Interview

WIM NEELS 2/2

“「このシーズンは良かった」とか「あのシーズンが良くなかった」というものではなく私のコレクションは単なるアルファベットのようなものなんです”

→WIM NEELS 1/2

—ファッションに興味を持ったきっかけは何ですか、なぜデザイナーになろうと思ったのでしょうか

私は元々、建築の道に進むと思い数学を勉強していました。ただ私はそんなに数学が好きではなかったんです。もし私が建築の道に行きたいのであれば数学の勉強を続けなければいけなかった。私はもう数学は勉強したくない。きっと建築は向いていないんだと思いました。
私の祖父はドレスメーカーだったんです。私は小さい頃彼が洋服を作っている姿をよく見ていました。恐らくそういったことからも影響を受けているのだと思います。ただ私は自分自身のことを典型的なファッションデザイナーだとは思っていません。私は洋服産業に身を置いています。でも「あなたの仕事はなに?」って聞かれたら私はいつも「テキスタイルの仕事だよ」って答えています。ファッションデザイナーという職業に対するあこがれなどもありませんし洋服だけにこだわっている訳でもありません。ただ今は洋服のことをやってるというだけなのです。

—他の人とは違うあなた自身のスタイルの特徴とはなんでしょう

難しい質問ですね。私のコレクションのウイークポイントの一つはストロングポイントでもあります。洋服をデザインする上で誰かこの洋服を好きだろうか、好きではないだろうかということは考えますよね。私はこのプロジェクトを自分の為だけにしているわけではないですから。
一般的に私がデザインしたジャケット、シャツ、パンツなどは白いページのようなものでそれは身につけた人によってストーリーが加えられていきます。でも有名なデザイナーがデザインする洋服には既に色がついているのです。それを着るということはブランドのビルボードのようなものです。私自身はそういうものをデザインするのは避けようと思っています。私のデザインしたものが顧客に合うように、そしてその顧客が自身の着たいように自分の色を出せるようにしています。私が「このパンツはこういうように着るものです」と言うことは決してありません。その人が着たいように着れば良いのです。
「このシーズンは良かった」とか「あのシーズンが良くなかった」というものではなく私のコレクションは単なるアルファベットのようなものなんです。シーズンが変わったからといって古くなるものでもないですし、また新しいシーズンだからといって過去のコレクションのアップデートということではありません。

—作品を制作するにあたり最も重要な要素はなんですか

色んなことを気にかけることなく、コマーシャルなことを考えずとにかく自由にスケッチをオープンなマインドで描くことからはじまります。そこでデザインしたものが「これは着ないものだろうな」ってものだとしてもそれはそれで良いんです。「これは売れるだろう」「これは売れないだろう」ということはその時点では関係ないのです。過去や暗い未来など想像することなくとにかく出来るだけ自由な感覚で捉えることです。

—あなたの顧客はどのような方ですか

直接自分のお客さんと関わることはあまりありません。でも一般的に私の洋服を買うような人はそこまでファッションにのめり込んでいない人、好きなものを好きなように着ている人だと思います。その人たちがファッショナブルに着こなしていても良いですし、それを着てファッショナブルでなくても私はそれで良いと思っています。
私の洋服は若い人も買ってくれるし、少し歳を召した方も着てくれる。年齢で言うと25歳くらいから65歳くらいまでの人が買ってくれるのではないでしょうか。特にここといったターゲットがあるわけではありません。それに私は特定の人たちの為にデザインしているのではないのです。そういったことが影響しているのではないでしょうか。


—あなた自身は普段どのようなスタイルをされているのですか

勿論自分の洋服を着ることもありますがいつも着ている訳ではありません。ユニクロのポロシャツとミックすることもあるし自分が気に入っているものを着るのです。でも自由時間に洋服を買いにショッピングに行くということはあまりしません。新しいソックスが必要だからとか、新しいシャツが必要だからとかそういう時に新しいものを買うだけです。
それに私は他の人にどのように見られるかということをあまり気にかけていません。だから私自身は自分のブランドの良い広告塔ではありません。
私の洋服を購入する人々も私だけの服を着るのではなくミックスして着るのです。その人自身のフィーリングでそれぞれのアイテムをミックスするその為のピースなだけです。
私自身が今までもこれからも着ないだろうというのはロゴのついている洋服です。グラフィカルなものとしてロゴは好きですがそれを洋服にのせるのは好きではありません。プリントは別です。私は高いお金をだして洋服を買ってそのブランドの広告になるという行為があまり理解出来ないのです。ロゴを着るということはお金を払ってその会社の広告をしているようなものに感じてしまうのです。

—あなたの洋服はほとんど日本で作られていると思いますが日本で洋服を作ることの一番の利点とは何ですか

利点の一つは正確性ですね。以前はたくさんのものをイタリアで生産していました。ただイタリアで作ると納期が不明確でそれがいつになるのかというのがわからなかった。
またファブリックもアドバンテージと言えるでしょう。私はコットンが好きなのですが日本では凄く質の良いコットンを探すのが簡単です。
逆に良くない点で言えば縫製技術の正確さです。あまりにも正確すぎる縫製は良い点でもありますが洋服の良さを消すことにも繋がります。日本は完璧すぎるのです。完璧さを求めていない洋服も時にはあるのです。今の時点ではプロダクションを全て日本で行っていますがそれが常にこれからも続くということではありません。

—日本のマーケットについてどのように感じていますか

トレンドを気にしすぎているという点では日本のマーケットはそんなに好きではありません。
その一方で若い人たちが小さいお店を都心に出しています。それが何年も続いている。そういうことはロンドンやイタリアではほとんど不可能です。アントワープもそうです。
トレンドに凄く気を使う人たちがメインストリームな中でブランドやそういったものにこだわらない洋服の選び方をしている人も多いということです。だから良い点もあれば悪い点もありますね。

—東京という街についてどのような感想を持っていますか

1年に8回ほど来ています。東京には見るものもたくさんあるし、やることもたくさんある。東京にいることで疲れることはありません。凄くリラックス出来るのです。
私はまたロンドンやベルリンも好きです。そこではクリエイティビティが感じられるともに未来へのポジティブなアプローチが感じられるのです。例えばミラノという町は常にポジティブな感覚だけではありません。

—あなたの将来のビジョンについて教えてください

新しいプロジェクトを近いうちにはじめることになるでしょう。それは自分だけのものではなく誰か他の人と一緒にやるということです。他の人と何かやることで異なったアイデア、異なった見方を共有することが出来るのです。20年も続けるには常にオープンな視点を持たなければいけません。その為にも新しいことを始めたいと思っています。

Interview & Translation:Masaki Takida Portrait:Tomohiro Horiuchi

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