Interview

uemulo munenoli ~シャツの概念を曖昧にし、シャツの概念を構築する~ 2/3

シャツは1mm単位で変わりますし形を作るのは凄く難しい。だからこそ本当の服作りかなとも思うんです。白、コットン、シャツ、このシンプルな3つでどこまで追求できるかやってみたかったんです

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―IEDの時はどんなものをデザインしていたのでしょうか?

色々考えている時期でした。IEDではブルゴの時と違いデザインだけでなく最終的に形にしていたので、重ねたり、結わえたり、形に詩的な部分も加えたり・・・・様々なことに挑戦していました。

―ミラノコレクションも見に行ったりしたんですか?

お忍びでフィエラ(ミラノコレクションの会場)に行って見たりしていました。クリエイションという意味ではパリに比べて刺激は薄いかもしれませんが綺麗な彫刻だったり、モノを綺麗に作るという点では凄く刺激を受けました。

―その後CoSTUME NATIONALに行くことになるのですがそれはなぜですか?

当時Carol Christian Poellが凄く好きでそこに行きたかったのですがレディースはやっていなかったので諦めました。
働く先はIEDでの成績順に企業に推薦してもらえるんです。ファッションデザインを学んでいるのにファッションではなくアート系に行く人だったり成績が良い人ほどアトリエに行かないんです。学校の推薦でCoSTUME NATIONALから連絡が来て面接をしてすぐに採用してもらえることになったんです。

―そこでは3シーズン過ごすことになりましたがどんなことをされていたのでしょうか?

雑用からはじまり、時間があればデザインをやらせてもらったり色んな事をしました。

―CoSTUME NATIONALの後、セレクトショップの10 Corco Comoではショップアシスタントも経験されています。

デザインの仕事がない時に販売の仕事をしていました。センスも良いですし、凄く面白い場所でした。お店に並ぶのが世界の一流ブランドばかりだったのでそういうものを見ての刺激も凄く多かったです。ただデザインは常にやりたいと思っていました。
販売の仕事をしながら日本の企業さん(Dia Tricot)が新しいブランド(RenD)を立ち上げるということでデザインコンサルティングを1シーズンやらせていただきました。

―その後パリに渡ることになるのですが

コレクションをミラノで作ってそれを見せる為にパリに渡ったんです。お店を周って自分の洋服を見せてという行商をしていました。その頃は全部自分で生産していたので赤字の計算とかもせず置いてくれるのであれば置くという形で置いてもらっていました。それなりに反応は良かったと思います。

―その時のコレクションはどんな服だったんですか?

ジャージーで作ったコレクションですが色は黒でまさにハンドメイド的な服です。ミニマムではあったんですけど手でねじってデコレーションしていたり、ドレープを作ったものもありました。シャツは当時作っていませんでした。
それで作品を見せている時にデザイナーとして誘って頂いたのが0044Parisでした。私のラッキーナンバーが44番なのですが「0044」というお店のことを何も知らず自分のラッキーナンバーがあるということで入って自分のコレクションを見せたんです。そこではメンズ・レディース両方のコレクションに携わらせていただきました。

―その後再びミラノに戻り、ラフ・シモンズの手掛けるジル・サンダーのデザインチーム(womenswear)に加わり3年間、6シーズンを過ごしています(2008 A/W~2011 S/S)。

知人を介し、「試験を受けに来ないか?」という誘いを受けたのでデザインチームの試験を受けに行きました。デザイン画の試験や面接を含め3回程試験を受けた後採用してもらいました。3年間というのは最初から決めていました。

―なぜジル・サンダーだったのでしょうか。ジル・サンダーが好きだったのでしょうか?

正直な話、ジル・サンダー自身が手掛けていた頃のコレクションにはあまり興味がありませんでしたがラフが手掛けた直前のコレクションが凄く好きになったんです。当時他のブランドさんからもデザインチームの誘いがあったのですが、そのコレクションが凄く衝撃的で「こんなブランドがミラノにあるのか」って、「ここで働いてみたい」って思いました。
ジル・サンダーは大きい会社ですのでメンズ、レディースだけでなくコート、パンツ、ドレス、生地等部門毎に別れており、私はシャツやコート、ジャケットなどのショルダーピース(上物)を担当するチームにいました。パタンナーは別にいますのでパターンは一切せずデザインチーフの方とコミュニケーションを取りながらデザインをしていました。

―そこで学んだことってありますか?

