Interview

LN-CC

2010年夏に立ち上げられ、オンラインストアを通じてメンズ・レディースウェアから書籍・音楽まで幅広い商品を提供してきたプロジェクトLN-CCの6000平方フィートにも及ぶ広大な敷地を改装して作られた店舗が先日オープンした。LN-CCは、Harrodsのバイヤーやオンラインストアoki-niのクリエイティブディレクターを経験したJohn SkeltonとパートナーのDaniel Mitchellを中心として、伝統的な実店舗による販売と日々進化するオンラインにおける販売をクロスオーバーさせ、新しいプラットフォームをつくる事を目的とし立ち上げられたプロジェクト。Gary Cardにより手掛けられた店舗には洋服のショールームやライブラリー、スタジオなどの各コンセプトルームはそれぞれ違った表情を持っており、またクラブスペースも設置されている。

―どのようにしてこのLN-CCというプロジェクト全体が始まったのですか。LN-CC立ち上げの経緯を教えてもらえますか

LN-CCは私自身とパートナーのDan Mitchellによる新しい構想であり、私たちのひとつひとつの活動をカバーする専門性の高い個々が集まったチームにより所有・経営されています。このプロジェクトは、私たちのようにプロダクト・音楽・文学作品に強い関心を抱いている人々の需要を満たすストアやプラットフォーム、コンセプトが見つからないというフラストレーションから生まれました。それらの分野全てをカバーし、正当に行えるような特別で均整のとれた環境に収容しようとプロジェクトをスタートすることに決めました。

―LN-CCのチームと個々の役割について教えてもらえますか

プロダクトやブランドのディレクション、クリエイティヴ・ディレクションは私とDanが行っています。それからビジネスやe-コマースからプレスチーム、音楽・文学・音響のスペシャリストまで様々なスペシャリストによって私たちのチームが構成されています。また50年に及ぶプレミアム・リテイルの経験を持つリテイルチームや、それに対応したカスタマー・サービスチームもあります。更に私たちが環境をクリエイトするときはいつもGary Cardがセットデザインのコンサルタントとして働いてくれています。

―オンラインストアに続き、LN-CCは様々なコンセプトルームやクラブスペース、ライブラリーで構成される6000平方フィートにも及ぶスペースをオープンしました。実際の店舗におけるアイディアと、オンラインストアとの関係について教えてもらえますか。また、莫大なスペースとあのような内装にも関わらず、なぜ基本的にアポイントメント・オンリーとなっているのでしょうか

私たちの活動に興味を持ち実際に見に来てくれる全ての人々のための目的地として、またやりたいことが常にできるわけではないというオンライン・テクノロジーの限界に大きなフラストレーションを感じていたので、私たち自身を表現するプラットフォームとして実店舗は立ち上げられました。実店舗は質問にあるような分野全てを、サウンドのクオリティ、プロダクトのレベル、文学作品のクオリティなどによって同じスタンダード、またはテイストのレベルに組み込んでいます。全てが明確に起因され、ふさわしい環境に収められています。6つの異なるそれぞれのコンセプト・ルームを通して、完全に独特なフィーリングや感情、即ち全体のスペースに込められたアイディアを体験することができます。実店舗がアポイントメント・オンリーであるアイディアは決して選り好みしようとしているからではなく、店に訪れた顧客の皆様により深い知識や教養を与えながら私たちの取り扱う全ての商品の説明をすることにより、特別で有益な買い物にしていただくためです。

―LN-CCはMaison Martin MargielaやRick Owensなど国際的に認知のあるデザイナーからJ.W AndersonやNew Power Studioなど比較的若いデザイナーまで幅広く展開しており、更にNonnativeやSasquatchfabrixのような多くの日本のストリート・レーベルもストックしています。LN-CCがレーベルをピックするときのポイントは何ですか

LN-CCのバイイングにおけるポリシーは大変シンプルで、私たち自身が着たいものを買い付けるということです。もしあるブランドが私たちをわくわくさせ私たち自身が着たいと思ったときは、必ず買い付けて私たちのプラットフォームに取り入れようとします。私たちはいつも様々なブランドの服を着てきて、メインラインのブランドのクオリティ、スタイル、プロダクションが大好きですが、それと同時に、UKだけでなく世界中の成長著しい新しく特別な才能をサポートしていきたいと考えています。また非常にうまく生産されているカジュアルブランドと同様に、日本のストリートウェアブランドの強い意志や細部まで作り込まれたエッジも大好きです。ブランドのスタイルに関して私たちは常にオープン・マインドであり、新しいものに出会いたいと思っています。もし何かに心から刺激を受ければ、私たちはそれをピックするでしょう。

―個人的にRaf Simonsが大好きなので、Raf Simonsのアーカイヴ・コレクションには大変興味を持ちました。このアーカイヴ・コレクションに込められたアイディアは一体何でしょうか。このコレクションはJohn自身が個人的に収集していたものであると聞きましたが、何故Raf Simonsは特別であり続けたのでしょうか

