Interview

Guts For Garters

Guts For Gartersは「バイイング・エキシビジョン」という独自のスキームにより毎回その姿をすっかり変えるという新しいコンセプチュアルストア。カムデンのThe Cob Galleryの地下に位置するショップは、あるテーマのために選び抜かれたアバンギャルドなファッション、アート、ファーニチャー、デザインが素晴らしい調和をみせている。ユニークなキュレーションによりGuts For Gartersという言葉を具現化しながら、驚くほど空想的な雰囲気のショップはアートと共に生きるということへの新しい視点を呼び起こしている。
Guts For Gartersの第2スキームである「Surreal Women」の期間中に、共同オーナーであるRachel ChudleyとCassie Beadleへインタビューを行った。

-the Cob Galleryの地下に位置するあなたたちのショップ、Guts For Gartersを初めて訪れたとき、現代アートやインテリア、そしてファッションの独特なミックスによって創造された非現実的な空間がとても印象的でした。それから、ショップが3つの異なる「バイイング・エキシビジョン」に基づき、6週間ずつのみオープンし、ショップ内のスペースは各コンセプトによって毎回完全に違うものになるという大変興味深いスキームについても知りました。
ショップの根底にあるコンセプトやショップをオープンするに至ったアイディアなど、Guts For Gartersについてもう少し詳しく教えてもらえますか?

Guts For Gartersは私たちの個人的な興味と、大学で養ったキュレーションやリサーチに対する興味が混ざり合わさったものです。インタラクティブなインスタレーションを通してギャラリーの白い四角形のスペースを埋める空間を創り、他の施設で見られるような集合的で排他的な姿勢に捕われることなくファインアートに投資できる機会を人々に提供したかったのです。このようなファインアート、デザイン、ファッション、ファーニチャー、オブジェクトのブレンドと同様に、現代における好奇心のキャビネットを創造する一方で、「すべての修練が同等にアーティティックなヴァリューを有している」というメッセージを添え、共存し互いに賛辞できるように、職人の技巧における全ての修練のためのプラットフォームを提供しています。それぞれのアートワークやデザインがどうしてそのテーマをフィーチャーしたのかというストーリーを伝え、我々のディスプレイによりどのように「アートと共に生活する」ことができるのかというビジョンを人々に提供したいと思っています。このような意味においてテーマに深みを出すために、Vivienne Westwoodのような偉大なデザイナー達のファッションデザインを、素晴らしいヴィンテージの洋服や新しい若手デザイナーの側にディスプレイすることも可能であると考えています。

―お二人のショップをオープンされる前のバックグラウンドを教えてもらえますか?

Rachelと私は共にCourtauld Institute of Artのアート史の卒業生です。大学を卒業したとき、Rachelと私はそれぞれファッションとインテリアデザインのキャリアに進みたいと熱望していました。

―なぜ、どのようにして「Guts For Garters(ただじゃおかない、とっちめる)」というキャッチーな名前を付けようと思ったのですか?

Rachelと私はもともと不気味で珍しいものに惹かれるのですが、「Guts For Garters」というフレーズは英国文化をルーツとしており、チャールズ・ディケンズ(貧しい幼少時代を過ごし、ロンドンの下層社会の作品を多く発表したイギリスの作家)の小説のようなスピリットを有しています。私たちが現在拠点としている建物は、かつてディケンズが肉を買っていたと思われるビクトリア時代の肉屋であったので、自然とその名前が適切だと感じました。また、Guts For Gartersという名前は私たちがキュレーションのアプローチに吹き込んでいる皮肉を反映しています。Guts(内蔵)をGarters(ガーター)にするということは、恐ろしいものを美しいものに変換できるというアイディアを呼び起こし、私たちはいくつかの方法でこのアイディアと戯れています。

―Guts For Gartersはカムデンに位置していますが、意図的にカムデンを選んだのですか?カムデンを拠点にしているということは実際どうですか?

このプロジェクトはThe Cob Galleryと共に、常にカムデンで始まりました。当初は他の場所もあたりましたが、今考えてみるとベターな場所はありませんでした。ショーディッチは飽和していますし。カムデンは絶滅の危機に瀕していますが再復興に値する場所です。私はこのあたりで育ましたが、輝かしかったカムデンマーケットや奇妙でも素晴らしかったカムデンの行き先が観光業の需要により体系的に一掃されてしまうのを見るのは散々なものでした。私たちはオルタナティブな歴史と文化が豊富に埋もれているこのロンドンの場所に、何かを取り戻したいと思います。

―ショップでは何か音楽がプレイされているのかどうかわかりませんが、お二人はどのような音楽を好みショップでプレイしたいと思いますか?

