Interview

S.NAKABA ~Wearable sculpture~ 3/4

僕が見つけた素材の活かし方を更に伸ばしていくことで、新たな可能性みたいなものが見えてくることもあるのではないかなと。もしかすると人間が生き延びる方法や才能の開発にも繋がっていくことかもしれない

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―製作過程において、デザインやビジネス以外で何か考えることはありますか?

綺麗だから、美しいから、売れるからということだけでなく、もう1つの興味としてあるのが、僕のやっていることってもしかすると未来の可能性のヒントになるのではないかという思いもあるんですよね。例えば僕が見つけた素材の活かし方を更に伸ばしていくことで、新たな可能性みたいなものが見えてくることもあるのではないかなと。もしかすると人間が生き延びる方法や才能の開発にも繋がっていくことかもしれない。社会のシステムや文明のあり方も壁にぶつかっていますよね。少し大げさになってきましたが、それで、バブルでなくとも皆が豊かに生きていける方法というものはあると思いますし、考えなければいけないでしょう。今一番解決しなければならないことってそれじゃないかなって。

―そういう思いもあってワークショップなども行なっているのですか?

そうですね。できればこれからもと思っています。今までは自分のことだけで精一杯でしたからね。皆で校庭の草むしり、というようなことを小学生のときによくやらされるでしょう。ああいうことが一番苦手な性格で、どうやって逃げ出そうかばかり考えているような子供でしたから。(笑) ただ、好きなプラモデルあげるよと言われれば、いくら遠くても歩いて取りにいってしまう。人と一緒に何か、とかは嫌いで。これって完全にエゴですけれど、自分の好きなことだったらいくらでも力を出せる。やはりそこが一番エネルギーの出るところだと自覚して、自分が欲しければどんなに大変でも作る、カメオ彫刻もそうですが、あれは日本で現在作ったところで採算が合わないしアンティークのカメオを超えるようなものを作ることは不可能だと言われていました。コストで考えればそうなのでしょうけれど、でも僕は自分の好きなものが手に入らないならそれに匹敵する物を作る、でも、どんなに大変でも出来上がったとたんに気が済んでしまい、興味は次に作る物に移ってしまうので1人でも欲しいと言ってくれる人がいればいいわけです。好きであれば出来るでしょうと。エゴから出発しても究極のエゴなら人の役に立つかもしれないと思い始めています。この間も『中場さん、どうやったらあの様なカメオが作れるようになるんですか?』と聞かれた時、僕は、『欲しくてたまらないから作れたんです、時間をかけても、技術を磨いても、努力では作れないんです』と答えました。

―カメオ彫刻は職人に弟子入りするわけでなく百貨店などでカメオ職人によるワークショップを目で覚えて作り方を学んだと聞きました。

イタリアのカメオ彫刻家やロシアの琥珀職人の方が来た時に作るところを見学したり、甲府の水晶彫刻の工場を見学に行ってみたり。徒弟関係のようなことは嫌でしたので。自分でヒントを見つけることのほうがおもしろいですからね。工具も自分で作って見様見真似で作リ始めました。洗濯機のモーターを利用して研磨機も作りました。サンドブラストも自分で制作したものです。ただ複雑な工具を使わなくてもいいものを作る人はいますから本当に人それぞれだとは思いますが。

―SHOPもご自身で作ったと聞きました。

あれは本当に大変でした。(笑) 半年かけて殆ど一人で作りました。 例えば朝、アイデアが浮かんでその勢いで一気に作った物の様な、荒削りな、いわば試作品を販売するということは自分のお店じゃないと難しい。それで92年に『S.NAKABA』をオープンさせました。お店というより毎日が実験のような7年間でしたね。それまでは宝石や貴金属を扱うことが多かったのですが、92年頃から鉄やアルミを使用したジュエリーを販売するようになりました。

―その後SHOPを閉めたあとはどうされていたのですか?

98年に閉めてからはプランタン銀座のアンティークバザールの中に出店していました。アトリエで作品を作りながらも東京でお店をやる方法はないかなーということを考えて、平日作品を作って土日だけオープンするようなお店なら出来るかなと。色々考えた結果、何度か行った事のあるプランタン銀座アンティークバザールが、年に4回開催していることを知っていましたからもしかしたらやれるかもと思って。アンティークのパーツを現代的なジュエリーに作り替えた商品などを、主催者の方に見てもらった所、「新しく作った商品はお客様にきちんと説明してくれれば販売しても良いでしょう」と言ってくれました。2週間の開催を年に4回ということはそれって週末お店を開く日数と同じになりますよね。ドキドキしながら初日を迎え、販売し始めたのですけれど、評判が良くて。15万や20万のジュエリーも売れましたね。デパートの方も驚きながらも大変喜んでくれましたね。お客さんが来る前にアンティーク業者の方が自分の為に買っていって無くなるなんて事もありました。それでお店を閉めることに不安が無くなったというか。

―今都内で取り扱っているSHOPはミキリハッシンだけですよね?

そうですね、限定販売という様な考え方では有りませんが、なにより彼らとの信頼関係、そしてミキリハッシンの成長を見ているのは楽しくて。あとは年2回の個展がメインですがメールで海外や地方の方からお問い合わせや注文を頂いたり、うまく調整出来れば、お客様にアトリエに来て頂く事も有ります。

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