Interview

studio note 3

“作れない物に興味があって。僕はゼロから何かを作り出すこと出来ないんです”

‐寺山さんの作品を見てて思うんですが自然や植物を使った作品が多いですよね

そうなんですよ。作れない物に興味があって。僕はゼロから何かを作り出すこと出来ないんです。イラストも凄く苦手ですし。時計の絵が欲しかったら写真を 持ってきてイラストレーターでなぞるとか。だからゼロから時計を作ったりとかは無いんです。

‐典型的なアーティストタイプではないと

違いますね。植物ってその形があるので。

‐特別植物が好きということはないんですか

植物好きですよ。昔から好きなんです。

‐それは生まれ育った街の影響もあると思いますか

田舎だからというのもあるんじゃないですかね。昔から山に基地を作ったりとか、川沿い歩いたりとかしていたのでそこが原点になっていると思いますよ。

‐宇都宮市でも駅の近くではないんですか

近くないですね。車で20分くらいなので周りが畑なんです。ザリガニをバケツ一杯に取ったりして遊んでいました。

‐スタジオに来て驚いたんですがこんなに狭い環境で製作されているんですね

そうなんですよ。全部ここなんです。1ルームで。狭いから大変なんですよ。大きい物作る時とか。友達のうちを借りてやったりしているんですけどね。ギャラ リーも借りたいと思うんですけどまだ無理ですね。

‐作品制作にお金もかかりますからね

そうですね。

‐代表作でもある定規を作るまでにはどれくらいの製作期間を要したんですか

プロトタイプから半年くらいですね。何度もやり直したり、まず作ってくれるところがなくて。僕が手作業でここでやってアクリル流して出来あがるんですけ ど。カットと磨きだけで他の工程は全部ここでやっています。まず定規に適した白いカスミソウを探すところから始まるんです。だからそこら辺のカスミソウを 買ってきてもはまらないんですよ。なぜかと言ったらジグ(工作物を固定する道具)分は削ってしまうので。茎の割れ目から花までの距離が短いと駄目ですし。 4,5から5センチくらいの長い奴を探さなきゃいけないんですよね。

‐凄く面倒なんですね

凄く手間がかかるんです。だからすぐには出来ないんですよね。花屋さんを周ってみて、買ってきて自分で赤く染めなければいけないですし。

‐カスミソウじゃないと駄目なんですか

他のものだと難しいんですよね。入れた時に綺麗に見えないとか。花らしい花が良かったので小さいものだとカスミソウがベストだったんです。でも正直定規 作った時はそんなに好評だと思わなかったですね。作って良かったです。

‐やっぱり定規から寺山さんのことを知ってくれる人は多いんですか

そうです。あれのおかげで知ってくれる人は多いですね。一番最初に商品化したアイテムですし。

‐日本に戻ってきてから考えたんですか

完全に日本で考えた物ですね。栃木で考えてサンプルすぐに作ってHPにアップして終わろうと思ったんですけど東京に出てきたら「作った方がいい」と言われ て。最初ってどこで作っていいのかもわからないじゃないですか。だからいくらくらいになるのかもわからなくて。お金ないし。それが売れるのかもわからない し、置いてくれるのかもわからないし不安でしたね。

‐売る場所はどうやって探したんですか

人と人とが繋がりあってですね。展示会に紹介で出させてもらってそこに来た人が「扱わせてください」って言ってくれてネットショップで販売させてもらっ て、そしたらその人の知り合いが店舗を持ってる人でそこからまた紹介してもらって繋がった感じです。

‐プロダクトって良いですよね、ファッションはシーズン性を考えたら半年でその洋服は店舗から無くなってしまう。でもプロダクトだったら売れる売れ ないにしろ同じものを作り続けることは可能ですよね

そうですね。プロダクトはその点凄く楽ですね。ファッションは半年に一度コレクションを出して僕には出来ないですね。

‐花の定規と同じ系統のもので根っこの三角定規も作られていますね

三角定規はカスミソウの比ではないですね。時間かかりすぎるので量産することが出来ないんです。根っこが浮いてくるので根っこと根っこが当たっている部分 につまようじの先に瞬間接着剤をピンセットで付けて1か所ずつとめていくんです。

‐小さい作品が多いのは作業空間が狭いからなんですか

そうですね。大きいのが作れないんですよ。在庫を抱えられないですし。少し大きめのものだとドットを作る為の機械を作りました。万年筆を使って作っている んです

‐ドットの機械って最初から全部自分で作ったんですか

そうです。それはでも1週間くらいで出来ましたね。万年筆186本買ってきて削って。アクリルに穴開けてもらう以外は全部自分で作りました。

‐最近寺山さんがデザインされたiidaのアクセサリーが発表されましたがあの作品はまだ商品化されていないんですか

まだですね。商品化に向けて検討中とのことです。

‐やっぱり海山さん(micro works)がデザインしたツタの充電器が成功したのが大きかったのでしょうか

そうだと思います。

‐海山さんの作品は値段も買いやすいものが多いですし気が利いていてありそうでなかったものを求めやすい価格でといううまいですよね

そうなんです。しかも手作業を出来るだけ省いてやっていますし。

‐寺山さんの作品は逆に職人的な感じがします

作業が面倒なものばかりなんです。

‐わかりやすいものを作りたいという考えはないんですか

わかりやすいもの作りたいんですけどね。作れないみたいですね。でも最近デザインしたmass itemはわかりやすいと思います。

‐僕、この名刺ケースCLASKAで見て気になっていました

嬉しいですね。こういうものなんですよね。求められている物って。名刺ケースなら持ち運ぶイメージが出来るんですよ。だから良いんですよね。

‐大きい物となるとなかなか売れないですからね

本当は大きい物を作りたいんですよ。みんなに「小さい物が好きだね」って言われるんですけどただスペースがないだけで。

‐最近はわかりやすいもの作りへシフトしているんでしょうか

完全に分けていますね。自分の凄くやりたいことはそっちの方ではないので自分の作品を作るのは軸としてやって、もう一方では「あ、これ欲しかったんだよ な」って思ってもらえる作品も作ろうと思っています。

続く

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