Interview

Karen Walker

ファッションカレッジ在学中に自身のブランドをスタートさせ、ニュージーランドを拠点に2004年より、ロンドンコレクションに参加、2007年に発表の場をニューヨークに移す。現在、NY、LONDONをはじめ世界中の600店舗ものストアにて取扱いがあり、Rihanna、Florence Welch、Natalie Portmanなど多くのセレブリティから愛され続けているブランドKaren Walker。

「Karen Walker」のアイウエアラインから、POP UP STORE「Candy Bar」が初登場。記念すべきCandy Bar第一回目を2012年5月、東京RESTIRよりスタート(6月6日にて終了)。今回のプロジェクトや彼女のクリエイションの源泉など来日したKaren Walker氏に直接話を伺った。

―「Karen Walker」のアイウエアラインから登場した「Candy Bar」というプロジェクトについて教えてください。なぜアイウエアに特化したプロジェクトだったのでしょうか?

世界中で300店舗を超える数のKaren Walker Eyewearの取り扱いがあります。その中でも上質で選りすぐりのお店においてスペシャルなことをしたかったというのが一つの理由です。
洋服を取り扱っているお店であれば世界観を伝えやすいのですがアイウエアだけを取り扱っているお店ではなかなか世界観を伝えるのは難しい。ですが今回はアイウエアを取り扱っている店舗の方々にもちゃんとKaren Walkerの世界観を知って欲しいと思ったのです。
短期間のなかでポップアップショップでしか見せることが出来ないような限定のものも含め、3次元的に見せる。Karen Walker Eyewearというコレクションの延長でありつつも更に集中して世界観を見せることが出来る、そういったことが出来る方法ということでの今回のポップアップストアなのです。ただし世界観を知っていただく為に全てのテーマや、メッセージもコンパクトにまとめ、誰でも立ち寄ることが出来る、誰でもその場にいれば伝わるようなものにしています。

今回の為に制作した眼鏡スタンドはロックグループのワールドツアーのように、黒いケースに全てのアイウエアが簡単に収まるようになっています。こんな形で太陽を追いかけるように世界を回る、そういうプロジェクトにしました。

―なぜCandy Barという名前だったのですか?

ロリポップですとかキャンディが自分たちが作っているアイウエアのムードを象徴している、捉えていると思うのです。スマートだけれども愛らしい、楽しいけれどもエレガントである、イメージビジュアルのカラーリングもキャンディが凄くはまっています。実際に自分たちが作ったアイウェアを机に置いてみても色合いですとか空気感が楽しく、スウィートでそういった部分が透明感のあるボイルドハードキャンディに(煮詰めてから冷やして固くしたキャンディ)似ているのではないかと思います。

―Candy Bar第一回目はここ日本、RESTIRからスタートし、世界へと巡ります。日本という場所をスタート地点に選んだのはなぜでしょうか?

ファッションで最も重要な都市は世界に6都市くらいあるのですが勿論東京はその一つです。(ポップアップショップを)最初に行う都市は重要であり、注目も集める、そういう意味でも東京は最適な場所であると感じています。RESTIRさんではアイウエアーを何シーズンも取り扱っていただいています。東京という場所にもかかわらず広いスペースがありますし、とても評判の良いお店で私自身も凄く好きなショップです。全てにおいて好条件でしたのでまずはここからスタートさせていただこうと思ったのです。

―コレクション自体はモダンであり、現代の女性の為の洋服ですがニュージーランド出身で今でもそこに在住し制作されています。「ニュージーランドの美しい大自然は私の創作活動にとって大切なキーポイント。」とも語られていますがブランドが大きくなった今でもそこを拠点に活動する理由を教えてください。

Karen Walkerはマニッシュかつフェミニン、ラグジュアリーかつカジュアル、そういった相反するものをミックスし、融合させる。そこから派生するものを魅力的に表現しています。私自身のライフスタイルもそれを反映しているのだと思います。コレクションを発表する時はメトロポリスに行き、帰ってくると非常に落ち着いた、カジュアルなライフスタイルを送っている国であるニュージーランドで生活する。そういったコントラストがデザインにおいても恐らくバランスをとっているのだと思いますし、それがそのままブランドのアイデンティティにも反映されているのだと思います。
一応ニュージーランドの中でもオークランドで生活していますので多少はビジーな都市なんですよ(笑)。勿論他の国と比べるとやっぱり自然は多いですし、ゆっくりしていますし、フォーマルな洋服を着る機会というのはなかなかない土地ですが。

―そもそもなぜデザイナーになろうと思ったのですか?

キャリアということを考えた時に、今後少なくとも40年間は働くということを考えると毎週金曜日が待ち遠しい、そう思うような仕事にはしたくなかったのです。やはり自分を楽しませて、興奮させてくれる仕事、自分のリストの最上位にあったのがファッションでした。実際デザイナーという仕事に就いてから20年以上経つのですが、これまでのキャリアのほとんどの部分においてエンジョイしてきました。ファッションというものは非常に幅が広く、アパレルだけでなく色んなことがプラスαでついてまわりますし、様々なことに関わることが出来ます。そういう意味でもファッションを自分のキャリアとして選んでよかったと思っています。今でも自分の職業を愛し、誇りを持っています。

―ブランドを設立したのは1989年だと思いますが、20年以上もブランドを続けていく上でブランドのスタイル、アイデンティティはどのように変化したのでしょうか?

