Interview

VACANT 3/3


“もっとネットワークを作ってちゃんと対話をして場所同士を繋げていけたらいいなって”

―今後どういうことをやりたい、どんな企画をしたいとかありますか

やっぱり話をしたいなと思うし、聞きたいとも思うので今一番やりたいのはセミナーですね。人が来て話してその人達同士で話し合ったりとかやっぱり言葉って凄く重要で今はインターネットとかに垂れ流しだけどやっぱり肉のついた声というかそういうのを必要だと思う。なかなか展示とかで人との触れ合いって難しいと思うからそういうイベントをやることで知らない人同士が繋がってというのを目の前で見たいからそれが今は頭にある。セミナー、ワークショップみたいのをやりたいですね。

―今までで一番印象に残った企画は何ですか

それぞれに面白いからそう言われると色々浮かぶけど一番最初にやった大規模な展示大友良英さんのwelcome to records。山口情報芸術センターの助けもあって凄い大掛かりな感じで、でもやっぱりクオリティが高くて、それはno idea 主宰というよりかは大友良英さんのインスタレーションで出来あがったものだけど単純に作品として自分達も惚れ惚れしてたしあのくらいのクオリティが自分達で出来るようになればいいなという一つの目標というか目指すものにはなったのかなと思います。そこだけを目指すんじゃないけどでもあれを見せつけられたことで今後やろうという気が色々起こった、そういう意味であれは凄い良い展示だったし自分達にも良いきっかけだったなと思います。

―2009年を振り返ってどうですか

オープン前もバタバタしていたし5月1日以降もプレスが間に合わないとか時間に追われる中でやったことがないようなものを次々とやってほんとに駆け抜けたという感じです。ようやく少しずつ周りを見始めたというか、こういうところが駄目だなとか見なおせるくらいにはなってきたかなとは思います。だから去年は本当に駆け抜けた感じ。なりふり構わず。でもやっぱり去年があって今があるから凄く実りのある1年だったとは思います。

―知名度とか自分達の想定していた範囲内で色んな人に知ってもらえたと思いますか

自分は外部の情報とか全くわからないしどれだけ知名度があってどんな評価をされているのかというのは全然わからないし、あまり気にもしていないんです。もし本当に評価されたり、注目度があれば人が来てくれると思うしそれを見れば自分は充分だし、人が来なければもっと頑張ろうと思うから目の前で評価するというか人の流れを見て感じることが多い。実際人が来てくれてうれしいし単純にネットのアクセスがどんどん増えたりとかtwitterのフォロワ‐が増えるとかそんな単純なことでも人が見てくれていることを感じられるのは嬉しい。どんな注目度にしたいとか予想も無かったし目標も無かったからとりあえず自分達のやりたいことを積み重ねでやってきて今はちょっとずつ人がついてきてくれているのかなという感じです。

―1年前の今頃は今の自分の姿を想像できましたか

実際1年後どうなるとか何も考えていなかったですね。考えられなかったですし。

―今が重要だったと

そうですね。今もそうなんだけどやれることをやるだけなんですよね。1年後どうなるかなんて何も考えていないし今やれること,目の前のことだからそこさえこなせていけばまた1年後どうにかなっているのかなってくらいですね。だから具体的なビジョンとか特にないですね。目標というかもっと海外の動きを増やして海外との交流をここで生で見せれたりというのはやりたいなと思っていますけど。だから今年中には海外に行けたらなというのはありますけど、Vacant自身が具体的にこうなっていたいとかそういうのはないです。

―ロンドンに何年か住んでいましたが具体的にロンドンとの交流、またはそのような企画は考えていないんですか

今友人に頼んで日本には置いていない、現地(海外)にしかない本やフライヤー、フリーペーパーとか市場に出回らないような物をこっちに送ってもらっていて。そういうのをここで見せたり買ってもらったりというのをロンドンを最初にしてパリやオランダとか友達のいる範囲でどんどん広げてその土地の空気感をちょっとでも出せたらってプロジェクトをやっています。自分自身は逆にここに集まって来ているフライヤーを集めて海外に送ったりして。自分はロンドンの雰囲気は凄く好きであそこで色々学んだからあそこの空気を自分自身も吸いたいなって思うし。フリーペーパーとかを見ると自分自身がロンドンを想い出して懐かしむことも多いしそれを見せてロンドンってこんなところなんですよというのをもっと見せたいと思うので今はそういうプロジェクトを進めています。

―原宿を盛り上げたい気持ちはあるのですか

勿論それはありますね。ここでやるということはそういうことも含んでくるし自分が毎日来る場所が面白くなったらそれは良いなって思います。一つの活性化とは違うのかもしれないけど裏原宿というカルチャーが生まれたようにもうちょっと文化が発信されるような場所にまたなったら良いなと思う。その為にもここの地域で働いている人ともうちょっとコミュニケ‐ションをしていかなければと思っています。

