Interview

Midori Kambara 前篇

北海道、札幌を拠点に活動するMidorium Design代表の蒲原みどり氏。北海道の雄大な自然の中で遊んだ子供の時の記憶から生まれる自然や動物のイラストでファッションビルや映画祭などの広告や個人名義での個展など幅広く活躍する彼女に話を聞いた。

-小さい頃から絵は描かれていたんですか

そう。紙とペンを選んだのには理由があって、昔は遊ぶといってもTVゲームとか無いから、買ってもらってないし、だから記憶のある頃からは白い紙がチラシの裏しかなかったんです。私エスキス(下書き)しないんですよ。だから全部油性ペンで直接描くんですよ。広告作る時も、絵を描く時も。それがたまらなく気持ち良いんですね。その理由も考えたんですよ。新聞と一緒に入ってくるチラシでまず白い裏のチラシを探すことから始まる。で、鉛筆だと絶対綺麗に描けない、筆圧かけないといけないし、かけるとチラシがへこんじゃうし。でも安いチラシってつるつるの加工してるからそれに油性ペンで描くと綺麗に描けるんですよ。白い落書き帳なんて贅沢だと思ってたから昔は。

-昔はどんなものを描いていたんですか

何でも描いてた、似顔絵も描くし、動物も描くし、漫画家に憧れて漫画を描いてた時期もあるし。

-漫画家に憧れていたんですか

なりたかったです。勝手に漫画の続き描けるんですよ私。ナウシカとか。何でも描けますね。

-に(札幌の)大学に行っていたそうですが卒業した後、東京に出ようとは思いませんでしたか

思いました。洋服好きだし。(専攻だった)油絵描いてても食べれないっていうことはわかったので、服屋さんに就職とか色々考えました。ただ東京に行こうと思った時に色んな人からの情報で「引越しが出来るだけの資金があるのか?」とか「家賃は高いぞ。」とかたくさん言われて無理と思って。で(札幌は)実家じゃないからとにかく働かなきゃいけない。働く為に給料を得なくちゃいけない。どうするかということを考えて小さい広告の会社に入りました。油絵科だったからMac使えないけどとりあえずMac買っちゃえと思ってMacは買いました。

-広告の会社に就職した時は何も出来なかったということですか

出来ないですね。だけどセンスという感覚的な物はわかると思ったからあとでいっぱい勉強すればいつか広告出来るかなって。ただ絵では食べていけない北海道だからちょっと違くても少しでも近い広告の業界に入ればお給料が貰えるし、何か出来るのかなって思いました。

-他の広告デザインをされている方とプロセスは同じなのですか

謎です。他の人は知らないので。本当に小さいところで何でもやんなきゃいけないところで私イラストなんて描いてなかったから。その時は広告全然タッチ出来なくて旅行のチラシばかり作っていました。

-それって絵描けないですよね

絵描けなくてもいつか広告やって偉くなったら自分の絵を出しても怒られないのかなと思ったんですよね。

-最近は油絵を描かないんですか

もう描かないですね。油絵を描くとしても筆で何か書くという方向ではなくてコラージュが多かったんですね。もしやるとすれば色んな物をコラージュしたり、 ペンで描いたりしつつもジェルみたいな物をかけたり、剥がしたり、削ったりとか、そういうことをするかもしれないですね。

-自分で会社を始めたのはいつですか

5年前ですね。(始めた理由は)社長と喧嘩をして首を切られたから・・・・。(実家の)室蘭にも帰りたくなかったし。だからまたどうすれば家賃を払えるか、東京に行くとかそんな余裕も無い。まずは家賃を払わないと札幌にも居られない。私会社のお給料少ないのに全部お洋服に使っていたから貯金なんか無かったんです。それで持っていたお洋服を売って足しにしてガス代払ったりとか、電気代払ったりとか。そしたらその時にちょっと親しくしていた個人でお洋服屋やっている人とか、御飯屋さんやっている人とかが「チラシ作る?」とか「ショップカード作ってくれる?」とか言ってくれて。

-個人での最初の仕事ってなんだったんですか

イラストで簡単なHPだったかな。そのクライアントさんは今も変わらず依頼してくれてFortunaさんというお店なんですけど。私がたまたまカフェでライブドローイングをした作品があって、それを見てHPを作れるとか絵を描けるとか何にも言ってないのに私のライブドロー イングの絵を見ただけで「あなたお願い」って言ってくれたんです。その生まれて初めてやったライブドローイングの絵はDA:TEというお店に今でもあるんです。

-絵を描く時には何か考えているんですか

何にも考えていないかな。ただその理由、意味を持たないと単に好きだからっていう絵とは違うわけであって絵を描くという意味というのはとっても私の中で重要だから。

-その絵を描く意味とはなんですか

自分の存在確認みたいな感じかな。それしか出来ないから。それで絵を描いて仕事にしているし、絵が無くなっちゃったら多分何にも残らなくなっちゃう気がする。だから例えば仕上がりをこうする為に前もって計画を立てて、エスキスもスタディも積み重ねて何遍も何遍もやってきました。最後にペン入れをして仕上げというそういうことはしない。けどもただそこに潜ってあがる感覚は一緒でそれをなるべく考えないように自分もスリルを味わいながら何が出来るのかなとかやるのが多いですね。

-ではどこからそのアイデアは出てくるのでしょう

それが全部記憶なんですよ。小さい時の遊んだとをペンで描くとか。実家からすぐ行けば山だったから一人で山に行ったし影絵で遊んだり、草の陰で動物が見えたりとか全部そういう記憶から来ていますね。

-じゃみどりさんの描く絵は北海道で生まれ育ったことが大きく影響しているのですか

大きいかもしれません。

-描く絵は自然や動物が多いですよね

そうですね。「可愛い」とか「こういうの好き」とかいう風に描くのではなくて、自分もそこのお話を作って、自分もそこに登場していてその1シーンが絵になってる気がするんですよね。だから最初からここに何というのはあまり考えないかな。

-1シーンずつを繋げることで絵本になりそうな気がするんですが、絵本を描きたいとは思いませんか

作ってみたい絵本。してみたい。絵を描いてて必ずそういうお話を想像して描いているから(2009年9月に実現)。

-では描いた絵の続きを描くことも出来ますか

その時に終わっちゃってるから出来るかなー?

-広告のデザインを考える時も絵を描くのと同じやり方ですか

同じやり方なんです。それで多分私に依頼する代理店の人とか勇気がいると思うんですけども、本当にありがたいことに全部一発でOKもらってるから周りの人のおかげなんです。

-広告のデザインは制約がたくさんあると思うんですが

あります。それが本当に有難いことに今は「好きに、妄想して作ってください」と言ってくれるんですよね。以前に「北海道デザインスイーツ」というお菓子のお店が出来たことがあって、そのロゴを考えた時に北海道で採れた野菜、果物を使って作るお菓子だから文字も全部草木とかで出来てたら良いなと思ってそれでデザインしたんです。

続く

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