Rachelも私も音楽は大好きで全てのジャンルを楽しんでいます。将来、他のものをキュレートするのと同じ方法でキュレートして、音楽がテーマ全体のキュレーションにおいてとても大きな役割をを果たすことになると思います。いくつか名前を挙げると、Billie Holiday、Tom Waits、The Velvet Underground、Jack Kerouacなどです。

―現在ショップは第2スキームである「Surreal Women(超現実的な女性)」をテーマにしています。このテーマについて説明してもらえますか?そしてテーマを強く反映したお気に入りのピースをいくつか紹介してもらえますか?

ひとつのピースがテーマを反映しているということではありません。全てのピースとアーティストが共に働きあってGuts For Gartersの雰囲気が創出されているのです。最も素晴らしいことは前回のテーマとの違いです。ショップのコンセプトを強め効果的にスペースを変化させるために、敢えて前回と大きく異なるテーマを選んでいます。

シュールレアリズムは男性によって行われましたが、彼らが感じた「女性」が多くの側面に現れています。Rachelと私はシュールレアリズムの女性蔑視の傾向に惑わされましたが、そこにある矛盾や「危険な女性」への強迫観念においてエキサイティングな要素を含んでいます。勿論輝かしい日陰者であったClaude Cahunや、本当に素晴らしいMarchesa Casatiといった実在した「Surreal Women」からもインスピレーションを受けています。私たちはEileen Agarといったシュールレアリズム・ムーブメントに直接関する女性のディスプレイワークも保有していますが、個々のアーティストのテーマに対するレスポンスをぞくぞくしながら楽しんでいるのです。シュールレアリスト達はシュールレアリズムとして知られていたのではなく、インスタレーションとディスプレイに熟練しており、彼らのムーブメントはアートにおける全ての修練に浸透しているのです。彼らがショーをキュレートした際にはそのような全てのセンスを含んでいました。私たちはシュールレアリスト達が大変入れ込んでいたセクシュアリティと危険性の間のテンションをアーカイブしたかったのです。またRachelと私はスペインのCosta BravaにあるSalvador Daliの家にも訪れました。私はその家がDaliが成しとげた最も美しいものだと思います。

―残念ながら、私は前回のテーマ「Royal We」(ロイヤル・ウェディングとは全く関係ないということは知っていますが)を見逃してしまいました。ですのでそのときどのようなことをされたのか教えてもらえますか?

前回のテーマは大成功でした。素晴らしかったのは人々がショップのコンセプトに非常にポジティブに答えてくれたことです。ギャラリーの真っ白な壁からGuts For Gartersのデカダンスへと歩いていくと、人々は私たちがなんとかして表現したかったディスプレイやキュレーションをそのまま堪能することができました。およそ20のアーティストとデザイナーとコラボレートし、Alexander McqueenやVivienne Westwoodを、デザイナーでありパフォーマンスアーティストであるAndrew Walkerやヴィクトリア時代のコスチューム、Jamie Reidsをフィーチャーし壁をライニングした特注のウォールペーパー、エリザベス一世のサインのネオン、アナーキストであるCarrie Reichartの陶芸品、Royal Collegeの卒業生であるMartha ToddとGrace du Prezによる特筆すべき委託作品などの隣にキュレートし、それらが全てアンティークファーニチャーにディスプレイされました。

―テーマにあったクリエイターを選ぶ際の基準や不可欠な要素はどのようなことですか?特に、ショップでは確立されたデザイナーと新鋭デザイナーのミックスが見られますが、どのようにバランスをとっているのですか?

私たち自身がその人たちの作品を尊敬している人々を選びます。そうでありながら、そのような尊敬する人々にテーマを持ってクリエイティブにアプローチし、信じられないくらいユニークな何かを創るために、その人たちの表現手段のコンフォートゾーンを超えて表現してもらうことは本当に素晴らしいことでした。

バランスは展示するときに全てのクリエイターに平等な状態を提供することで保っています。私たちのコンセプトには名前が確立されている人々と新しい人たちを混ぜることが非常に重要です。Rachelと私はどれが有名なアーティストによって創られたのかであったり、どれが古くてどれが新しいのか、どれが買い付けられどれが注文して創られたのかといったとこがわからない空間を創りたかったのです。私たちの好奇心溢れるキャビネットにはそういったことが加味されています。

【Guts For Garters】
205 Royal College Street, Camden, NW1 0SG
http://www.gutsforgarters.com/
http://www.cobgallery.com/
Guts For Gartersの次のスキーム、「Anatomy」は11月15日よりスタート予定。

Interview & Text:Yasuyuki Asano Photo:Wataru Fukaya

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