Interview

JUNYA SUZUKI 中編

“僕の美観の原点は非常に限定して言えばドラゴンボールに有ると思います”

‐何の為にデザインしているんですか

今までは自分の為だったんですけど状況が変わって僕が市場性を持たせたいと思うようになったんです。そうなった時にお店に(商品を)出すだけでは簡単に言うと世界が伝えられない。思想的に広がっていかない。それを場が出来ないと呼んでいいのかはわからないんですけど。This is Fashionというのは消費者、ファンとの直接的な距離感を大事にしているので僕の洋服が果たして社会性があるのかというのを消費者に直接ぶつけることによって確かめたいんです。

‐自分の為に服を作っていたとはどういうことだったんでしょうか

言葉を使ってのコミュニケーションで伝えられない事が多いから、自分というものを理解してもらうために服というカタチで表現しているのかもしれない、と感 じました。
自分の存在を示すために服を作っているという意味で自分のために服をつくっていると言ったのだと思います。

‐This is Fashionに参加することはプラスの面も勿論たくさんあると思いますが彼らと同じようなことをする、一緒に参加する、他の人を巻き込むことによって今 より色んな面で困難な状況になることも十分に考えられます。それでも一緒にやりたいと思いますか

それでも憧れますね。自分がデザイン勉強していてわかるんですけど彼らは本当にクリエイションということを考えて活動していてそれを実際に社会と対話しながらやっているから惹かれるんです。自分もやってみたいですし。独りよがりのデザインがつまらなくなってきたんですよね。

‐それはなぜそう思ったんですか、海外に行ったことによってそう感じたのですか

そうではないです。人と話したいというか虚しくなったところがあったんです。自分一人の世界観なんて凄い浅はかなものでやりたいデザインだけやっても行き詰るところがある。社会と対話して刺激をもらうことによってデザインが進歩すると思ったのでそれを積極的にやっていきたいと思ったんです。だから着やすい服を作るというわけではないんですけど。人の中にある無意識の部分に触れるようなデザインをしたいんです。生活の中にあるんですがファッションの中で形になっていないものをファッションとして形にする。そういう形でデザインをやっていきたいなって。新作は4月位にはCandyで発表出来ると思います。

‐これからもCandyでは続けたいと思っていますか

Candyではやっていきたいですね。可能性があると思うんです。もっとアニメ的な感覚を消費者に結び付ける形でデザインを出して行った時にアニメファッションの共通の感覚を持っている人があそこには来ていると思うんですよね。そういう人達を狙って行きたいと思うんです。その場としてCandyはかなり最高なんじゃないかなって思っています。

‐次の展示ではコンセプトやシーズンテーマを明確にし今までの洋服とは表面的にも内面的にも変わるということでしょうか

そうですね。結構変わると思います。それでも僕の中にある芯の部分は変わらないと思いますしその中で自分がどう進化していけるのかというのを楽しみたいで すね。

-Junya Suzukiのコンセプトを教えてください

男性的な強さと、キャラクター的なポップさ、をキーワードにデザインをしています。
僕の美観の原点は非常に限定して言えばドラゴンボールに有ると思います。横浜の一般的な家庭で育った僕にとって、絵画、文学、自然etcに触れる機会は多 くなく、そんな中、マンガ、アニメやテレビゲームは唯一日常的に触れてきた芸術でした。幼少期、ドラゴンボールの格好良さは絶対的でした。何がどう格好良いのかは説明が難しいですが、ドラゴンボールの美観は、ポップさと強さを両方持っている点に特徴が有るかと思います。作者の鳥山明は元々アラレちゃんなど のコミカルなギャグマンガを描いてきて、その絵のタッチでバトルマンガのドラゴンボールを描きました。そこにポップさと強さの共存の理由が有るのでしょ う。その感覚をどうデザインに利用しているかというと、例えば、ダウンというフカフカモコモコした素材を用いての、力強い大胆な立体感の服。ポップ+強 さ、をダウン+力強い立体、で表現しています。一連のダウンを使った服ですが、まるでホイポイカプセルから出てきそうだとは感じませんか?