ブランドを始めたのは凄く遠い昔の話のような気がします。
ブランドのアイデンティティ、パーソナリティ的な部分である相反するものをマッチングさせるというアイデアは最初からあったものでは勿論ありませんし、それ自体が会議のようにテーブルで決まったわけではありません。ブランドを始めた当初は凄く小さなブランドでしたし、自分の内面から恐らく派生し、更に枝分かれしていったのだと思います。実は最初のコレクションはメンズスタイルのシャツをリバティ生地で作ったものでした。その後、ウィメンズ・コレクションを始める訳ですが、その辺りからも相反するものをミックスするという部分に通ずるものがあると思います。そこからスタイルが少しずつ変化、確立されてきたということかもしれません。
ブランドとしては当初と比べて会社自体も凄く大きくなりましたし、従業員数も凄く増えました。

私自身が変わった部分はどこでしょうかね。はっきりとは言えませんが生まれ持っている性格、才能を昔に比べてコントロール出来るようになってきたのだと思います。自分の中で一番力を発揮すべき部分、今はそれがはっきり見えていますのでそれを活かす術を身につけたということでしょうか。

―20年以上もブランドを続けることが出来た理由とは何だと思いますか。またKaren Walkerというブランドは現在世界中で600店舗以上の取り扱いがあるそうですが、世界中の人に受け入れられた理由は何だと思いますか?

とにかく世界には今、物が溢れていますし、必要のない物が山のようにあります。そんな中で自分達が作る物は良い物であり、新しいものでなくてはいけません。そこに存在価値があり、理由があるものでないと受け入れられないと思っています。そこの部分を妥協せず、一生懸命やって来たからこそ続けることが出来たし、そうやって受け入れられてきたのだと思います。
ですので今後も新しくて新鮮な商品を皆様に提供出来るよう更に良くしていく努力をしていくつもりです。

―クリエイションは世界共通言語的だと考えることができるのでしょうか?

凄く細かいことを言えばシドニーは数週間しか夏がないですし、そういう部分は考慮に入れたりもします。ですが大きく言ってKaren Walkerをお買い上げいただいている顧客に関しては同じだと思っています。全てのの国に対して同じ扱いで取り組んでいますし今や世界はグローバルな時代ですので。Karen Walkerを好んでくれる方はあるテイストをもっています。そういうテイストを持っている女性は世界中どこにいても共通する、同じテイストを共有していると考えてデザインしています。

Karen Walker Candy Bar POP UP STORE at Restir

―Karen Walkerの女性像とはどういうものですか?

特に女性像を描いたり、こういう女性に着て欲しいと思い物作りをしたことはありません。私やデザインチームが好きかどうか、テイストに合っているかどうか、新鮮かどうか、ということでデザインをしていますのでどういう像かに合わせて戦略を練ったりはありません。

―毎シーズンのテーマはどのように決めているのですか?

毎回特に決まったルールはないのですが常にオープンマインドであり、様々な事象にアンテナを光らせています。テーマに繋がるのが最近気になっていることだったりということもありますし、昔に好きだったものということもありますし、その時々、どこの引き出しからもってくるのか、あるいは組み合わせるのかは毎シーズン違います。2012年の秋冬は50年代60年代に描かれているヴィクトリア調のムード、ドラマですとか小説が凄く好きで、古いサイエンスフィクションのテーマを取り上げてそこから派生させていきました。2年前のSSに関して言えばその時に知ったアメリカの写真家のある作品のカラーのコンビネーションやアプローチの仕方を見て着想を得たコレクションです。インスピレーションはいつどこにあるかわからない、映画ですとかアーティストとの作品、それに本等を読むことそうですがなにごとにもオープンマインドであるべきということです。

―Karenさんが感じた東京という街の印象を教えてください。

私にとって東京は大好きな街の一つです。恐らく15年ほど前に来たのが初めてだと思いますが、成田空港がニュージーランドからのトランジットのハブでもありますのでそれを含めてこれまでに10回は来ていると思います。
東京は広い意味でデザインに対して凄く寛容ですし、とても大切にしています。新しいアイデアをリスペクトしてくれる街だと思っています。こんなに忙しく、人口密度も高い街なのに非常にスペース使いが上手で、他の都市では感じるような、ごちゃごちゃしていて息が詰まるような想いを一度もしたことがありません。少し歩けばどこかにかならず静けさを見つけることができます。スペース使いのセンスが非常に好きです。

―特にお気に入りの場所はありますか?

また戻ってきたい場所もたくさんありますがまだ見きれていない場所もたくさんあると感じています。青山や表参道のちょっとした細道や脇道を歩いている時に発見する小さなお店やカフェ、そういう場所が凄く好きです。都会でありながらも落ち着いており、木々や葉等の緑があり、遠くでカラスやすずめの声が聞こえてくる、都会の中にいながらもオアシス的な感覚のお店や部分を見つけるのが好きです。
ここ最近私が日本に訪れる時毎回滞在しているのはホテルCLASKAです。CLASKAも都会から少し外れたところにあり、ブティックホテルで小さいながらもベッドも大きいですし、非常に広い部屋の使い方をしています。それなのにプライベート感もあります。そんな場所で食べる朝ご飯が最高なのです。

―最後に今後の予定、やりたいこと等があれば教えていただけますか?

直近の話ですが今は次の2013春夏のデザインに集中しています。それと同時にアイウェアとジュエリーのコレクションも進行中です。それに実は新しいプロダクトラインを考えていまして、これもゆっくり進行しています。その他、常に進行中のプロジェクトが数件あります。
6月には短いですがホリデイをとる予定ですのでそれに向けて今頑張っています。

Interview & Text:Masaki Takida Portrait:Ayako Masunaga

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