Interview

Miguel Villalobos & Graham Tabor “HIC ET NUNC”

2012年3月に日本初披露となったニューヨークを中心に活躍するアートユニット、Miguel Villalobos & Graham Taborによる「HIC ET NUNC」展。

フォトグラファー、イラストレーターとして映画・ファッション・アート界に精通するMiguel Villalobos(ミゲル・ヴィラロボス)氏。レディ・ガガやマイケル・ジャクソン等の有名アーティストの衣装グラフィックも担当している。
ファッションデザイナーであるGraham Tabor(グラハム・テイバー)氏はヘルムート・ラングではシニア・デザイナーを、カール・ラガーフェルドではチーフ・ニットウェア・デザイナーを務めた。

パリ・オーストラリアで注目の的を得た、段ボールを用いた5メートルに及ぶ大型のクジラが登場するインスタレーション。今回「HIC ET NUNC」と同名のアーティストブック出版を記念し、念願の日本での展示会が実現。クジラのオブジェの一部、ブック内に納められた写真作品等が、ここ日本で公開された。Miguel Villalobos氏とGraham Tabor氏に今展示を通して、その活動や作品制作について伺った。

―まず今回のインスタレーションについて詳しく教えて頂けますか

今回のインスタレーションには2つのパートがあります。まず一つ目は HIC ET NUNCの本からの写真、二つ目は2010年の夏にパリのギャラリーで発表したスカルプチャー、オブジェのドローイングです。ギャラリースペースの中にオブジェを飾り実在しない美術館、フェイクミュージアムを作ろうと思ったのが展覧会をするきっかけになりました。オブジェのモチーフは絶滅した動物や人の記憶に残っている動物です。シーラカンスにおいては絶滅したと思われていましたが、発見されて現在に生存しています。そういった動物達と人間の関係性を表現したかったんです。

HIC ET NUNCの本には、今回の展覧会のインスピレーションの源の一つとなったルーマニアへの旅での塩田の中にあったスパ施設であったり、パリの自然史博物館でみた様々な化石などの写真が納められています。自然の中にある状況に人間がどう関係していくか、人の力が加わることにより自然がどう変わっていくか、ということの関係性を示したかったのです。

―代表的な作品はクジラの彫刻ですよね

過去に一度目はパリで2010年の夏、二度目は昨年の2011年の夏にオーストラリアのパースにある PORTAL+というギャラリーで見せています。同じようなものを見せていますが、若干作品は異なります。一番初めのパリでは大きなオブジェが二つあり、中心にドードー鳥の作品があったり、シーラカンスのオブジェも展示していました。
クジラは勿論大きいですし目立つとは思いますが、場所によって展示方法も変えたりしています。

―絶滅危惧種に着目したのはなぜでしょうか

絶滅危惧種には元々凄く興味があって、そのなかでもドードー鳥に惹かれていました。ドードー鳥が絶滅したのは最近にも関わらず剥製も何も残っていませんし、骨と少しだけの肉と、羽くらいしか残っていませんので実際の姿はわかりません。だからそれを自分達の手で創造しクリエイトしようと思ったのです。

―二人で作品を作ることになったきっかけはなんですか

Graham氏:以前から一緒に仕事をする機会が多くて、初めて行ったのは雑誌のカバーページの仕事です。ミゲルがフォトグラファーで僕がスタイリングを担当しました。そういった撮影の為にオブジェを作るようになったり、マスクを作るようになったのがきっかけです。

―なぜ段ボールという素材に着目したのですか

写真撮影の為の小道具を作ろうと思った時に使い始めたのが段ボールでした。というのも段ボールと言う素材はどこでも手に入るし、凄く安いし簡単に手で作品を作ることが出来ます。捨てられた段ボールがそこら辺にたくさんあるのでそれを助けてあげたい、再利用して新しいものに蘇らせたいとも思ったのです。

―段ボール以外にはどのような素材を使っているのですか

パリのマレ地区にMusée de la Chasse et de la Nature(狩猟自然博物館)という博物館があるのですが、そこに展示する作品を製作中で、それはいつものように段ボールと樹脂で固めた作品だけでなくブロンズを使用した作品も作っています。

―パリとオーストラリア、東京でそれぞれ反応は違いますか

どこの都市でも言えることですが、外から見える場所で展示をしているので歩く人が必ず足を止めて作品を見てくれます。オーストラリアでの反響は非常に良かったです。75%の作品が売れてショーが始まってから僅か15分でシーラカンスのスカルプチャーも売れてしまったんです。今回日本にあまり作品を持って来れなかったのはオーストラリアでほとんど作品が売れたからです。

―クジラのような、とても大きい作品はどのように運ぶのでしょうか

作品はバラバラに解体出来るのでそれぞれを分け、木の箱に入れて運んでいます。それでまた組み立てるのです。

―日本のアート作品等にも興味はあるのでしょうか

NYでは見ましたが日本では見ていません。アートフェア東京があるのでそこで色々と見ることができればと思っています。
日本のアーティストだと森山大道と草間彌生が好きです。

―ファッションにも造詣が深いお2人ですが、ファッションを題材にしたインスタレーションなどは行わないのでしょうか

Graham氏: 過去に一度やったことがあります。2008年のイエール国際モード・フェスティバルにファイナリストとして出展しました。その時の作品をその年の6月のパリのメンズコレクション期間中にインスタレーション形式で発表しました。そこではアートの要素も入っていましたが、ちゃんと洋服も見せていましたし、よりファッションであったと思います。

―ミゲルさんはイラストレーションも描かれており、レディーガガのコスチュームグラフィックなども手掛けていたそうですね

衣装デザイナーの友人がいてその彼と密に仕事をしているので、レディーガガのヘッドピースの仕事も彼から頼まれて製作しました。モンスターボールのツアーラベルのデザインをしたり、Tシャツのデザインもしました。
現在は5月よりメトロポリタン美術館で行われる「Schiaparelli and Prada: Impossible Conversations」展の為のイラストもデザインしています。そのイラストはポストカードになって売られてその利益はチャリティーになるんです。

オープニングレセプションの様子 写真右:Miguel Villalobos, Tiffany Godoy, Graham Tabor Photo©Mutsumi Akita

―今回出版された本について教えて頂けますか

今回の本に関して言うとアーティストモノグラフです。自分達の世界観を伝えるようなものになっています。スカルプチャーなどの作品も入っていますがカタログではありません。作品を使ったバックグラウンドや雰囲気などを写真で表現しています。

―コニーアイランドの浜辺でオブジェを撮った写真作品等がありますが、撮影はどういったものでしたか

クジラ等のオブジェは自分達で持って行きました。コニーアイランドは壊れたような雰囲気のあるところで、その部分で絶滅危惧種とリンクするものがあると思ったんです。それで自分達でスカルプチャーを持って行き、島をバックに撮影しました。

―自分達だけで撮られたんですか

自分達だけで撮りました。

―日本の活動も含め、今後どのような活動をしていきたいですか

日本に住めたらいいですね(笑)。僕等は日本の友達も沢山いますし、みんなにどうして日本に住まないのか、と言われます。
制作に関しては現在、パリのギャラリーの為の作品を作っています。いつでも作品が出来たら見せて欲しいと言われているので、次回はもう一度オーストラリアのパースで作品を展示するか、もしくはNYの財団にも興味を示していただいたのでNYで個展をやるかもしれません。それにロンドンでも話があるので何かやるかもしれませんね。

Interview & Text:Tomoka Shimogata, Masaki Takida

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