ただ、アニメをテーマにしたデザインは最近では日本、世界共に多く、行き詰まりを感じています。同年代のデザイナーはやはり僕と同様アニメに強い影響を受けていますから当然な流れなのかとは思います。特にエヴァンゲリオンなどは象徴的でテーマに挙げられる事が今でも多い。僕もその一人ですが。最近リメイク こそされましたがエヴァは10年前の作品。アニメ界に目を向けてみると、10年前から現在まで、エヴァ→萌え→ニコニコ動画、という大きなムーブメントの 移行があります。新しい可能性を模索するために、今僕はニコ動的創造力に注目しています。ニコ動を見た事有る方ならわかると思いますが、パクって、パクっ て、パクりまくって、その結果何か奇妙な今までに無いものが生まれている。創造という点では非常に安直なやり方なのかもしれませんが、好きな情報が好きな だけ手に入る時代にとって自分を見つめ本当のオリジナリティを生むのは非常に難しく、何が好きか、何を引用するのかという情報が個性を作っているように見 えます。他の例では、mixiの個人ページには参加コミュニティの一覧が有り、その人がどういう人間なのかをその覧を見て判断する。また、他人にこう思わ れたい、という思惑の元に参加コミュニティを決めて自分作りをする。コンテンツが、作品として鑑賞されるものでは無く、二次的に使用されるものになっている。「オリジナルの引用によるオリジナル」というこの非常にエネルギーの有る動向に注目し、そこから何か新しい服のデザインを引き出せたらと今僕は思って います。アニメは腺と色で表現されたものですが、今僕が言った動向はコミュニケーションの形ですので、デザインをする上で上手くいくかはわかりませんが… 何か有ると思っています。
余談ですがアレキサンダーワンが評価されているのは、そういった想像力を駆使したデザインをしているからだと僕は勝手に思っています。彼のアトリエには ファッション誌の切り抜きが壁中いっぱいに羅列されているそうです。
新しいデザインをするために、歴史を参照する必要はもう無いのかもしれません。歴史を参照した一流メゾンのデザインを参照すればそれで充分なのかもしれま せん。それは誠実なやり方ではないかもしれませんが、現代的なやり方だと思います。

-どのようにデザインされるのですか

「発見」する事が最もデザインで大事だと思っています。人間の脳は、今まで見てきた物しか想像できないようにできています。ではどうやって今までに無いファッションを想像するのか。そのために僕は、予想外の素晴らしい事態を「発見」する、という方法をとっています。例えば、光沢の有るポリウレタンの生地 を使おうと思っていて、それで何ができるか色々試していたときの話です。色々試行錯誤したのでポリウレタンの生地がシワクチャになったので、当て布をして アイロンをかけました。すると、熱でポリウレタンの生地が溶けて当て布とくっついてしまったんです。しまった!と思って当て布を剥がしてみると、ポリウレ タンの生地に当て布の毛羽立ちがくっついていて、良い感じの風合いが出ていました。化学繊維独特の光沢がありながら風合いの有る生地ができ上がりました。 こういった人間の脳では考えられない予想外の事態が人を感動させると思います。予想外を「発見」するために様々な実験をし、その「発見」を元に服をデザイ ンします。「立体感」と「素材感」において、現在の僕は「発見」をするための方法を持っていて、それを現代のファッションとしてある程度うまく編集できて いる事によって評価していただいていると思います。

‐素材使いが凄く印象的でした

僕の服を説明するので素材というのは凄い重要なところでデザインする中で自分の社会的立場が強いものではないですからなかなか良い素材というのが手に入りづらいんですよね。服は素材が重要だと思っていますが、手に入らない中でどう良い素材を使うかといったら自分で素材に手を加えて質の良い素材を自分で作っていくしかない。だから岡田屋とかで高級でもない素材を買ってきて、ひと手間加えて良い素材が出来てその素材からデザインを発展させていくという形が多いですね。

続く

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