Interview

LAITINEN


フィンランド人のTuomas LaitinenとAnna Laitinenの姉妹によるブランドLaitinen。2006年に出展したHyeres Festivalにてゲスト審査員として来ていたAnn Demeulemeesterの支持を受けスペシャルプライズを受賞、イタリアのファブリックの会社とのコラボレーションが実現し2007-08A/Wからコレクションをスタート。ファーストコレクションからパリのMaria Luisa や日本のMidwestなど世界各国のエッジーなセレクトショップで取り扱いが始まり注目を集める存在となった彼女たちにメールにてインタビューした。

―デザイナーになろうとしたきっかけはなんですか

姉のAnnaと私はいつもファッション関係のイメージや作品に強い関心があったんです。私達の両親も読み書きや絵画などといった創作に関わる教育に熱心で、物心ついた頃から遊び感覚で洋服もどきのようなものを作り始めました。さらに母が山のようなファッション雑誌や本を持っていて、80年代初め頃からすでにコムデギャルソンやヨウジヤマモトを着るような人だったので、影響は確実に受けてると思います。十代の頃、私は高校卒業後ファッション以外の道に進むということは全く考えませんでした。

―デザインにおけるインスピレーションとはなんですか

もちろん色々ありますが、結局具体的にはっきりとどこからというのはわからないようなパズルの中から膨大なリサーチを行います。その一つ一つは変わりうるものですが、中性的・ロマンス・メランコリーなどのように全てのコレクションをまとめるテーマはいつも決まっています。

―ファッションを志した経緯はなんですか

もうかれこれ16年も関わっているということで、そう考えるとちょっと怖い気もします。15歳から18歳までロンドンとパリでモデルをしていました。ちょうどその頃はラフシモンズやエディスリマンといった多くの偉大なメンズウェアのデザイナーたちが脚光を浴びていた頃でとてもいい時代でした。それから私はヘルシンキで学士号を修得し、パリでいくつかインターンを経験したあとついにロンドンのセントラル・セントマーチンズでファッションの修士課程に入ったんですが、恐らくそれが私の人生において最高かつ最悪の時代でしょう。そしてパリで少し働いた後,姉のAnnaとコレクションを始めたんです。

―ブランドコンセプトとシーズンのテーマはコレクションイメージを表現するにあたり重要だと感じますか。またどのように毎回のテーマを決めますか

コンセプトやテーマというよりも、私はデザイナー自身が本当の自分でいることが重要だと思います。ブランドは何かを伝えるものであり、それは心からのものであるべきです。もちろん毎シーズン何か面白いことはありますが、私達はそれぞれのコレクションが以前のものより進化していて、それが偽りの無いフィーリングやものであるべきだと考えています。

―他とは違うあなた方のスタイルの特徴を教えてください

おそらく多くのデザイナーは全体の見た目を非常に気にしていると思います。彼らはインパクトのあるショーをしたがりますが、デザインよりスタイリングのこととなるとしばしば商品であることを忘れます。私達は他のデザイナーと比べて非常に商品価値というものに重点を置いています。私達のメッセージは最終的にとても入り組んでいるので、できるだけすべての完成度が高くないといけません。スタイルは私達自身の着こなしのように、中性的・メランコリックで、少しダークだけれどロマンチック。今日の多くのデザイナーがひとつの特色であるのに対し、私達は少なくともよりミステリアスで複数の影響による層を成した作品であるという捉え方をしたいと思っています。

―ファッションデザインを自己表現だと感じますか

もちろんある程度は自己表現で、他社に対しメッセージや問題提起などを発信するものです。しかし結局消費者に対して日々過ごすための機能的なものづくりを提供していくものでもあると思います。その工程においてロマンスというのはほとんどありません。

―作品作りにおいて最も重要なことはなんですか

最大の疑問は、私自身が着たいもので、それが自分達の世界観のものであること。なぜなら、もし自分のコレクションに自信を持っていなかったら誰もついてきてくれないでしょう。ならもちろん生地や縫製から全体の質まで細かくこだわっているといえます。しかしベストの仕上がりでも、そのアイテムやコレクション全体に魂が無ければ十分とはいえません。全ての商品は着る人と私達両者に何らかの感情を生み出すものであるべきです。

―これまでのデザイナー人生で何が一番のターニングポイントだと思いますか

私達のキャリアはゆっくりと進化をしてきましたが、そこがいいところだと思います。私達のコレクションは年を重ねるごとに少しずつ成長してきて、初期の頃からこれまで信じてきてくれた多くの素晴らしいバイヤーや、スタイリスト、ファッション編集者達と会えたことを本当に嬉しく思っています。もちろんイエール国際モードフェスティバルのお陰で2006年からのブランド立ち上げが実現しましたが、どれかひとつをターニングポイントと呼ぶのは非常に難しいですね。多分これからではないでしょうか。


―スカンジナビアのファッションシーンはどう思われますか、また好きなデザイナーはいますか

今日のスカンジナビアのファッションはどうもかつての個性ではなくかっこ良すぎる感じがします。世界でもごく限られた裕福な地域で、若者でさえデザイナーブランドに手が届くほどです。アンドゥムルメステールのブーツを買う彼らが本当にその良さをわかっているのかは疑問ですね。ハイファッションで自分のブランドを掲げて働いているスカンジナビアのデザイナーはそれほど多くなく、私達もストリートファッションやデニムブランドにはあまりついていっていません。北欧デザイナーだったらアン・ソフィーバックとか60・70年代のオリジナルのマリメッコやヴォッコとか好きです。海外ではいつもベルギーと日本のデザイナーのミックスが好きで、あとキャロルクリスチャンポエルやヘルムート・ラング(今のブランドでなく、彼自身)などといった非常に力強いアイテムを作るデザイナーが好きですね。最近は80年代後半~90年代前半のロメオジリやジャンポールゴルチエにも惹かれてて、正直よくわからないんです。あとヴィンテージもののユニフォームや作業着とかも集めてますね。

―デザインの中にフィンランド人としてのルーツはありますか

やはりいつもどこか簡素で控えめなところだと思います。それが家具や建築物も含め全てにおいてフィンランドのデザインの特徴でもあります。フィンランドの人はもともとプリント技術に非常に長けてると思います。初期の頃プリントは全くやるつもりがありませんでしたが、今ではコレクション全体の3分の1には模様があり、私達のトレードマークにもなりました。

―作品づくりで強い影響を受けたデザイナーや人物は

母とボーイフレンドのChris、やヴォッコ・ヌルメスニエミ、アンドゥムルメステール、モリッシーです。

―顧客について教えてください。彼らはあなたの作品に何を求めていると思いますか
私達の顧客は世代関係なく、そこが気に入っています。若い人から上は50-60代までと幅広いのでいいですね。彼らは私達の美学や感性‐僅かな闇を好み、同じような悲しい曲を聴くといったことに惹かれているんじゃないかと思います。ただもちろん普通のジャケットやセーターも好きなのかもしれません。それと同時に多くの人は何か新しいものを発見することが好きです。私達は作品に対してとやかく言わずにそのものを尊重してきましたから。あと多くの顧客が私達の作品をずっと着続けてくれることがなにより嬉しいですね。

―今後1,2年のブランドの展望を教えてください

今のまま好きなことをしていれればと。できればより多くの人達のために。

Interview & Text:Masaki Takida, Translation:Natsuka Ueno

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