Interview

b STORE 1/2

2001年の設立以来、ロンドンのアイコン的コンセプトストアとして、最先端の話題を発信する「b STORE」。2006年よりMATTHEW MURPHY氏とKirk Beattie氏の2人のデザインチームによるb STOREのコレクションラインをスタート。British Fashion Awardsでは”Shop of Year”を受賞し、 現在ヨーロッパを中心に世界50店舗で展開している。

設立10周年を記念し、デザイナーの1人であるMATTHEW MURPHY(マシュー・マーフィー)氏がb STOREのコレクションラインと共に来日。3月16日〜4月1日には、TOMORROWLAND渋谷店に日本初となるポップアップショップをオープンさせた。

ロンドンのクリエイティブシーンの中心にあり続けるb STORE。今回、ブリティッシュテイストを取り込んだ物作りの背景やショップについて、来日したMATTHEW MURPHY氏に話を伺った。

―まずはじめに発表されたばかりの2012-13A/Wコレクションについて教えて頂けますか

コンセプトはプリントそれとファブリックからスタートしています。b STOREはロンドンブランドの中でもとても英国的なブランドなのでファブリックからブリティッシュを表現出来るようなものを探しました。プリンスオブウェールズチェックを使用したジャケットにチョークストライプのジャケット。勿論シルエットはb STOREらしく短めにモダナイズされています。そういったことがコレクションのスタートです。
それと少し意外な気もしますがホームレスの人々の着こなしからもインスパイアされています。何枚も着こんだり、どこかで見つけたコートをすぐに着ちゃったようなオーバーサイズのコート。セーターのニットもどこか古着屋で売っているような風合いを出しています。シルエットは短めのジャケットにワイドなパンツをあわせ、クロップドジャケットにワイドパンツ。スリムなトラウザーズに大きめのトップスやシャツをコーディネートしたりシルエットを新しくクリエイトしています。
b STOREは毎シーズンテーマなどは決めたりはしていません。シルエットを毎回少しずつ変化させていったりしています。コレクションを製作する前にはムードボードを作るのですが音楽もインスピレーション源にあり今シーズンは70,80年代のデヴィッド・ボウイや70年代後期や80年代前半のポストパンクの音楽、ジョイディビジョンなどのバンドもイメージソースとなっています。
リバティーとのコレクションではストリートウェアのエッセンスも入っています。BMXのトップをイメージしたトップ、ですがスポーツすぎないようにb STORE流に。シャツはルーズでワイドに、シンプルに襟の下にボタンがあります。ジャージーにコットン、生地のミックスを楽しんだアイテム。今シーズンのコラボレーションは伝統的なフローラルプリントは選ばずリバティーの新作の柄を生地に使用しています。
また今シーズンはグローバーオールとコラボレーションもしています。グローバーオールの昔の生地にb STOREのシルエット。ダッフルコートはダッフルブレザーになっています。

―今シーズンのLibertyとのコラボレーションは通常イメージする花柄のリバティプリントとは違ったイメージで凄く新鮮ですね

そうですね。今までは新しいLibertyのプリントがあまり良くなかったので過去のヘリテージから選んでコレクションを製作していたのですがニューデザインチームが作った新しいリバティプリントが素晴らしかったので今季はそれを使用しています。今まではコットンのファブリックしかなかったものがウールのファブリックが製作され、この先デニムにプリントをしたり、生地も開発していく予定です。またLibertyのヘリテージのペイズリー柄をデジタル化したものも使用しています。それから花柄を拡大して弾きのばしカモフラージュに見えるものや、アニマルプリントも凄く人気でした。トリミングの部分にだけプリントを使ったシンプルなアイテムもあります。

―そもそもなぜLibertyとコラボレーションしようと思ったのですか

b STOREはヘリテージを持つ英国ブランドとのコラボレーションを心がけておりLibertyもその一つです。その他のコラボレーションにはグローバーオールやバラク―タ、それにUndergroundもそうです。英国製のものをb storeのエッセンスでモダンに仕上げるというのをコンセプトにしています。

―Undergroundとの靴のコラボレーションは少し意外な組み合わせな気もしました

私たちはコラボレーションをやる意義を大事にしたいと思っています。Undergroundブランドのシグネチャーともいえる厚底のクリ―パーシューズがオウセンティックで良いと思ったのでコラボレーションをしたいと思ったのです。UndergroundはCamden townでスタートし今もCamdenに会社があります。私たちのブランドは90年代初頭のクラブシーンもインスピレーションとしてありそれを象徴しているのがCamden townという街、カルチャーなのです。ですからUndergroundとのコラボレーションはb STOREにとってとても自然なことでした。b STOREの生地を使ったクリ―パーシューズはルックでスタイリングするとまるでb STOREのエッセンスそのものです。

―London Fashion Weekの前日にはLibertyにてb STOREのポップアップショップもオープンしましたね

”b STORE Loves Liberty”と題したLibertyのポップアップショップは以前あったSaville Rowのお店と新しいKingly Streetのお店の要素を合わせたものです。新しいお店のストラクチャーを設計したTom Finchがポップアップショップのインスタレーションも担当しています。以前使用したリバティのプリントをビニールシートにプリントして展示しました。ウインドウはフィルムのようになっているのですがこのデザインはColville-Walkerがデザインしたものです。彼はb magazineのアートディレクターでもあります。

―「ファッション・アート・デザインなどの若いクリエイターのコレクションの発表の場」をコンセプトとして掲げていますがセレクトの基準を教えてくれますか

お店のコンセプトとしてインテリアであってもファッションであってもアートであってもとにかく“クリエイティビティ”を大事にしています。お店がまるでクリエイティビティのラボラトリティ(実験室)のようなコンセプトで若いクリエイターを受け入れています。

