Interview

Taro Horiuchi 1/2


2010S/Sで本格的デビューを飾った注目のブランドTaro Horiuchi。初のコレクションは何を考えデザインされたのか。また彼のこれからの展望とは。デザイナーの堀内太郎氏に再び話を聞いた

‐2010S/Sのコンセプトを教えてください

信仰と自然と時間、3つのキーワードを軸に制作しました。今回のグラフィックは、0から9の数字を手で繰り返し書いているのですが、そのように淡々と繰り返すことの集約が美しさを生む。そしてコレクションとしては、グレーという単調な色のみを使いたいと思い、そこで自分に何が出来るのかというのを試しました。

‐展示会をやってみてバイヤー、プレスからの反応はどうでしたか

プレスの反応は良かったのですが、バイヤーには値段が高いとは言われました。クオリティとデザインの面に関しては凄く良いけれど、値段の部分は指摘されました。でもそこを曲げる気は無いですし、(値段を)落とす意味も無いのかなと思います。

‐これからもそこは変える気はないということですね

今の所はないです。そこで勝負して何とかしたい、切り開いていけたら良い、そこで勝ちたいですね。

‐今回のコレクションで一番大事にした部分はどこですか

派手にしないこと。インパクト勝負にはしたくなかったというのがあったので、凄く静かな中で何かできたらと考えました。

‐物凄く綺麗な物を作っているのはわかるけど派手さが無い分、着て始めてわかる部分が多かったのでモデルがいればもっと良かったのかなと感じました

服は着てみなくてはわからない、ある意味それで良いのかなと思います。来シーズンもキャットウォークはやりませんが、アイテムのサイドも見せられるような、着た状態で動いた物も見られるような形のビデオは作るつもりですし、インスタレーションではモデルも一人か二人は立たせたいと思います。

‐次も今回と同じように広いスペースで見せるという形になるのでしょうか

ショー形式よりはインスタレーションの方が性にあっていると思います。全体的な物を見せながら空間と服と音と匂いで見せるという。

‐今回の見せ方で工夫した部分はどこですか

ショーでは見せられない見せ方を考えた時に、インスタレーション形式で空間で見せる。ビデオがあったり、音があったり、ユーカリの葉を踏んだ時の感覚など、空間を使ったシステムを作って何か出来ないか、全体で服のイメージを伝えたいと思いました。服自体がシンプルなので、そこにエクストラな要素や価値を生み出すということに重点を置いたときに、自分はそういった見せ方が良いのかなと感じるので。この服でショーをやるのは難しいと思いますし。理想的には、ショーもやりつつインスタレーションもやるという形が出来れば良いのですが。

‐今のマーケットにおいての自分の立ち位置はどう考えていますか

今までのドメスティックからしたら若手としても、ある程度売れているブランドと比べても高いかもしれませんが、そういったブランドとクチュールとの中間なのかなと思います。その中でどういった方法を取っていくのかは難しいと思いますが。やはり見られる場所を作るというのが一番早いのかなと思いますが、そこでお店を作るのは大変ですし、ショールームのようなものが作れたらなと思うのですが。

‐シーズン毎というわけではなくですか

一応シーズン毎に目安やコンセプトはあってもいいと思うのですが、販売に関しての方法は卸だけじゃないのかなとも思います。例えば、お客様が予約制でアトリエにいらっしゃって、欲しい物をオーダーして2ヶ月後に納品でもいいと思います。ある程度クオリティの高い物は、急いで欲しい物でも無かったりすると思うので、そういうところに対応出来たらなと思います。今のファッションは一発勝負というか、お店の戦略なども含め、冷静にならないうちに買わせるような、ある意味不意打ちみたいな部分があると思います。そうではないところで戦いたいと思っています。「待ってでも欲しい」と思っていただける物を作りたいですし。

‐今回実際オーダーしてくれた層について教えてください

2つに分かれていて、ひとつは40~50代の富裕層というか、ある程度、服にお金をかける余裕がある層、もうひとつはコンセプト自体に共感して買いたいと思っているクリエイター層です。

‐最初から自分が狙っていた層と合致していますか

それは、どちらかといえばクリエイター層というか、コンセプトに共感してくれる方に買っていただけたらなとは思っていたのですが、必ずしもそういう層がお金を持っているわけではないので、その2つを大切に良いバランスを取っていけたら一番理想かなと思います。そして、やはり富裕層の方は良い素材を知っていると思いますし、触るだけでその価値がわかる知識をお持ちなので、重要だと思います。

‐ただそういった層(40,50代)に対しては少し線が細すぎたのかなとも感じました

そこは重要な反省点ではあります。でも細い物だけに興味があるわけではないので、その中で次は面白い物が出来たらと思っています。大きくした中でも綺麗なライン、美しいラインを作っていけると思っています。

‐今回ラインが細かったのはその細さが自分が一番美しいと感じるラインだったからですか

というよりは、やりたかった世界観に近かったという感じです。でもそれが必ずしも限定されるものではありません。勿論自分のやりたい世界観には幅がありその中からチョイスしたので、そこをずらすことは可能かなと思います。機能という意味では、動きやすさというよりは通気性とかの方を考えてしまっていたので、動きやすさという部分では足りなかったと考えています。

続く

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