Interview

Fab4

70年代末から80年代にかけてピーター・サヴィルが手がけた、Factory Recordsのグラフィック。それらはRaf Simonsを始めUndercoverやSupremeなど数多くのレーベルによりファッションに持ち込まれ、時にはコマーシャルなアイコンとして消費されながらも、今年のセントマーチンの卒業ショーでもインスピレーションにしている学生が見受けられたりと、普遍的なパワーを持つグラフィックは30年たった今でも色褪せることなく人々を魅了する。

そんな彼のグラフィックが大胆にフィーチャーされた印象的なショップロゴやウェブサイトに、「Wrong or Right, It’s Alright」というメッセージを添えたショップ、「Fab4」。

神戸のショッピングエリアである三宮に4月にオープンしたばかりのFab4は、Jointrust、the Sakaki、Facetasm、poral.といった注目の若手ドメスティックブランドを中心に取り扱い、随所にUKカルチャーからの影響や強い意思を感じさせながらも、開放的な店内はどこかアットホームで、居心地の良さそうな優しいムードに溢れている。

オープンを記念して、創設者であるMIYAZU氏(メンズ担当)とFURUTANI氏(ウィメンズ担当)に、ショップに込めた想いを聞いた。

―ショップオープンおめでとうございます。それではまず、ショップのコンセプトとオープンに至るまでの経緯を教えていただけますか?

MIYAZU:
居心地の良い空間ということですね。
ショップは常に変化し続けるモノだと思っているので、商品構成に関わる継続的なショップコンセプトは設けていません。周囲に影響されずにクリエイティブな部分で共感できるブランド、プロダクト、アーティストを扱うということ位です。
僕は地方や東京のセレクトショップでずっと働いていたのですが、元々セレクトショップって世界中のヒト/コト/モノといった価値観を一つの箱に繋げる場所だと思うんですよ。
でも今は、経済状況や時代も変わりウェブショップやファストファッションの台頭等含めてファッションの楽しみ方も買い方も人それぞれで違う。
となると、東京の様な首都ではなく地方でやるなら普通にショップを作るのではなく、今回はもっと深く掘り下げてブランドやアーティストだけではなく職人や教育機関含めて垣根を取り払う全てのハブみたいなショップを創りたいなと思ったのが始まりですね。

FURUTANI:
私はその話を聞いて単純に面白いなって思って参加を希望しました。
オープンまではそれぞれ前職を続けながら定期的にミーティングを行い、商品構成や方向性を決めて行きました。

―関西の中でも、神戸というロケーションを選ばれた理由は何だったのでしょうか?また神戸のファッションシーンはどのような感じなのでしょうか?

MIYAZU:
単純に、僕たちが提案することに対して、希望するブランドが取り扱える場所が神戸だと可能だったのと、フルタニの地元という2点がまずあって。

FURUTANI:
私はこの仕事を始めたスタートが神戸だったので、居心地が良い=くつろげる場所となると独特の柔らかい空気感がある神戸が一番ベストかなと。それに神戸にはうちの様なお店は少ないですし、周りの友人も、うちみたいなショップを求めていた声も多かったので、私からこの場所を強く推しました。
神戸のファッションシーンは大阪に比べ規模は小さいですが、どのお店も見せ方に拘りがあって、特にバイイングの目利きは他の地方に比べて鋭いと思います。バーニーズやロンハーマン等関西では神戸にしかない店舗も多く、地方出店に対しての試験的商圏としての地位があるのでお客様の感度は高いです。
クラブシーンが大きくはないのもあって、デザイン性の強いアイテムよりはクリーンなブランドを好む傾向が強いですね。

―取り扱いレーベルは日本の若手デザイナーを中心に、どこかリラックス感があって着心地の良さそうなものが多いように思います。レーベルをピックする際の基準となるのはどのような要素なのでしょうか?またショップのメインとなるレーベルをいくつか紹介してもらえますか?

MIYAZU:
ウィメンズもメンズも、純粋に気に入ったものをバイイングしています。
僕のスタイルとしてシーズン毎にバイイングテーマを設定しているので、今シーズンはFREEというテーマでバイイングを行いました。そこから連想するシチュエーションやスタイルをそれぞれのアイテムに反映させています。
小さなショップということで取り扱えるブランドが限られるので、シーズン毎にテーマを設定する事で少しの変化を加えながら、上手くエディットしていく予定です。
また今回は1stシーズンなので関西では取り扱いがないブランドを意識的にピックはしています。