私の心の中で、私が思うには、プロダクトという観点では地球上でベルギー人がもっともクリエイティヴで前衛的です。もし私が身にまとう全てのプロダクトを買う国をひとつだけ選ばなければならないとしたら、間違いなくベルギーを選びます。初めてメインラインのプロダクトを買い始めたとき、私は15歳で、Dries Van Notenに夢中でした。Rafが突然シーンに登場したのはちょうどその頃で、サーフからインスパイアされカットオフされたノースリーヴのTシャツに足下はVansを合わせたコレクションを彼が発表していたのを覚えています。そして私は、この人はまさに私が着たいものを発信していると感じました。それから毎シーズン彼のコレクションを少しずつ買い始め、このブランドは特別な何かになると感じて全ての商品を保管していました。そして20歳のときに、私にとって初めてのRaf Simonsのショー、「The Fear Generation」を見にパリへ行く機会を得ました。このショーは未だに私の人生におけるベスト・ショーです。エネルギー、プロダクトと共鳴した環境、そして今までマッチするなんて想像もつかなかったスタイリング。私が見たコレクションの中で、覚えている限り、未だにもっともパワフルなコレクションです。それからというもの、私は過去働いたどの店においてもRaf Simonsをバイイングし続け、できる限り多くの商品を個人的なコレクションとしても購入し続けました。そして今ではファーストコレクションから現在のものまで約350ピースを保持しています。しかし現在私自身のコレクション用には、Raf SimonsよりもRafのエッセンスがより感じられ、今着たいと思うプロダクトであるJil Sanderのほうを多く購入しています。
私のアーカイヴからいくつかのピースを展示しようというアイディアは、私たちが持っている本気の興味と深いプロダクトの知識、そして信頼しうるヒストリーを示すためであり、これらのプロダクトがいかなるものであるかということを知り本当に理解してくれている人々のために、購入してもらうこともできるようにしています。

―近年多くの才能溢れる若手デザイナーが台頭してきているにも関わらず、ロンドンには未だ若いレーベル、特にメンズの商品を扱うリテイルの場が十分でないように思います。この点を考慮しつつ、ロンドンと国際的な状況という両方の視点から、ファッションビジネスの現状についての意見を聞かせてもらえますか

若手デザイナーの取り扱いに関する私たちの考えは、メディアへの露出やプレスの関心をひくという範囲においてUKでは、実際にそのような若手デザイナーへのサポートがここ数年にわたり急激に高まっていますが、実際にショップがそれらのプロダクトを買い付けなければ全く無駄になってしまう、ということです。消費者に手が届き、地球上で最も評価の高いブランドと共にショップに並ぶことができるプラットフォームを、若いデザイナーに与えたいと思っています。私が思うに、この業界の現状は今までとなんら変わらず、よいブランドは成功させる方法を見つける事が出来るでしょうし、よくないブランドはそうすることはできないでしょう。大変厳しいように聞こえるかもしれませんが、人々が欲しがるプロダクトをつくれば、成功する手段や方法はあるということです。現在リテイルという点では、世界中のショップを見てわかる通り誰もが比較的厳しい時を迎えているようですが、誰もが似通ったブランドのミックスをしており人々はもっとおもしろい何かを求めていると思うので、今こそよりおもしろいプロダクトを売る本当の機会であるというのが私の意見です。そのためにリスクをとる事が出来るかどうかです。

―日本のレーベルを多くストックしていたり、Comme Des GarconsやYohji Yamamotoなど日本の高名なデザイナーのアーカイヴを取り扱っていたり、またオンラインストアでは通常の英語版に加えて日本語版もあったりと、LN-CCのプロジェクトにおいて日本は重要な一部であると思います。日本のデザイナーについて、また日本におけるマーケットについて、どう考えていますか

私たちはプロダクトやデザインというものを大変尊敬しており、世界中を飛び回って最高のものを見つけようと努めています。私はYohjiを常に買い続けて来て大変愛着を持っており、それだけでなくファッションやプロダクトの歴史においても大変重要であると考えています。日本のプロダクトにおいて私たちが最も魅力を感じるのはプロダクションの質と細部へのこだわりです。いま現在においても日本のプロダクトは大変優れており、また素敵なものの捉え方をしている日本の消費者に、日本では得られない、見つからないプロダクトのミックスや観点を提供したいと考えているので、私たちのショップは日本と深く関係していると思います。

―LN-CCの将来の予定について教えてもらえますか。何かニュースはありますか

LN-CCには新しくておもしろいアイディアやコンセプトが沢山あり、いずれ公開していく予定です。間近にせまったエキサイティングな展開は、SS11のブランドラインナップです。コンセプト全分野におけるブランドの量が倍になり、レディースの商品ももっと提供していく予定です。4月に行う東京のCrue-L recordsとのパーティなど、各地で起こる私たちのキー・イベントにも注目していてください。

LN-CCのローンチ以来、私たちの活動全てにおいて支持し興味を示してくれた日本の皆さんに心からありがとうと伝えたいです。皆さんのサポートには本当に感謝しています。

Interview & Translation:Yasuyuki Asano

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