういうことですか

私はアーティストだって言ってファッションやってるのにファッションをやってると思ってて、でもwrittenafterwardsは writtenafterwardsとしてやってると思うんですよね。私でもアートならwrittenafterewardsに負けないと思うんですけどファッションではぼろ負けだと思ってて、そこが大好きだけど大嫌いです。本当にそう思います。なんか私だってアートなら負けないよっていつも思います。

-でも元々のフィールドが違いますよね

でも私もファッションをやってるならいけないんですよ本当は。でもそれには時間が足りなさ過ぎてどんなに働いても、人の倍働いても全然追いつかないんですよ。分身することも出来ないし。言い訳になっちゃうしやるしかないんですけど。「なんだよー」ってかんじです。

-writtenafterwardsはなぜ凄いと思うんですか

ファッション的にはわからないんですけど「あいつ本気だ」って思うんですよ。展示会だったのでファッションショーは見れなかったんですけど。

-ショーを見たらその気持ちはもっと大きくなるかもしれませんね

そうだと思います。だから嫌なんです。展示会は見ましたけど。でもその前のプリンス(プリンス、プリンス09S/S)もやばいと思ってて。見てないんですけど話聞いただけで凄い鳥肌たって駄目だと思ってそこでまた洋服やるの辞めようと思ったんですよ。山縣さんのことを思うといつも洋服辞めたくなります。本当に。本当に辞めたくなる。本当に嫌だとしか言いようが無いですね。

-writtenafterwards以外にそう思うデザイナーはいますか

一時期Undercoverもそう思ってたけど今は思わないですね。writtenafterwardsは着たくないけど凄い。他のブランドは着たいんですよどうせ、どうせ身に着けたいんです。writtenafterwardsは全然着たくない。でも凄い。なんか妖怪というか怪獣みたい。化け物だと思っていますよ。化け物ですあの人。だからあんまり話したくないんだけど話したいんですよ。なんか色んなの読むと感情が(山縣さんと)ちょっと似てるんですよ。だからアートだったら負けないのにって。同じ水準でアートとファッションの話をしたいです。私はアートの話をするし山縣さんはファッションの話をする。でも私がちょっとファッションをやっちゃってるからそうもいかないのが嫌なんですよ。なんか商売のことがかかわってくるから余計嫌なんですよ。私雇われてるから利益を出さないと悪いなと思っちゃって。本当は考えなくていいんだろうけど山縣さん多分考えてないじゃないですか。でも結局洋服が好きだからやりたいことがいっぱいあるんですよ。

多分私がアーティストで洋服を作るならそういう風(1から100まで全て自分で)にならなければいけないと思ってるんですけど。でも今給料の軸というか、しょうがないですよねと思って。去年の12月に私辞めるって言ったんですよ。私の人生で削るところは洋服しかないって思って。私作品作るの忙しすぎるし、 本当に真剣になることしかやりたくないから一生に一回の人生だったら洋服作るの辞めたいと思って。言ったんだけど辞めれなかったんですよね。「さじ投げるな」って。確かに二人しかいない事務所なんで私が辞められたら困るのもわかる。でも私は困らせたくないから相談してるんだけど。で事務所に行く日を週3日にしたんですよ。後は製作にしてでも結局家で洋服の絵とか柄とか描くんであんまり意味が無くてまたアンバランスになってきたなーっ思ってるんですけど。やっぱり100%自分がやりたい洋服はやれないと思ってて、全部絵型とか描いて見せるんですけどこれは駄目だみたいな。でも絵型が駄目だったら想像力が私と違う想像力だからその服は駄目に見えるかもしれないけど私は凄い良い想像が出来てるのかもしれないのにそれが駄目だとなったらその服が作れないじゃないですか。でも私が自分でお金出してるわけじゃないからやっぱり作れないじゃないですか。でもそんなに作りたいなら自分ブランドを立ち上げてやればいいじゃんてなるんだけどそうすると展覧会とか出来ないんですよ完全に。出荷やら何やらとか展示会がどうこうとかそういう枠にはまったことをするのが嫌なんです。展示会が何のシーズンにありますよとか。そうじゃないじゃんと思ってクリエイションて本来。なにそのA/W、S/Sみたいな。そういうの凄い変と思って。生地屋の生地背景がどうこうとか知らないよそんなのって。なに「生地の生産遅れてるとかあそこの店が潰れたとかあそこは支払いが悪い」とかどうでもいいんですよ。ファッション界の人と飲むの嫌なんですよ。儲かった儲かんない。売れない売れる。あれが流行ってる、これが流行ってる。どうでもいいんですよ。そんなの私洋服買えばいいから。本当に買い物が好きなんでいいんですよそういうの。買えば。売ってるんで。誰かやってるんで。どうしてもやってくれない物ってやっぱりアートしかなくて私が思いついたものを誰かが作ってくれるなら私は作らないですよ。でも誰も作ってくれないからそれに凄い面白い物を思いついちゃってるからそれを作らないとみんな見れないし私も見れないし。だから私が一番やらなきゃいけないのはアートなんですよ。

続く

TWIN PEAKS

Comments are closed.