FURUTANI:
ウィメンズのメインはporal.です。メンズラインのWhite Mountaineeringとは違ってクリーンなイメージを保ちつつ、強さや儚さ、静けさにより独立した世界感を持つ女性像をデイリーウェアで表現しています。メンズデザイナーならではのメンズウェアの細かな仕様やディテールを随所に施しており、ウィメンズを形成する中で一番共鳴しているブランドです。
そして、facetasm。既に東京のニュージェネレーションを牽引しており、人の心を動かすモノ作りで私たちのショップにとっては必要不可欠なブランドです。メンズに比べるとレディースの取扱店は不思議と少ないのですが、メンズよりもテーラーリングやドレス要素が強く、ジャンルレスな構成でとても気に入ってます。
ウィメンズ、メンズ共に、割と私たちと世代が近く、自然体でモノ作りをしているブランドが多いのが特徴です。

MIYAZU:
メンズはまだブランド数が少ないですが、最も重要なのはthe Sakaki。ここ近年のデビューブランドの中でもベストだと自分は思っています。彼の作る服は一目で個性と美学を感じ取る事ができ、同じスタートの時に取り扱いが出来て光栄です。
他には、反する2つの視点を、デザインスキルを用いてひとつの洋服に落とし込むJOINTRUST。2次加工でデザインの可能性を別のベクトルに広げている点が気に入ってます。
そして、ユニークな着眼点から遊び心ある服を作っているナゲッツ。東京ブランドならではの分かりやすさがある服は、今の時代に合って面白いと思います。
この3つは今の東京らしいモノ作りで今後が楽しみです。

―Fab4のお二人が今まで積まれてきた経験やバックグラウンド、ファッション遍歴を教えてください。現在に至るまでどのような勉強やお仕事をされてきて、どのようなファッションやカルチャーから影響を受けてこられたのでしょうか?

MIYAZU:
もともと音楽と映画がずっと好きでした。音楽はマッドチェスター周辺やブリストル周辺から始まって、そこから何でも聞いていました。10代の頃はライブハウスばかりに行っていました。ユースカルチャー要素があるモノにいつも惹かれます。
あとはファッションですね。僕らの世代は東京発信のブランドもあって、アントワープ系のRaf SimonsやストリートのSupreme、STUSSY、そしてNicola FormichettiやNOKIとかのデビューしたての頃ということもあって、全てが刺激的で面白くて、同時期に色々見て来た事が大きかったですね。
漠然と自分のお店を持ちたいなと思って、18歳位から販売の仕事を初めて22歳からバイイングを担当する事になりました。当時は右も左も分からないまま独学で行っていました。
デザイナーの話を聞くのが好きで、そのせいか新進ブランドのピックが人より得意だったので、そこを活かしたバイイングをメインに行っていました。自分のバイイングスタイルの基礎が出来たのは、この頃ですね。
25歳で上京してショールーム運営に携わる事になって、そこは何でも自分でやらないといけない部署だったので、セールスから生産、計数管理面まで全般に渡り担当していました。その後、大きいショップ(Kitson Japan)の立ち上げ案件があって、そこでバイヤー/マーチャンダイザーとして参加しました。ここでは前から試したかった52週MDとメディアを連動させるメディアミックスを用いた手法論で、バイイングを形成していました。

FURUTANI:
私は元々古着やメンズライクな服装が好きなので、メンズブランドの小さいサイズを着たりしていました。
古着屋で働きたいなと思っていたのですが、募集している所がなく、丁度セレクトショップが台頭し始めた時でもあったので、その頃よく通っていたUR(アーバンリサーチ)に入社しました。そこでブランドストーリーや販売の仕事の深さや面白さを知りました。
より高みを目指す為に、その後ビームスや百貨店勤務等、様々な販売経験を積んで今に至ります。

―ピーター・サヴィルのグラフィックから引用されたショップロゴやウェブサイトのデザインがすごく印象的です。彼のFactory Recordsのグラフィックは、今でも影響力は大きくて、純粋に人々の心を動かす普遍的なパワーを持っていると思います。
彼のグラフィックのどのような点に惹かれますか?また何故今でも特別な存在であり続けているのだと思いますか?

MIYAZU:
今回引用した理由はまさにそれで、彼のグラフィックには人の心を動かす普遍的なパワーを持っていると思っています。
ピーター・サヴィルのデザインは、本人も語っている通り、「その時代のイメージというか、どう感じ考えているか、何が好きなのか、何が起きているか、何が影響を与えているのかに興味がある。それを僕はデザインにする」というものです。
ファッションは時代を映す鏡だと思っているので、僕はそれをファッションで、ショップを通してライフスタイルの提案をデザインしていきたいと思っています。
雲を掴む様な話かもしれませんが、僕は泣いたり笑ったりできるショップを創っていければと思っています。ただ服を買うという行動だけではなく、人の心(感情)を動かしたいと思っていて、それに対して、様々な感情を色に例える形で彼のグラフィックを引用しています。

―ピーター・サヴィルの他にも、ビートルズの愛称であるFab4というショップ名、また「Wrong or Right, It’s Alright」というメッセージなど、UKの音楽史からの強い影響を感じますが、そのようなシーンのどういったところが魅力的で、どのようにショップに反映されていますか?

