Interview

CHRISTIAN DADA 森川マサノリ 4/6

ハードからソフトになっていくという流れの中でどう出来るかというのは常に考えている。ファッションのシステム上で何か変えることが出来ないのかなと思っているんです

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―前シーズンは震災がありショーを中止したブランドも多かった。その中でもCHRISTIAN DADAはショーをやることに拘った。余震が続いて当日も出来るかわからない状態でランウェイデビューの無名ブランドがリスクをおかしてまでやる意味はあったのでしょうか

ショーを中止して展示会の為に服を作り変えると言う時間がなかったのもありますが、形を完成させて頭(ヘッドピース)も込みでルックで組んでいるので動いている姿で見せたかったというのがあります。それに向けて演出も考えて動いていたのでそこを崩すのは違うのかなって。

―やめることも考えたとも言っていましたよね

勿論考えました。ただそれは電力だとか安全面の問題で出来ないこと。結局僕のショーの直前に余震があって電車が止まってしまったりもしました。責任を持つのは自分だし、大げさな話ですけど人の命まで責任を持てるかと言ったらそれは出来ないので。

―前回も今回もプレスやバイヤーの方だけでなく一般の人も入れるようにしていましたが、それはやりたかったことなんですか

常に変わらず一般の人はショーに呼びたいと思っています。今はPRとも契約しているので「1列目を誰に」とかいう話にはなりますが、僕の中でそれって”?”みたいな疑問が浮かぶ時があります。そのシステムって海外からの流れとただ単に同じにしてるだけですしね。1列目が一般の人だろうと媒体の人だろうと、見たい人が先着順で見れる。日本て特殊な場所でやるのならそういう形もいいし、分けることで区別してしまう感じになってしまうと思うんです。根本の部分ではそれに見に来たいと思ってくれて来てくれる人の方が本当は大事なのかなって思います。
本当にショーを見たい一般の人が一時間とか並んで、お偉い方が後で悠々と入ってくるプライオリティやステータス。その階級社会的な感覚ってなんか違うような気もするんですよね。

―2011-12A/Wのショーの話に戻りますがなぜレディース・メンズのミックスだったのでしょうか

シャルルでレディースをやっていたからというのもそうですが、結局レディースの方が造形するにあたって表現としてやりやすいんです。
メンズに関して言えば僕のブランドは形は変わったものは作っていない、ある形の中で加工や、そこに辿りつくまでのアルゴリズムが大事と思っていたので。ルックとして考えた時にレディースの方がルックとしては形になったというのも理由の一つです。

―僕が感じたのは同じテーマにもかかわらずレディースとメンズがリンクしていない。ミックスで見せるのではなくどちらかで良かったのかなって

そうかもしれません。そこは多少なりとも僕も感じていましたし、デザインを出した時点で言われていたことでもあります。思考回路も違うし。しかし一緒に出した方が対比しすぎている分ショーではもしかしたら面白いのかなって。結果的にリンクしてたようには見えなかったかもしれません。だから結局2012S/Sは分けてやることにしたんです。

ラフォーレミュージアム原宿にて行われた CHRISTIAN DADA 2011 – 12 A/W Collection

―そのシーズンからCHRISTIAN DADAのレディースコレクションがスタートしました。だからこそショーでもレディースを発表したかったのでしょうか

それはあまり関係ないと思います。逆に言えばメンズを出したことの方がセールス的な意味合いが強かったです。今から思うと今シーズンのメンズを外したのもこれだけ思考回路が違うんだから出さなくても良いんじゃないか、どちらかで良いんじゃないかって昨シーズン感じたからだと思います。

