Interview

studio note 2

“出来れば良いというよりはクオリティが重要ではないという感じですね。それを作ることの方が重要で”

‐オランダの学校と日本の学校との大きな違いはなんだと思いますか

授業の進め方ですかね。最初に何を作れとか言われないので。日本だったら「椅子作ってこい」とか言われると思うんですけど。

‐なんでもいいから作れということですか

そうではなくて(最初は)何になるかわからないんですよ。「旅行しろ」って言われて。写真撮って。旅行する前に家がある、旅行した先に家があるとしてそれ を経験したことによってそこに対してのプロダクトが何が良いかって考えるという感じですね。

‐なんでも良いわけですか

そうですね。小物作る人もいれば大きい物を作る人もいるし。他の課題では哲学書を読んで椅子を作れという課題もありましたね。だから出来あがるものが奇抜 なんですよ。僕はチーズで椅子を作りましたね。なんでそんな風になったのか思い出せないですけど臭かったですね。

‐プロダクト系だけでなくオランダ出身のファッションデザイナーも最近凄く多いんですよ。

陶器で服を作っている人いたような気がします。やっぱり奇抜なんですか?

‐コンセプチュアルな人が多いですね、プロダクトもそうなんですか

奇抜ですよ、国が小さいからかな。でもオランダってクオリティをあまり求めないんですよね。

‐出来れば良いという感覚ですか

出来れば良いというよりはクオリティが重要ではないという感じですね。それを作ることの方が重要ですね。テープフィニッシュもありますし。日本ではちょっ と出来ないようなことも全然ありますね。

‐日本は物として完成していないと駄目だしクオリティも求められますよね、でも向こうは出来た物が面白ければそれでいいみたいな感覚はありますよね

本当にそうなんですよ。あとみんな喋りがうまいんです。何も持ってきていないのに喋りで誤魔化すとかありますし。

‐学生時代はどこに住まれていたんですか

学生寮みたいなものがあったのでそこに住んでいました。学費が年間30万円くらいで家賃が5万円くらいでした。

‐インターン時代の話を聞かせてもらえますか

リチャードハッテンのところにいたんです。オランダではみんな大きいアトリエ持ってるんですよね。仕事はきっかり6時に終わるんです。終わった後のことを 常に考えていて。家も凄くしっかりしていて(働く)時間は短いけど日本人より(給料を)貰っているんですよね。ということはわかっている人とか国がバック アップしているんです。そういう制度があるということが羨ましいですよね。日本はそういうサポートがあまりないので。

‐インターンではコミュニケーションを取らなくても大丈夫だったんですか

取りますけど一回「これやって」と言われたら結構時間かかる作業が多いので集中してやるので。「明日プレゼンだから」って何も聞かされてないのに突然やら されることも多かったですね。

‐インターンは住み込みで仕事をしていたそうですね

住み込みで行ってると言っても倉庫なんです。海沿いで鉄の大きなドアなんですけどそこに風が当たって音が「ガタガタガタ‐」って倉庫中に鳴っていて。怖く て最初のうちは寝れなかったですね。

‐逆に制作意欲がわいたりしなかったんですか

わかないですよ。海外で倉庫住んでガタガタ鳴ったら泥棒かなと思うじゃないですか。凄い怖かったですよ。

‐なんでそんな場所に住むことになったんですか

単純にお金が無かったんです。

‐先生であるハイスバッカ‐からの影響は大きいんですか

大きいですね。ドローグデザイン作った人なんですけどジュエリーで有名な人なんです。作品の好き嫌いもはっきりしていて。興味ない物だとプレゼン中でも聞 いてないですからね。

‐寺山さんの作品は気に入ってもらえたんですか

気に入ってもらえましたね。気に入ってもらえなかった時もありましたけど。

‐寺山さんは良い生徒だったんでしょうか

良い生徒ではなかったと思います。学校はちゃんと行っていましたけど課題によっては先生が合わないと嫌で嫌で。きっちりと終わらせますけどアイデアがいつ 出てくるのかわからないのでアイデア出てない時は何も見せたくないので授業行っても何も喋らず怒られていましたね。最終的には出すんですけど。

‐でもその過程が重要視されるんですよね。

そうなんですよ。だから今は過程も大事にしていますね。

‐校長先生のリー・エーデルコート(トレンドユニオン、今年の色を決める人)には影響は受けましたか

いやー受けてないですね。審査の時しか会ってないので。審査の時になると行列で来るからわかるんですけどそれまでは誰が校長なのかもわからなかったです ね。

‐Pick your lightで校長賞を受賞されたんですよね

そうです。Carrot賞ですね。ニンジンをもらいましたよ。

‐その作品について説明してもらっていいですか

電球1個1個たくさん置いてあって触るとそこだけ電気が点くようになっているんですよね。自分でセッティングしたんですけど全部が剥き出しだったんです よ。だから電気が違うところ走っちゃっててブレーカーが何回も落ちてしまってそれで一回感電しましたね。向こうって電圧が強いんで危険なんですよ。迷惑が られてもうやるなと言われて。

‐その作品は先生に日本的な考えかたの作品と言われたそうですね

布張ったら言われたんですよ。剥き出しはどうかなと思って布を張った方が綺麗になると思ったので張ったんですけど「剥き出しの方がいいじゃん」って言われ て。布を1枚張って見えなくさせるという構造が日本的だって言われたんですよね。

‐見えないということが日本的なのでしょうか

そうではなくて見た目的に綺麗にしようとするのが日本的だということだと思うんです。

‐自分は日本的考え方をしていたと思いますか

そんなイメージは一切なかったんですけど。でも海外に行くと「俺日本人なんだ」って思いますよね。

‐それはどういう時に感じますか

オランダ人と作ってるもの自体が全然違いますよね。考え方もそうですし。

‐みんなプレゼンがうまいなというのは凄く感じましたね

そこが凄く重要視されるんですよね。自分は何をしたいかとか。文字をあまり使わずに簡潔にわかりやすく伝えようってなりました。

‐オランダの学校を卒業して日本に帰って来られたわけですよね

僕だけかもしれないんですけど向こう(海外)行ってる時って日本帰ったらなんとかなるって思っていませんでしたか?これだけ勉強しているからって。

‐思っていましたね

思っていましたよね。長期間いると脳がやられているんですよね。だから帰ってきたら仕事あるだろうと思ってたのに本当に無くて・・・当たり前なんですけ ど。そんな時に岡島要さんの仕事があるということで東京に出てきたんです。

続く

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