Interview

TAKASHI NISHIYAMA 1/2

昨年行われた世界最大級のコンペティション”ITS#NINE″でここのがっこうアドバンスドコース第一期生として作品を出品した西山高士は最高賞であるCollection of the Yearを日本人として初めて受賞し、期待の新人デザイナーとして一躍世界の注目を集めた。
あれから一年、ITS#TENにて前回の受賞者として再びランウェイショーを披露した彼に最新コレクションのことを中心に話を聞いた。

→TAKASHI NISHIYAMA ITS#NINE
→TAKASHI NISHIYAMA ITS#TEN

―今回のテーマを教えてください

今回のテーマは「WE ARE ALL ONE,THE ONE OF HERO」です。日本のヒーローをテーマにヒーローショーをしたいというところから始まっています。
ガンダムなどのアニメの他、戦隊ものもインスピレーション源となっています。

―ヒーローをテーマにしたのは3月11日に東日本大震災があったことも影響しているのでしょうか

前回の終わった後すぐにイメージが浮かび、震災前からそのテーマでやっていたのですが震災をうけ、その想いが更に強まりました。
僕が尊敬しているデザイナーである三木勘也さんは阪神大震災を経験してクリエイションに対して「やれるときにやらなければいけない」という想いを強く感じたそうです。今回のショーでは初めから大きいモノをやろうと思い、製作していたのですが、3.11があり自分もその想いを服に込めて爆発させなければいけないと感じ、当初製作予定だったモノよりも大きいものを製作しました。ただ想いを爆発させすぎて作った物が大きくなりすぎて結局それをランウェーに出すことが出来なかったんです。
ITSの関係者からは「あまりにも規格外すぎる」って言われました。向こうに行ってからも安全ピンを使ったりしてなんとか小さくして一応テストウォークはしたのですが会場の幅が4メートルと決まっていたのでターンすることができなかったんです。結局ITSの判断で「駄目です」となりました。

―4メートルも幅があるのに出れないものってどんな服だったんですか

4メートル幅が僕の想定よりかなり狭かったんです。震災前から製作していた2番目に大きい服(ITS#10のラストルック)でさえ広げると6メートルもあるんです。その服はなんとか出すことが出来たのですがそれも後ろがぐちゃぐちゃになってしまいました。

―幻のピースはどのくらい時間をかけたんですか

半年くらいかけて作りました。

―結局何体発表したのでしょうか

16体です。昨年はディーゼルプロジェクトを会わせて8体ですのでその倍ですね。
見せることが出来なかったラストルックは5人で着て完成するので、それ以外に12体用意していたのですが一番大きいものに関しては出せないこともあると感じていたので、ファスナーで単体に分解出来るよう作っていたので結果的に16体になっています。


―5人で着るということはイメージはゴレンジャーですか

そうではなくガンダムシリーズに登場するホワイトベースなどの戦艦がイメージです。戦艦なので人をたくさん服の中に入れようと思って最初のイメージは7人で着るものだったのですが、4月にランウェイの幅が4メートルと言われ5人で着るものにしたのですがそれでも披露することは出来ませんでした。
今回見せることが出来なかったものはショーの為に作ったものなので、写真やインスタレーションではなくいつかショー形式で発表出来たらと思っています。

―コレクションに出すことが出来なかった幻のルックはどのくらいの生地を使ったんですか

500メートル分は使ったと思います。それだけの量を使えば絶対重くなるのはわかっていたのでナイロン系の軽い生地を使っているのですがそれでも20キロくらいあります。
ただITS#10のラストで出た服も150メートルくらい生地を使って20キロくらいあるんです。それは1人用で20キロ、見せることが出来なかった服は5人で20キロなのでそれに比べたら凄く軽いと思います。

―前回のコレクションはモンスターハンターをテーマにしていましたが西山君自身は一度もプレイしたことがなかったと言っていました。ガンダムなどのアニメは好きだったんですか

ガンダムをちゃんと見たことはなくモンスターの方が好きです。
ただ全く知らないわけではなくて「スーパーロボット対戦」というゲームを小さい頃にずっとやっていたのである程度のことは知っていました。それにモビルアーマーが好きなのでプラモデルを買って作ったりしました。

―リサーチはどのようにされたんですか

ガンダムのプラモデルの本を買ってそれをパターンの参考にしています。特にカッティングなどはプラモデルをかなり参考にしています。

―ディテールに関しては「ヒーロー」をどう取り入れたのですか

「ロボット」や「モビルアーマー」がイメージにあったのでエッジの効いたカッティングだったり、ポケットをフラップポケットにしたりしています。それに腰巻きのようなイメージでアウターの上からスカートをはいていたり、ビームのイメージのディテールも取り入れています。
レンジャーもののリーダーは赤ですよね。だからコレクション自体は赤を基調にしています。

―前回はメンズのみでしたが今回はレディースのルックも登場しました

デザインの幅を広げたいと思って今回はレディースにも挑戦しました。メンズはメンズとして女の子っぽくなっては駄目だから格好良さというのは意識しています。
レディースは元々やりたいと思っていたのですがメンズっぽいレディースをやるか、レディースっぽいレディースをやるか悩み、メンズっぽいレディースをやっても今までとあまり変わらないと思ったのでレディースの要素の強いものにしました。スカートも女性の服ですし、フレアが凄く入った服もある、ガーリーなディテールも意識して取り入れています。
ただレディースに関してはメンズに比べてまだ強く作り込めてはいないと感じています。
最初はメンズをマストでずっとやっていこうと思っていたのですが今回レディースをやってみて面白いと思いました。それに僕はずっとメンズをやっていたので正直ネタ切れ感も少しあったんです。

―レディースとメンズでは色々違う部分もあると思いますが不便さや、大変さを感じたりはしなかったんですか

そんな風には思いませんでした。今まではボン、ボンとボリュームのある服作りをしていた。今回はラインに沿わせた服作りを初めてやったのですがそれが凄く面白く感じました。

―レディースのイメージがあまりないのですが好きなものってどんなものなんですか

あまりそういう風に思われていないかもしれないですが僕はエレガントな洋服が好きなんです。ITS#9でもモンスターだけでなくサラリーマンの要素を入れフォーマルなモノも作っているのですがほとんど隠れてしまっています。だからITS#10ではもう少しエレガントな部分を出そうと思ってやりました。
僕が文化(服装学院)の時に作っていた服も「エレガントだけどちょっと変な服」そんなイメージです。
好きな服も東京のブランドよりパリでやっているブランドの方が好きなものが多い。パリに出ているブランドは完全にエレガントではないですけどほとんどのブランドにエレガントな要素が入っている、そういうものが好きなんです。

―メンズに関してはどんなモノが好きなんですか

Juunn.Jは好きなデザイナーの一人です。彼の服は凄く複雑そうに見える。でもそれが商品化されている。それにアイデアは一般的かもしれないけどあまり他のブランドがやらなそうなことをやっている、そこが良いなと思う。欲しい服ですね。
Mason Jung(ITS#8 Collection of the Year)も好きなデザイナーです。彼の服はディテールを削ぎ落とすぎて色んなところがくっついているような服になっている。凄く職人肌で彼の服の完成度は半端ないですね。特にテイラードの技術は凄いと思います。

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