“ファッションショーというのは批判される、褒められる、そういう場。バイヤーさんとの付き合いじゃない、金を出さない人たちにも洋服を見せるというステージに立つということ”
→YEAH RIGHT!! 河村 × JUVENILE HALL ROLLCALL 入江 ” COMMON SLEEVE” 1/3
→YEAH RIGHT!! 河村 × JUVENILE HALL ROLLCALL 入江 ” COMMON SLEEVE” 2/3
—河村さんも石黒さんのところにいたので元々はコレクションというものの服作りをされていましたよね
河村(以下K):でも石黒さんも僕がいた頃は今僕が考えている服作りに近かったのかなと思います。日々作っていって出来たモノを出すみたいな感覚でした。だからその影響が僕には凄くあると思います。結構自由に服作りさせてもらっていましたし。ただ石黒さんもその頃とは少し考え方は変わってきていると思います。
入江(以下I):今はデザイナーもさらけ出して恥ずかしいならやんなきゃいいじゃんって雰囲気になっていますね。前はそれが奥行きだとかこだわりと捉えられてきたけどそれがだんだん変わってきた気がする。
自分がファッションショーというステージに乗っていないのにはそういうのが嫌だから乗っていないところってある。ファッションショーというのは批判される、褒められる、そういう場。バイヤーさんとの付き合いじゃない、金を出さない人たちにも洋服を見せるというステージに立つということ。自分はそこが踏ん切り出来ないというか、金を出す人にしかものを言わせたくないというところから出れてないからそのステージに今は自分は上がっていない。お金を払っているバイヤーさんは展示会でもストレートな意見を言っていいと思う。でもショーをやるということは関係ない人にも言われる覚悟があるというわけだからそれに対しては何を言ってもいいと思う。それによって腹が立つのであればそのステージに立たなければ良い。でも自分は腹立つタイプだから立たないですけどね。
ただショーって言うのは金にならないやつに見せる作業。ここ10年で特にそのあり方は変わってきている。ショーに出てなんだかんだ言ってもらって売り上げが伸びるみたいなそれはなくなっている。ショーが格好悪いとは思っていないし良いとは思っているけどステージに上がったからどうにかなるというのが今は余計になくなりつつある。実際知り合いのブランドとかが格好良いインスタレーションとかしても人が来ていなかったりする。今はそれが単純にお祭りのようなものとしてあるように感じる。
Chnagefashionでのショーに関するコメントを読んだけど洋服をやってるやつの攻撃性って凄いなって。でも攻撃性がなければ服は作れないと僕は思う。あれをやることで服を作っている人たちが作っている他の人のことを批評するということの危険性と面白さっていうのは見つかった。でもその逆で今は絡みのない評論家が評論するというのも大事な気がする。以前は評論家はしがらみがないところで喋っていたから「お前しがらみねーのに言うんじゃねー」っていうのはあった。でも今はそこが大事な気がする。
—モノの価値ということも考え直さないと行けない時代になってきていますよね
I:ただ自分は下手に頑張って原価を下げたりするつもりは全然ない。安くしたところで誰も喜ばない。買う人は高いと思えば買わなければいいだけ。自分はそれを安くしようと思ったら全部に安くしろって言わなければいけない。そうなると工場も回らない。自分で全部縫っているなら別だけど安くすることで付き合いが終わってしまう。「金もうるさいし、数も少ない」それじゃ回らなくなる。俺は少ないけど「金はちゃんと払います」と。むしろ食い気味で払うような勢いで払う。それであまりお金の交渉はしない。言い値で出すくらいの気持ちでやっている。そうしないと服は作れないから。「安くすることがお客さんのために」ってバイヤーさんはそう思うかもしれないけどお客さんは買わなきゃ良いだけだからいいんだよって思う。
みんなが思っているほどファッションは儲からない。原価も上がっている。昔はTシャツを売ってもの凄く儲けたりとかも出来たけど今はそれもない。実際他業種からもファッションやったら儲かるんじゃないかって乗り込んでくるけど儲からないことがわかってすぐに撤退してしまう。だから結局ファッションは怨念みたいに続けている人ばかりになってしまっている。逆にそれが服が売れない理由になってしまっているかもしれない。思い入れが強すぎて。あとは語っている人が男の人ばかりだということも問題。結局は女の子の「かわいい」とかそういう部分が一番大事。
世の中の消費者が10として9素通りさせて1にみんな乗り込んできているからそれは難しいに決まっている。なんだかんだいって地方の駅ビルとかに入っているブランドの方が有名なブランドより全然安定して売れていたりする。専門学校って女の子の方が多いのに結局最終的に洋服やっているのって男の子の方が多い。女の子の方が現実的で自分でブランド立ち上げる非現実的な道を選ばない気がする。だからこそ女の人で完全に自分を切り離せて洋服を考えることが出来る人って面白いと思います。
—僕はショーは好きなのでショーをやるブランドが増えてくれれば良いなって思っています
I:やるつもりはあまりないけどその気持ちはわかります。コレクションってやっぱり緊張感が半端なくある。でも東京はお金がない中でどうやらなければ考えなければいけない。プラダとかジルサンダーみたいにプロダクトだけで見せれるものとは違う。向こうはファクトリーがあってデザイナーさんがいるけど日本は自分の力でお金を貯めて工場さんだったり、生地を使ったり。海外は逆だから。
K:東京だと海外と違ってランウェイ勝負だけだと難しい。仕掛けや見せ方に何かないと。でもそれが東京らしさに繋がってくると思う。
—河村さんはショーをやりたいって言う気持ちはないんですか
K:僕はショーをやるということに対してずっと否定派だったというか、自分の洋服としてそういうことをやるものではないと思っていた。でも新しく中目黒に事務所を移転する。そういうきっかけがあるからショーということに関しても視野にいれても面白いかなと思い始めました。
—ショーをやるということは今までよりひとつ仕事が増える訳ですからね
K:かなり大きい仕事ですね。
I:それに仕事の分量が展示会より全然大きいから
K:そのために作るようになってしまうこともあると思う。
I:ショーに関してあまり強い想いがなかったみたいだけど河村君は学生時代どんな服を着ていたの?