MIYAZU:
1980年代後半から1990年前後にかけてマンチェスターを中心に起こったムーブメントである、マッドチェスターと呼ばれるシーン。共同体意識のもと、アーティストと観衆の上下関係や垣根を取り払うことを目指したこの時代、特にストーン・ローゼズの思想からは強く影響を受けています。
「Wrong or Right, It’s Alright」というメッセージに関しても、自分の中で凄い拘りはある反面、どっちでもいいじゃんという天の邪鬼な気持ちもあって、結局、僕らは①デザイナー(作り手)②ショップ(売り手)③カスタマー(買い手)のフィルターを通る訳なので、何が正しいか悪いかとか、どれが良いか悪いかなんて誰が決める訳でないし、自分やカスタマーが良いなって思えればそれでいいじゃんって。
ただ、それを問いかけるだけじゃ無くて、きちんと共鳴させるハコが必要だと思っているので、その1つのハコがFab4として存在すればと思っています。
僕は何かに優れている訳ではなく、どちらかいうと劣等生タイプなので、出来る限りデザイナーとコミュニケーションを取った上でバイイングを行っていて、ただの売り手ではなく、作り手に近い立ち位置でいる様に心掛けています。

―現在のUKのファッションや音楽シーンについてはどう思われますか?ロンドンは常に若くて才能溢れるクリエイターが集まっていて、おもしろい若手ファッションデザイナーも沢山います。

MIYAZU:
J.W. Anderson、NEW POWER STUDIO、KOMAKINO、CHRISTOPHER SHANNON、Louise Amstrupといった近年のデザイナーには、最も惹きつけられます。
UKのデザイナーにはそれぞれの強さや美学があり、不景気で人々がファッションから離れてしまいそうになっている今、リアルクローズがメインになって行く他のコレクションに比べて、ロンドンの若手はクリエイションに創造性があり一番面白いと思います。
実際に作品や商品を見る機会が地方だと少ないので、作品を見ていないブランドもありますが、ショップの環境が整えば足を運んで展開したいなと思っています。
最近クラブに足を運んでいないのでダンスシーンは疎いのですが、音楽シーンについては個人的にストーン・ローゼズの再結成は最高のニュースだったので、その周辺やフォロワーにまた注目しています。

―今後のショップの展望を教えてください。今後も国内の若手デザイナーを中心にされていくのでしょうか?それとも海外のレーベルも視野にいれていらっしゃいますか?他にも何かニュースなどあれば教えてください。

FURUTANI:
まずは近日中にWEB STOREを立ち上げます。ここでは少しWEB MAGAZINEの要素を入れて、ショップとブランドの世界観を実店舗とはまた別の形で表現出来るように作成中です。
ブランドに関してはAWよりブランド数を増やします。カレン・ウォーカー、ピーター・イエンセン、フィーニーをお取り扱いします。アーティストも随時増やして行く予定です。

MIYAZU:
メンズはまだ展示会が終えていないのですが、いくつか増やす予定です。今は国内がメインですが、今後は海外のレーベルも視野に入れています。現状の取り扱いはNYのブランドが多いのですが、もっとロンドンのブランドを増やしていきたいです。
あと各ブランドにそれぞれ別注商品も依頼しているのですが、環境と条件が整えば企画展を行っていこうと考えています。シーズンテーマのサイドストーリーとして各ブランドと一緒にアイテムを作っていければと思っています。これは年内に一度試験的に出来れば良いかなと。
当面はオープンしたばかりで認知度も低いので、自分たちが出来る事を日々やって、お客様に伝えていければと思っています。

Fab4

Address:3F Thanks BLD 2-5-8 Sannomiyacho Kobe city
TEL : 078-327-8285
Mail:info@fab4.jp
Shop Hours: 11:30-20:30 (不定休)
URL : http://www.fab4.jp/
facebook : http://www.facebook.com/fab4.kobe
Twitter : https://twitter.com/#!/Fab4_Kobe
ZOZONAVI:http://navi.zozo.jp/shop/?sid=7131
Blog:http://fab4-fuyan.blogspot.co.uk/

Interview & Text:Yasuyuki Asano

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