―今はコミュニケーションは取れていますか

まだ全然ですね。隣の人とは話したりするけどここの地域総出でとかはなかなか難しいからやっぱり集まって来てくれる人に期待しているかな。ここにあるものというのはなかなか面白いというものがないから参入してくる人、空家とかも多いからそういうところにスッと入り込んでくる人達に期待しています。

―no ideaとして今後もっと商品を作っていこうという気持ちはあるのですか

作りますね。でもno ideaであって服のブランドというわけではない。勿論物作りとしての一環として服を作るとかはあるかもしれないけどそれで大きくブランドを立ち上げようと言うよりかは何か色んなものを作る上で服だったりとか、棚も作ったりとかとにかく色んなものを作りたいと思っています。今は空間作りをしているけど元々作る方の人間でありたいと思っているから、もっと具体的な服とか、ちょっとした冊子とかオリジナルなものはどんどんやっていきたいと思う。余裕が出てくれば。Tシャツは去年作ろうとずっと思っていたんだけどなかなか作れなかったので。

―webshopもやるそうですね

ここにしか売ってないようなものがあるので。例えばSusan Ciancioloの服とかここでしか買えない物、そういう商品があるから距離的な問題とかでここに来れないような人達にも「ここにこういうようなものを置いてあるんですよ」というのを見せれる、見せなきゃなと思ったんですよね。やっぱりここに来てくれるのが理想だけど自分たちもその人達に手を差し伸べられるわけではないし。だから距離感のある中で自分達のセレクションを手に取って見てもらえたらそれはそれでまたひとつコミュニケーションだと思うから。

―ウェブの空間で何かしようという考えは無いんですか

ウェブは入り口でしかないと思うから空間の補足的な部分でしかない。Vacantの情報であったりここに置いてあるものの情報であるだけでウェブ上で何か特化するということはあまり考えていないですね。やっぱりウェブサイトを作ったりしていても何か物足りないというかもっと手を使いたくなるんです。だからウェブに時間を割くよりはもっとオリジナル商品を作った上でそれをウェブに載せたりだとか、やっぱり情報の見せどころというところでしかないかな。中心がぶれちゃう感じがするので。

―Vacant以外でno ideaとして活動をするということは考えられますか

それも凄く考えています。やっぱりVacantに閉じこもっていたら外に出ようよみたいな感じはあります。他の場所でno ideaとして企画をしたりそういうのは凄く面白いと思う。去年はそんなことを考える暇もないというか頭もなかったけど良く考えて見ればVacantで全てやる必要はない。Vacantも防音の設備が無いとか短所はあるからそういう意味でもっと自分達のやりたいことを素直にやれる場所でやるのもいいのかなって。この箱で音が漏れるのが嫌でびびりながら演奏を聴くとかやっぱりそれってあまり健康的ではないし、そういうことを無理やりここでやるのではなく、他でやるのも全然良いと思っています。別にここの場所にそこまで固執する必要はないし逆にその方がここがフリーでいられるかなと思うし。オリジナルとか外部でのイベントというのは今年の課題ではありますね。

―今年の目標は

今まで言った以外で言うともっと場所同士を繋げたいと思う。ロンドンとかパリとかオランダとか海外も面白いけど、東京も面白いものがいっぱいあると思うし、自分でも東京が広すぎていっぱいスポットがありすぎてまだ把握出来ていない。何が起こっているのか結局わからず終わった後にあんなのやっていたんだみたいのが多い。東京だけじゃなくてもっと拡大できればいいけどまずは東京から例えば色んなライブハウス、色んなギャラリーとかとちょっとずつ繋がりを持っていってここに来たら一覧が見れると言うか、ここではこんなことをやってここではこんなことやっているんだというのを見せれるようなうまい具合なビジュアル化をしたいなと思っています。それはひとつフライヤーでもいいかなと思っていて、そのフライヤーを見やすく置くことで東京でやっていることを俯瞰できるようなものになったり。でもフライヤーを置くだけではなくてフライヤーが送られてくるところとちゃんと話をしてもっとネットワークを作って「東京全体をビジュアライズしましょうよ」みたいなことを提案してちゃんとその人と対話をして場所同士を繋げていけたらいいなーと思っています。自分自身も結局そういう情報が欲しいと思っているので。ウェブだけでもなかなか把握できないし、ここがそういう入り口になったらまたそれは良いなと思う。逆に言えば情報がありすぎる、だからこそ迷っちゃうというか、限定するわけじゃないけどウェブほど氾濫しないような感じの情報を見せられれば人間ってもうちょっとちゃんと動けるのかなって思うんですよね。

Photo:Takahito Sasaki Text:Masaki Takida

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