凄く面白い場でしたし、とにかく刺激が多い場でした。スタッフの方もみんなセンスが良かったし、そういう人達に触れ、一緒に仕事出来たのが凄く良い経験になりました。
マルタン・マルジェラ等のベルギー出身のデザイナーが好きなのですが、そういう人達も周りにいたので少しでも彼らの文化に触れた感覚があり嬉しかったです。

―ジル・サンダーに入る時は独立することを考えていたのでしょうか?

イタリアにいるのが10年以上になったのでそろそろ日本に帰ろうかなって、「メゾンで誰かの為に働くのは最後の場所」そう思っていました。
ただその前にジャケットを勉強したいという想いがありました。それはあるジャーナリストの方が「ブランド自体の力はジャケット、コートが良いか悪いかで決まる」と言っていたのが凄く耳に残っていたからです。それまでは気付かなかったのですがイブ・サンローランもそうですし、山本耀司さんもそう。それでやらなければって思ったんです。それで話を頂いたジル・サンダーの話がジャケット等を担当するチームでの募集ということだったのでそこで勉強出来たらと思ったんです。それまで上物の経験はなかったのですがデザイン画の試験で気にいって採用してくれたんだと思います。
結果幾つものメゾンで様々な経験をすることが出来ましたが長い間独立せず他のブランドで働いたのはあくまで結果論ですね。ジャージーのコレクションを作っていた時は独立も考えましたが純粋にやりたいことをやりたいとか、行きたいところに行きたい、それをやっていただけです。だからキャリアプランを描いていたということはなかったですね。

―今のスタイルが確立されたのはジル・サンダーでの経験が大きいのでしょうか?

昔からそういうモノを好きだったというのはありますが、それに加えて削ぎ落すことの意味とか、その“意味”ということがわかったような気がします。

―ブランドを始めるまでに準備期間はあったんですか?

イタリアにいる時から仕事の合間に作り始めていましたのでそれ程準備期間はありません。

―最初からシャツブランドとして始めようとしたんですか。それともトータルでやってみた上にシャツだけに絞ったのでしょうか?

シャツだけです。自分の身の丈にあっているというか、クチュールに近いというか。シャツが好きだったんです。ジル・サンダーにいた時にシャツのデザインが凄く面白かったんです。なのでその特製を活かしてやりたい、そこからはじめていきたいなって。シャツは1mm単位で変わりますし形を作るのは凄く難しい。だからこそ本当の服作りかなとも思うんです。
それで白、コットン(綿)、シャツ、このシンプルな3つでどこまで追求できるかやってみたかったんです。

―なぜ白なのでしょうか?

白はピュアというか、染まっていない色。黒が好きな時期もありましたが自分が凄く好きな色なんです。
それに一番見やすい色だと思います。トワルも白ではないですけどそれに近いものですし。

―パターンはご自身で引かれているのでしょうか?

パターンはパタンナーさんに任せています。
もし日本で自分がファッションをはじめていたらパタンナーをやっていたかもしれない。今から考えるとですけど日本でもデザインをやってみたかった、そう思うんです。

―パターンを自身で引かないそうですがそこまでの拘りの洋服はどのように仕上がるのでしょうか?

デザイン画の時点でディテールまで全て仕上がるように描いています。縫いや仕様、構造の仕組みまで。難しいかもしれませんし、パタンナーさんには苦労をかけていますがそこが面白いんです。
自分一人で出来ることには限界がある。自分が出来るところをマックスにして自分が出来ないところはそのスペシャリストの方がそれをやってくれればよい、そう思っています。

―リサーチはされますか?

普通のこととしてしています。本を見たり、映像を見たり、ファッション書をみたり、絵画を見たり、音楽を聴いたり、それに今はウェブを良く見ています。

―服に影響を与えた音楽、カルチャーはありますか?

音楽はテクノやエレクトロミュージックが好きで、昔はクラブなどにも行っていました。そういったものが直接的にデザインに影響はしていないと思いますが音楽を聴いていると刺激は受けます。そういう音楽を聞きながらデザインをしたりもしますし。

―レディースですが、あまり性差を感じないデザインだと感じました。ユニセックスということを意識されているのでしょうか?

あくまでもレディースです。直線的な部分が多かったり、柔らかいモノより硬いモノの方が好きだったり、自分でもメンズっぽいデザインをする人だとは感じています。しかしラインはレディースを意識していますし、あくまでレディースを意識して作っていますのでユニセックスということでのモノ作りは考えていません。

―メンズには興味がないのでしょうか?

今までメンズは基本的には自分ではやらないと決めていたんです。これからは少しずつ意識しないといけないと感じていますが基本的にはいつもレディースでデザインを考えてきました。

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