Interview

Kenji Kawasumi 5/5

将来の展望-「ミューズ、着てほしい人をちゃんとまたイメージできるようになれば、よりよいものがつくれるのだと思います」

―具体的に今後の活動はどう考えていますか?

チャンスがあれば自分の服も作ってみたいのですが、まずはどこかのブランドで経験を積みたいと思っています。その後に、独立できればなと。僕の将来の理想に近いのが、Eatable of Many Ordersというレーベルです。

―それはどういったレーベルなのですか?

新居幸治さんというアントワープを卒業された方がされている日本のレーベルで、その人の卒業コレクションがまさにピノキオだったんです。とんがった帽子とか、七人の小人のような本当に可愛い人形の服という感じで、木枠とかが沢山使われていて。その方が今熱海で、自分で設計したログハウスで奥さんと子供と一緒に住んで、生成りの革とかを使ってハンドメイドの靴とか鞄、オーガニックな服などをつくられていて、、、いいなぁーって思います。

―作品だけではなくライフスタイルも含めて、ということですね。

そうなんです。熱海のスローな生活とか、自然に囲まれていたりとか、自分の工房も理想ですね。

―確かに今までのけんじさんの話を聞いていると、ファッションブランドというものよりも、「工房」っていう表現の方がしっくりきますね。

工房もちたいですね。でもそのような活動ができるようになるには、もっと色々な経験を積んでいきたいです。学生時代はルイーズにだいぶしごかれたのですが、今でも作業するとその時のことがフラッシュバックするので笑 でも自分の枠の外でも何ができるか試してみたいですね。

―ロンドンの若手デザイナーの支援スキーム、Fashion Eastなどに興味はありますか?

支援するシステムは日本よりしっかりしていて、興味ありますが、アプライする気はないです。色々話は聞いていて大変そうですし、日本人でもアジア人でも選ばれた人はいないと思います。

―確かにFashion East的なデザイナーのバランス感覚を持った、若い日本人デザイナーってあまりイメージないです。

Fashion Eastだと、ビジネス面も考慮できるデザイナーである必要がありますし、もちろんUKベースということが条件ですからね。

―けんじさんの場合は卒コレのアイディアをどう落とし込むかということですね。コレクションとしては力強くて、おもしろいものですが、実際の商品にそのまますることは現段階では難しいですもんね。

今ちょっと思うのが、そういうアイディアをどう実際の商品に落とし込むかという点では、自分の変なこだわりが抜けてくればいいのかと思います。例えば、今回のコレクションのサーフェスを転写プリントしたら、人によってはおもしろいって思ってくれるかもしれませんし。

―そうですよね。今回のけんじさんのコレクションを見て、商品化するとして真っ先に思いついたのが、プリントにするってことなのかなって。フェルトのTシャツなどもありますし、けんじさんの今回のサーフェスを削るという斬新なアイディアのフェルトのピースに、サーフェスをプリントしたものとか組み合わせれば、リアルな商品としてもいけるかなと。

そうかもしれないですね。そこは好きなものをつくりたいっていう自分をどう消化するかだと思います。

―やはりけんじさんの中では、今回のコレクションのサーフェスを転写プリントにして、というのは納得できないですか?

やはり自分の中ではちょっとなあ、、という想いはあります。でもそういう風にしないと、今の卒コレのままでは自分でも着ないと思いますし、それが正解な気もします。それを一種の成長と取るか、諦めと考えるか。

―デザインとしての進歩、とも取れると思います。素材に関しては、最近はハイテクのものを使ったり、どのデザイナーも、ぱっと見ではわからなくても、素材やテクスチャーの質感に本当に力を入れていると思います。全く新しい素材をファッションに落とし込むデザイナーはほんとすごいなと思います。

セリーヌの少し前のコレクションでオレンジ色のジャケットがあったんですが、使われている素材がすごく張りがあって、ハンガーにかけた状態でも手が前にふっているようなピースだったのですが、すごくかたちがきれいなんですよ。すごく堅い芯を使いつつ表面はリアルクローズなものを使って、ちゃんとしたテーラードのきれいなジャケットになってるんです。そういう風に堅い素材や変わったものを使ったとしても、高い技術や鋭い感覚でリアルクローズに仕上げることができるんだな、って思います。

―例えば最近だと、Tシャツなどカジュアルなものも、ウールとかネオプレンとか、コットン以外の素材を使って製作しているデザイナーも沢山いて、そういったピースももういつのまにか、着れるものとして認識があると思います。

ありますね、ジルサンダーとかラフシモンズとか、、、そういったデザイナーは本当にうまいですよね。そういうところを会社に入って勉強できたらなと。笑 今僕がすぐにできるとしたらやっぱり小物、鞄とかアクセサリーとかですかね。
今はアートよりのものにも皆が着用できるものにも、両方に興味がありますが、会社に入って一度ビジネスも含めたものをつくってみれば、どっちがやりたいのかより明確になるのかもしれないです。

―将来的には、バッグなどのアクセサリーだけではなく、服も全てやっていきたいという感じですか?

いずれは全てやってみたいですね。ただもし僕がどこかの会社に入ったら、すぐにできるのはテキスタイルかなと思います。パターンカットよりはクラフト、テキスタイルの方が得意なので。ゆくゆくは、服もバッグ、アクセサリーもできたらなと思います。
資金面がなんとかなるのであれば、自分のやりたいことをそのまま形にしたいという想いもあります。でも当面は、鞄などのプロダクトにアイディアをもっていくほうが、ビジネスのことも考えながらも自由にできるのかなと思います。

―いずれはけんじさんがつくった鞄やアクセサリー、そして服も、実際に色々な人に着てほしいという想いはありますか?

実際に友達のバースデーに鞄とか皮小物をつくったりしますし、アクセサリーはそう思います。服はまだもやもやしていますね。でも初めて服をリメイクしたのが高1のとき、当時付き合っていた彼女にあげたリメイクジーンズだったんですが、スティッチしたりペイントしたりボロボロにしたり汚したり、、、その時は一生懸命作って喜んでもらえたので、ミューズ、着てほしい人をちゃんとまたイメージできるようになれば、よりよいものがつくれるのだと思います。

Kenji Kawasumi
URL: www.kenjikawasumi.com
Email: info@kenjikawasumi.com

Interview & Text:Yasuyuki Asano

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