Interview

MIKIO SAKABE S/S 2011 2/4

「ファッションを通じてこういう色んな問題を考えて欲しいとか、ファッション自体がメッセージ発信も出来るということももう一度考えて欲しいなって思います」

―あれだけたくさんの人を呼んだのにスクリーンを使わなかったのはなぜですか

凄く考えた結果なのですが本当はぎりぎりまでスクリーンを使った方が遠くのお客さんにも見えるし宗教的なにおいもするから面白いと思っていました。だけどあそこでスクリーンを使うと逆に凄く近くで見ている人にとっては目に強く光が当たってしまう。そうするとファッションショーに支障をきたすくらいの光になってしまうということになって最後の最後まで考えた結果スクリーンを使わないことにしました。それにスクリーンを使うとCHIM↑POMの映像が更に見づらくなるというのもありました。

―その結果見えなかったと言っていたお客さんも多かったんですよね

そこは本当に申し訳なかったと思っています。半分くらいの人しか見えていなかったというのもあったし本当に今回はそこは申し訳ないことをしたと思っています。今まで呼んだ人数より全然多いというのもあったしそういう意味ではまだまだ経験不足だった。出来るだけのことをしようと思ったけどやはりスクリーンの問題だったり本番当日ギリギリで出来ないことが出てしまったりで予定していたより見えない人が出てしまったというのは今回の自分達の反省点ですね。

―何をやっていたのかわからないという声もたくさん聞かれたからせっかくあそこまでやったのにもったいないなって。雰囲気だけでも味わえてよかったのかなっていうのもあるかもしれないですけど

そうですね。一般の人に見てもらう機会をもっと増やしたいからこれを第一回としてそういう経験を重ねてもっともっと楽しめるようなものにしていきたいと思っています。実際僕が今までに呼んだのは最大でも500人~800人くらいの規模だったからその中での見せ方しか経験がなかった。だからその倍くらいの人が来た時にどうやったら楽しめるかというのはこれから考えていかないといけない課題ではありますね。
CHIM↑POMの作品に関しても煙でプロジェクターに映すというやり方自体がかなり実験的だったし入口の部分のところだったので見えづらかったかもしれません。

―プレスや関係者含めみんな立って見せるというのはお客さんに優劣つけずに見せたいという思いもあったのでしょうか

そんなに誰かを前にという意識は全くなくてもうちょっとファッションショーといういつもの楽しみとは違う楽しみ方をやりたかっただけなんです。ただ本当に年配の人が来てくれた時用に椅子は一応用意していたんです。基本イメージ的には立って見てもらうことの方が合ったという感じです。

―みんなが座ってみるようないわゆる一般的なランウェイショーのやり方というのは今は考えていないんですか

その方が問題は間違いなく少ないというのはわかるんだけどそこも含めて何か違うものにはしたいと思っているし、問題を少なくすること自体がやりたいファッションショーとは違うから当然批判を浴びることも多いけど、批判を浴びたとしてもやりたいことをやるべきだなと思います。

―具体的にショー後にはどんな批判を浴びたのでしょうか

見えづらいというのは一番最初にある問題だしあとは分かりづらいとも言われました。ショー自体のコンセプトがかなり強かったからリースを渡しておくとかそういうことをするべきだったんじゃないかという声もありました。あとは軽率にとか軽薄に色々な問題に対してやってはいけないという声も多くそこはかなり言われました。

―着ぐるみとかの問題ですか

着ぐるみもそうだし色んな社会的な要素。ファッションショーというみんながイメージしているものとはかなりずれたものになったと思うし、問題が色々あったにもかかわらず凄くポップに若い人達のチャラいイメージでやってしまったというところですね。

―若い人達にとっては何かわからないけど面白いそういう感覚があったかもしれないですね

軽薄に見えるというのとその中で嫌悪感がくる。もともとあったヨーロッパで習った立体的な裁断とかカッティングを前に出すようなショーとは今回は全く違った。僕のコレクション自体がそういうのを期待されていたのもあったし、そこで言ったら今回は本当にパターンをシンプルにしたし、カジュアルにしたからいわゆるみんなが期待していた部分も全く用意していなかった。そういうことに対してもサプライズになってしまった。

―丁度中国との問題も話題になっていた時期ですが

このコレクションを作り始めたのはそれが話題になる前だったのでたまたま時期が重なっただけですね。別に問題を起こしたいというわけではないですし。メッセージはあるけど中国やアメリカの事に関してとか社会問題に対してとかは僕から強く答えを言いたいわけではない。そこをスタート地点として何か考えてもらいたい。でも深刻に考えるというよりは今回の見せ方のようにツイストしてでもユーモアを入れたことで何かこれについて話をしてくれるかなと思った。それが一番大事なこと。だから僕はこういうことを思っているんですというメッセージはないんです。

―ファッションを通じて色んなことを考えて欲しいと

そうですね。ファッションを通じてこういう色んな問題を考えて欲しいとか、ファッション自体がメッセージ発信も出来るということももう一度考えて欲しいなって思います。当然メッセージとかって重くてあまりにもタッチしづらいことは多いと思うけどそれをファッションから全部除いてしまったら社会的意義が無くなってしまうし、それであればファストファッションで全て済むようになってしまうと思う。そういう意味でもう一度深いテーマを入れていきたいなって。メッセージを浮き立たせる為にカッティングとかを抑えてある意味誰でも作れるものであったり、真四角のTシャツにしている。いわゆるモードと言われているものを排除してメッセージだけで勝負したい、その勢いやパワーとか心みたいのを見せるにはどうすればいいのかと考えた時にやっぱり今まで凄く経験があるものだけを使うというよりは僕自身のチャレンジとしてのファッションをやりたかった。

―ファッションで何が出来るのか、何が必要なのか

何が必要なのかと言ったらメッセージですね。根本にいくとアントワープで習ったことが凄く強くあってファッション以外のクリエイションもそうだけど、知識とか技術とかお金で左右されるものとクリエイションというのはあまりにも深い関係でいてはいけないというのがある。技術が高いからとか知識があるからとか、お金があるからとかということでクリエイションのレベルが変わってしまうよりもそこよりも更に深いところ、心で訴えることが出来るモノにしないといけない。お金があってちゃんと教育を受けた人しかクリエイションが出来ない世界になってしまったらつまらないしそこにクリエイションの原点があるということはおかしいと思っている。だから今回は習ったことを使うというよりはもっと原点的な自分のやるべきことというものを見せたいと思ったんです。それが本当にクリエイションで出来ることなのかということを。

―批判の一方で絶賛の声も多数聞かれました

僕がショーの後に話をしてびっくりしたのはみんながファッションに必要なものは真面目さよりユーモアということを考えているということでした。それはファッションだけでなく全てのクリエイションに関して。そんなに真剣なものを見たい時代なのではないというのはみんなどこかで思っているんだと思います。

続く

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