K:僕は古着しか着ていないですね。僕はデザイナーモノは着なくて服を作っていたのでそういうのを着たくないというか当時はそういうものにアンチでしたね。見るのは好きだったんですけど。その頃は雑誌もいっぱいあったし。
—僕は欲しいものがあるからつくらなくていいやって思っていました
K:ブランドが嫌いだったわけではなくみんながそっちに行き過ぎちゃうとアンチな気持ちになっちゃって。結局どこなのって言われたらどこでもないみたいな。
—僕はだから古着のことは全然わからないんですよ
K:かといって僕もマニアックな古着の知識とかがあるわけではないんですよ。自分がリメイクをする材料にもその古着に力がありすぎてしまうと全然使う気になれない。凡庸性があるやつじゃないと選ばない。どこでも手に入るやつで誰でも出来る手法で自分なりにやれるのがいいかなって。そっちの方が材料集めるのも楽ですしね。
ブランドは完全にリメイクは2割くらいで、一部古着とかが3、4割で残りは新品です。
I:僕が最初に河村君の服を見たのは多分Factory(現在は閉店)だと思うけどもっと飛ばしていたイメージがある。くっつけ方がもっと強引でしたね。
K:でも最近そっちの方に戻しても良いかなって思っています。
I:今作ってる服はこなれているし、Common Sleeveとか言ってるけど当時はかなりエッジがあった。
K:ブランドを続けるとだんだん落ちついてくる。でもそういうことを続けてるとまたそれを壊したくなってくる。
僕たちは最初リメイクから入った。そういったルーツがあるのにそれをやめたりするブランドもある。でも僕たちはそこは保とうかなって思っています。自分も好きですし。ただ最近は本当に飛ばしたい気持ちがあるんです。
I:僕は逆に今は引きたい気持ちになっている。
K:入江さんやZoo君(CHRISTIAN DADA)、石黒さんもそうだけど3人とも洋服にエレガンスなところが見える。そういうところに僕も少し憧れる。壊しつつもそういうものを見せれたらいいなって。僕はブランドを井村とやっているので一人でやってる訳じゃない。そういう強みがあるのでそういうのをもっと出せれたらいいなって。
I:自分は自分が着る服を作っているから恥ずかしい部分はある。丸裸になるから。特に女の子の服を作るのは恥ずかしい。自分がどんな女の子を好きかわかってしまうから。なにか投影させた方が恥ずかしさは軽減されるところはあると思う。
K:僕はいわゆるランウェイには憧れないけど展示会だけだと正直飽きてしまう。やるとしたら自分達なりの表現、“ショーの為に”という気負いをすることなく違う表現が出来たら、それが広い括りでのショーだとしたらいいのかなって。だからPOTTOのショーは凄く楽しみでした。
I:今はショーが一番格好良い時代ではなくなった。やっぱり丸裸じゃないけどそいつと服がリンクしていないと買えない気がする。
K:今はデザイナーもブログやらツイッターやらやっている人がいっぱいいるからそっちばかり目がいっちゃうから出ていない人をわざわざ探すというかそこまでしない気がする。
IK:やばいですよ。僕たち遅れています。
K:入江さんもし「俺もブログをやりたいな」って思ったときに完全にタイミングのがしていますよ。
I:今更やれないでしょう。
河村君が破壊の方向に進んでしまうのは怖い気がする。凄く見てみたいし、自分が欲しくなってしまいそうで怖いですね。
K:完全にはならないですけどね。僕と井村とのバランス感っていうのがYEAH RIGHT!!にはある。「柔らかい感じだね」ってよく言われたりするけどそれは元々彼女の作り出す雰囲気。僕も今はそれに寄っている気はする。でももう少し対局なところも見せれたら面白いんじゃないかって思っています。
だから次のアトリエでは少し激しいものを作ってお店で売ろうかなって思っています。