―クリエイションが俯瞰的というかシステムに向いているというか、それは服での表現に新しいことを見出せなかったからなのでしょうか

それは坂部さんがMIKIO SAKABEで色々挑戦していることかもしれませんが、僕の場合はもう少しプロダクト上で掘り下げつつやりたいと思っています。今は凄く情報がある。結局商業的(物質的)なものと非商業的(非物質的)なものとかも両方で表現しないといけない。情報を見なくてもいいと思いますけど僕は見ているのでどんどんボーダーレスになっていき、ハードからソフトになっていくという流れの中でどう出来るかというのは常に考えている。それが例えばどこかとコラボするということだけではなくて、ファッションのシステム上で何か変えることが出来ないのかなと思っているんですよね。ショーとリンクさせないとか。それって評価されづらい部分だと思うんですけど、そんなブランドがあっても良いと思うんです。

―2011-12A/WのショーのテーマGleam(光)は震災とはリンクしてないと言っていました。でもその次のショーは死を題材にしたものだった。何か震災に関係があるのでしょうか

それは関係していると思います。その頃僕はそういうアート作品を凄く良く見ていたので僕の内面から来たものだと思います。ショーのことを考えたら何かがあったとしてもテーマは突然変えることは出来ない。だからGleamの時は全く関係無かったですが、少なくとも今回のものに関しては意識的な部分では関係していると思います。

―テーマに固執しているブランドは今は少ないのかなと思います

そうかもしれません。
少し前にテキスタイル産地に行くことがあったんです。テキスタイルって面白いんですけど逆に思うこともある。オリジナルでテキスタイルを作ることって日本では当り前のことですよね。でも「それって果たして時代にあってるのかな?」って思うんです。例えばオリジナルテキスタイル作ります。そうしたら最低ロット何反から作れます。その最低ロットの為に何型かに振り分けないといけない。それって統一感は出るかもしれないけど結局そのロットを消費する為だけにデザインとしての制限は凄くかかってしまう。大きいブランドは良いのかもしれないけどその形に捉われて生産するのって果たしてどうなんだろうって。
有りモノの生地でも凄く良いものはある。オリジナルの生地を使ったから良いのではなくフィニッシングの時点でオリジナルになっていれば良いのかなって。

―レディースだけのショーをやろうと思ったのはいつですか

6月くらいですね。絵でルックを出した時に最初は5体位メンズを含んでいた。でもメンズは展示会で売る服が多くて、今回のテーマに関して言えばメンズを省いた方がよりプリミティブに出来る、レディースの方が単純に自分の描いた形に近かった。それがメンズとして出来るのであればそれはメンズでも良かった。

―CHRISTIAN DADAと言えばメンズのイメージが強いと思いますがレディースだけを見せることに不安はなかったのですか

それは凄くありました。

―僕もそうですがファンの人としてはレディスではなくメンズの単独ショーが見たかったと思うんです

それも言われました。だからこそレディースをやりたかったという部分もあります。ボトムアップするにはメンズで考えても良いのかなとは思いますけど、期待されてないことをあえてやりたかったと言うか。メンズはショーのテーマとリンクしたものではなく展示会の為の服を今シーズンは作っていたのでショーをああいう形で発表して海外にプレスしてというやり方をして、それで結果的に海外のバイヤーも興味を示してくれた。ショーと売る服がリンクしていなくても時代としては飲ませる方法もある。レディースの服はプリミティブで個のクリエイションがあるから結果的にメンズの服にも興味を持ってもらって売れるんだよとか。展示会の服と連動しない無駄なことがあっても良いと思っています。一般的には連動しないと良くないと言われるところではあると思うんですけど。

―2012S/Sのショーに関して言うとビジュアルブック的な意味合いもあったのでしょうか

分かりやすく言うとそれに近いかもしれないですかね。

―レディースに関しては売る物もあったのでしょうか

売ってはいるのですがほぼアートピースのような感覚ですのでready to wearではありません。

―今回でレディースのショーはしばらくやらないとも聞いています

そうですね、次フェイズとしてメンズで新しい挑戦、プロダクトそのものに力を入れていきたいと今は思っています。まだ何もデザイン案が出ていないので何とも言えないですが…

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