―その中でも現在注目しているアーティストやデザイナーはいますか

b STOREでインスタレーションをやったこともあるのですが共にセントラルセントマーティンズ卒のコラージュアーティストとフィルムアーティストの双子のアーティスト、Fred&Rudolphに注目しています。
b STOREではお店でインスタレーションを組む、コーナーを作るというのではなく、インスタレーションがお店の一部になるようにフィルムが流れていたりコラージュのアートピースがあったり、お店全体がアーティストの作品の展示場所となるのです。
また2012秋冬コレクションではLuke Stephensonというフォトグラファーとフィルムを撮影しました。彼が撮影したフィルムではモデルが洋服を着ているのですが頭がなかったりウェス・アンダーソン風のフィルムになっています。
ファッションデザイナーに関していうとよりたくさんのデザイナーと仕事しているので絞るのは難しいですね。新しいデザイナーではないのですが何年もクリストフ・ルメールと仕事をしていて現在彼は韓国のBean Poleというブランドとコラボレーションをしているのですがそのコレクションが凄く良いです。ロンドンのメンズデザイナーでBertholdというデザイナーも良いです。b STOREのエッセンスとは少し違い彼の作品は彫刻的ですが好きですね。また凄く長い間一緒に仕事をしているのですが未だにフレッシュなのがSophie Hulmeです。彼女は凄くイギリス人的なデザイナーだと思います。彼女が作るバッグも良いですし、秋冬はレーザーカットで恐竜をあしらった洋服を作っています。彼女の作品は日本でも人気が出そうですね。

―今年はb STOREがオープンしてから10周年が経ちました。その間にロンドンのクリエイティブシーンはどう移り変わり、現在の状況をどう感じていますか

勿論非常にたくさんの変化があったと思います。b STOREがConduit Streetにお店をオープンした当時はBOOMBOX等のクラブシーンが非常に活気がありGareth Pughなどのデザイナーが出てきました。
そこから今はよりアーティストやアートをファッションに取り入れたシーンになったと思います。以前はロンドンのクリエイティビティをロンドンの中だけで消化しており、世界に目が向いていなかったのですが、Christpher Kaneをはじめとした若手が出現し、世界的な評価を得て海外に出るようになり、ロンドンだけにフォーカスにするのではなくインターナショナルに認識されるようになってきたと思います。
b storeもオープンした当初はクリエイティビティの部分だけにフォーカスし、色んなクリエイティブなモノが生まれていたのですが10年続けていくうちにビジネスの面も考えなければいけなくなり今はもう少しビジネスにも重点を置いています。

―b STOREは昨年Saville RowからKingly Streetにお店の場所を移しています。その理由を教えてください

私たちはジプシーのように一つの場所に留まることが出来ないのです。スペースがクリエイティビティを生むと思っていますのでそれぞれの場所でコンセプトは違います。
現在のKingly Streetのお店はより新しいダイレクションに向かって進んでいます。お店とブランドにとって常に前進していくことは大事だと思っています。お店がオープンした当初から10年間通い続けてくれているお客さまも多いのでそういったお客様にも常にエキサイト出来るような新しい要素を取り入れたいと思っています。

―Saville RowやConduit Street等の場所に比べ現在の場所はCarnaby Streetにも近く今までで一番若者や新しい顧客さんが入りやすい場所でもあると思います

Saville Rowの店はストリート自体を凄く気にいっていたのですがSaville Rowにあるというだけでテーラリングというイメージが先につきそこの道にさえいかないということもあったと思います。
今のKingly Streetは道自体の名前はそれほど知られていませんし、新しいストリートに店を構え新しいコンセプトでより若いお客様にもきていただけるようにb STOREのマークも新しくよりカラフルになりました。

―b STOREはブランドやショップだけでなくb magazineという雑誌も発行しています。なぜ雑誌を始めようと思ったのですか

4年前にSelfridgesでポップアップショップをしたのですがその時にポップアップペーパーというポップアップショップのコンセプトを説明したフリーペーパーを作ったんです。雑誌を作る予定はなかったのですがそれから「次はいつなの?」というリクエストがたくさんあり、掲載する内容もあったので雑誌を作ることになりました。
b magazineは内容を重視しており、もし掲載する内容がなければ作りません。年に2回出版することだけは決めているのですがスケジュールは決まっておりません。b STOREに関係があるブランドやアーティスト達、b storeというお店自体のマインドを雑誌で表現しています。
ここ最近ロンドンではレストランが新しいクラブのように注目されているのでそのシーンを最新号ではフィーチャーしています。その他にはNo ZINEというアート、ミュージックのフィーチャーをしたりb storeの10周年の記事、Saville Rowで行ったYamataka Eyeのエキシビジョンについて、家具デザイナーのMartino Ganperのインタビューなどもあります。直接的ではないかもしれませんが全ての記事がb STOREと関係しています。

―Matthewさん自身もb magazineの編集に直接関わっているのでしょうか

私自身はb magazieのチームではありませんがクリエイティブの一員として関わっています。
マガジンではルックブックとショーをスタイリングしているJason Hughesがファッションを担当し、LibertyのポップアップショップのインスタレーションもデザインしたColville-Walkerがアートやデザインを担当しています。
ただ雑誌、ブランド問わずb STOREのチームみんなで頻繁に会うので雑誌を始める前にその号のディレクションについてみんなで話し合いをします。
私はブランドのダイレクターとして何かの分野に長けている人がいるのであればその人にその分野の仕事を任せるべきなのではないかと思っています。

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